文学フリマと「ポケットアンソロジー」
6月の投稿で「文学フリマ」をレポートしましたが今月はその続き。
フリマの会場でユニークな文庫本と出会ったのでご紹介します。
名前を「ポケットアンソロジー」といいます。手がけているのは田畑書店さん。
“自分だけの短編集を作ることができる新しい読書体験”なのだそうです。見た目はこんな感じ。



まず「リフィル」と呼ばれるモノがあります。これは1作の短編小説が中とじになっていて
ひとつが12ページから16ページくらい。お値段はひと作品330円ほど。
このリフィルを「ブックジャケット」と呼ばれるバインダーの中に自由な順番で組み込んでいくことで
自分だけのお気に入り短編集が完成するという仕組み。
ブックジャケットには最大で200ページ分のリフィルを収めることができます。

これ、文庫本好きには地味に嬉しいと思う。
私はなぜか「電車の中で文庫本」というシチュエーションでないと作品に没入できない癖があって
「読みたい短編集のひとつ」がいくつも同時にある場合はカバンの中で何冊もの文庫本が
ごろごろしてしまうのです。これなら1冊でOK。
現在のところリフィルは古(いにしえ)の文豪が多いのですが今後はどんどん新しい世代の作家も
増えてくるでしょうし、期待したいです。
で、このシステムはもうひとつ「自費出版」の新しいカタチとして可能性を秘めています。
冒頭に「文学フリマで出会った」と記しましたが、自分の作品をリフィルに仕立てて販売している
文学サークルがいくつかありました。
気になって出品者さんのひとりに出版費用を尋ねてみたら、ひとつの作品について組版代金が17,000円、
印刷と製本が1冊250円だったとのこと。
その人は20冊のリフィルを自費出版されて総計で22,000円ほど。(価格はすべて税抜き)
自費出版の費用としてわりと手頃ですよね。(コピー用紙を製本してもそれなりに費用がかかるし)。
そして手に取ってみて何より感動するのは紙の質感。いわゆる文庫本の紙そのものです。
尊敬する作家たちと同じ風合いと手触りで自分の作品をカタチにできるのは素晴らしい体験だと思います。
自費出版以外にたとえば卒業文集や冠婚葬祭の思い出にもコンパクトで素敵ではないでしょうか。
田畑書店「ポケットアンソロジー」ホームページ
http://tabatashoten.co.jp/pocketanthology/







