WEB・モバイル2016.03.09

ゲーマーはアスリート ?! ファン急増中のeスポーツ 日本初のプロゲーム選手チーム“ DetonatioN Gaming ”

Vol.127
日本初の「フルタイム・給料制プロチーム」として活動するDetonatioN Gamingの代表 梅崎伸幸さん
最近、よく耳にするようになった「eスポーツ」とは、Electronic Sports(エレクトロニック スポーツ)の略で、ゲームをスポーツとして、ゲーマーをアスリートとしてとらえる競技としてのゲーム。海外では億単位の賞金が支払われる大会もあって、最近、日本でも急激に注目度が高まっており、プロリーグの発足、プロゲーマーを養成する専門学校も出てきた。 今回は、日本初の「フルタイム・給料制プロチーム」として活動するDetonatioN Gamingの代表を務める梅崎伸幸CEOをチームが共同生活を送る合宿所で直撃し、チーム立ち上げの経緯から、eスポーツの現状、未来について、急成長を遂げている市場のパイオニアの熱いお話をたっぷり伺いました。
 

選手は18~25歳 6LDK+3DKのマンションで共同生活、競技に専念

練習部屋の様子

練習部屋の様子

現在のチーム体制を教えてください。

選手は、18~25歳の男性7人です。練習試合の相手は主に海外のチームであるため、練習時間が深夜になり、昼夜逆転するハードな状況の中、コーチなどのスタッフ4人と、この6LDK+3DKのマンションで共同生活をしながら、競技に集中する環境を整えています。食事は専属の調理スタッフがここのキッチンで作ります。

練習やミーティングなど、競技に費やす時間がほとんどですね……。ここまでやらないと、ゲームには勝てないのでしょうか。

厳しい世界だとは思いますが、eスポーツに限らず他のプロスポーツでも選手は朝から晩まで競技漬けのような生活だと思います。活動する時間帯が少し違いますが……。特別厳しいということではないと思います。 現在、日本のトップリーグは6チーム、2シーズン制でリーグ戦を戦っています。ここで勝ち抜いて代表になり、10月上旬から開催されるワールドチャンピオンシップに参戦することが年間の最大目標です。

ホワイトボートに書かれた選手の一日のスケジュール

ホワイトボートに書かれた選手の一日のスケジュール

チーム「DetonatioN Gaming」が発足したのは?

発足は、2012年7月。私もまだプレーヤーのひとりでした。スポンサーは1社だけで、お金ではなく必要な機器などを提供していただいていました。正直食べれたわけではないので「セミプロ」と言ったほうがいいかもしれません。 その頃すでに、世界ではプロとしてお金が稼げるスポーツとしてeスポーツが認められていました。 日本では、手軽なコンシューマー用のゲーム機器(家庭用ゲーム機)が発展していたため、趣味や遊びとしての要素が強く、ゲームをスポーツとしてとらえる文化がなかなか浸透して来ませんでした。

高額賞金の大会がいくつも開催される海外 ようやく知名度がアップし、ファン急増中の国内

海外での状況は?

高額賞金の大会がいくつも開催され、大会やチームのスポンサーには名だたる大企業が名を連ねています。例えば、韓国ではサムスン、アメリカではレッドブルやモンスターエンジン、スウェーデンではマクドナルドや日産などがスポンサーをしています。広告塔として、競技、選手の価値がとても高いんです。

日本でも、徐々にビジネスとして広がってきているようですが?

ようやく、という感じですね。 我々、DetonatioN Gamingでは、2014年には7~8社の協賛を得ることができましたが、まだ機器提供にとどまっているスポンサーが多く、資金としては100万円程度でした。それが、2015年には数千万円の単位になり、今年は億単位まで伸びると予想しています。

そこまで急激に伸びている理由は?

メディアへの露出が急に増えたことで、認知度が上がりました。このところ、テレビなどのマス媒体から、クリエイターズステーションのようなウェブ媒体に取材していただくことも多いです。それにともない、試合の注目度も上がっていて、去年のリーグ開幕戦は同時接続での閲覧者数は4,000人程度でしたが、今年は約15,000人。試合会場となっている秋葉原UDXへの来場者数も去年から倍以上に増え、1,000人以上になりました。

長時間座っていても疲れないというDetonatioN Gamingモデルの椅子。

長時間座っていても疲れないというDetonatioN Gamingモデルの椅子。

一流の競技者のプレーを「見たい」ファンが増えているということですね。

はい。スター選手のプレーを見たいというファンは増えています。 他のスポーツと一緒で、一流のプレーを見たファンは、プレーヤーに憧れてプレーヤーと同じ機器やアイテムを揃えたくなるものです。スポンサーとなっていただいている周辺機器メーカー株式会社ロジクール さまでは、DetonatioN Gamingを広告に使ったデバイスの専用売り場を作ったところ、通常の売上の3~4倍にもなったと喜んでいただきました。DetonatioN GamingモデルのPCも発売されていて、これもとても好評と伺っています。

野球やサッカーなどのスポーツで、スター選手モデルのシューズや用具を揃えたくなるのと同じ心理ですね。 私も、DetonatioN Gamingモデルの椅子が欲しくなりました。1日10時間以上も戦闘態勢で座っていられる椅子なんて、ライターの私にとっては垂涎(すいぜん)のモデルです(笑)

まさにそういう心理です。ぜひDetonatioN Gamingモデルの椅子を購入いただき、今まで以上に仕事を頑張ってください(笑)。

モンスタータイトル「リーグ・オブ・レジェンド」日本上陸で、 さらなる市場拡大へ。

© DetonatioN Gaming

© DetonatioN Gaming

今年は、eスポーツの市場が拡大すると見込まれているようですが。

今年、世界中で7000万人以上のプレーヤーがいるといわれるモンスタータイトル「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」の日本版がリリースされる予定です。LoLは5対5のチーム戦で、世界で一番プレーされているゲームです。スポンサーも大会も増えることは間違いないですね。

eスポーツが日本でも発展し市場が拡大する中、「プロ」としてきちんと成立しているチームは少ないですよね。

DetonatioN Gamingのようなチームは他にありません。 まず、どんな競技でも同じことが言えますが、プロとして成立するためには、強くなくてはならない。今、うちのチームはリーグ戦でダントツの強さを誇ります。 これはマネジメントがしっかりしているからです。 この業界では、社会人経験がある人は少ないのですが、私はeスポーツに専念する以前は、メーカーで法人営業として7年間働いてきました。このときの経験から、ビジネスとして、必要なスタッフを雇ってチームとしての体制を整え、スポンサーと交渉し、選手が競技に専念できる環境を作ってきました。eスポーツの実力も、組織としての力も、マネジメント能力で差をつけていると思っています。

強くなるための環境が整っているように思いますが、突出した実績を出していくプレーヤーを揃えるのは難しいですよね。どのようにプレーヤーを揃えているのですか?

以前はトライアウトも実施していましたが、必要以上に時間がかかるので、今はスカウトに絞っています。「これは」と思うプレーヤーに声をかけるのですが、必ず実際に会って面接をすることにしています。スカイプを使った面接だけで決めたこともありましたが、eスポーツは個人戦ではなく団体戦です。スキルだけではなく。チームと上手くなじめるか、共同生活ができるかといったコミュニケーション能力も重要です。

© DetonatioN Gaming

© DetonatioN Gaming

選手寿命が短いeスポーツ 長く携われる環境づくりこそ、発展のカギ

DetonatioN Gamingの代表を務める梅崎伸幸さん

DetonatioN Gamingの代表を務める梅崎伸幸さん

現在のメンバー構成もとても若いですし、eスポーツの選手寿命は短いですよね。他のスポーツはコンディショニングなどが発達して選手寿命が延びていますが、eスポーツの世界ではどうなのですか。

eスポーツには反射神経が絶対的に必要です。反射神経は、24~25歳ぐらいから衰えていきます。また、他のスポーツは基礎体力の衰えを経験でカバーできる要素が大きいと思うのですが、eスポーツの場合、ゲームの機能がバージョンアップすると、今までの経験が活きず、すべて0になることも多いのです。そうなると柔軟性を持った若い才能のほうが有利で、新規層がどんどん出てきて入れ替わりが激しいのです。

他のスポーツでもセカンドキャリアの問題はありますが、24~25歳という若さで引退すると、その後の進路はどうなるのでしょう?

今は市場が急拡大しているので、まったく人材が追い付いていないポジションがたくさんあります。大会の運営1つ考えても、実況、解説、大会ディレクターなどの人材が不足しています。チーム運営においても、監督、コーチなどのスタッフが不足していますし、スポンサー関連企業からも引き合いがあります。今後、プロゲーマーを養成する専門学校の先生も必要になってくると思われます。 eスポーツの裾野の広がりにともなって、セカンドキャリアも困らない状況をこれから整備していかなくてはなりませんね。長くeスポーツに携わっていける環境をつくっていくことは、eスポーツの安定的な発展にもつながりますから。

左は、広報担当の鈴木詩織さん。eスポーツを盛りたてたいとDetonatioN Gamingの門を叩いた。

左は、広報担当の鈴木詩織さん。eスポーツを盛りたてたいとDetonatioN Gamingの門を叩いた。

日本ではまだまだ新しい分野なだけに、取り組まなくてはいけないことが山積みですね。

本当に人手不足だと感じています。 ですが、eスポーツに関わりたい、この業界を何とかしたいと思っている人はとても多くて、先日、スタッフを募集した時には、びっくりするくらいの高学歴の人や華やかな経歴の人など予想以上にたくさんの応募がありました。市場が新しいだけに、個々のアイデアや力でできること、変えていけることがたくさんある業界だと思います。 これからもeスポーツに、そしてわれわれDetonatioN Gamingに、注目していただきたいです。そして、ぜひ自分でもプレーしてみてください!

 

取材日:2016年2月23日 ライター:植松織江

DetonatioN Gaming

DetonatioN_Gaming_logo_w 世界大会出場経験のある国内トップレベルのeスポーツチーム。

 

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