グラフィック2016.10.19

小ロット要望を拾い上げ印刷技術で販促をサポート

札幌
株式会社特需プロジェクト 代表取締役 松浦鉄也氏
販売促進に関わる特殊印刷におけるサービスや商品の開発を行う「株式会社特需プロジェクト」。小ロット対応というスタイルで、大手では対応できないニッチな市場を拾い上げ、顧客獲得へと繋げています。その仕事と今後の展望について、代表取締役の松浦鉄也氏にお話を伺いました。

さまざまな職業を経験し、印刷の世界へ

株式会社特需プロジェクト

会社設立以前の職歴を教えてください。

この業界自体は、12年前くらいからになりますね。それ以前は、10回ほど転職を繰り返していまして……。旅行会社に始まり、外壁の訪問販売、配管工、食品工場、業務用食品の卸、菓子メーカーなど、さまざまな職業を経験してきました。

印刷の仕事に就くまでには、どのような経緯があったのですか?

ちょうど菓子メーカーに勤務していた時です。飲食チェーン店のレジ横に商品を置いてもらいたくて、「ポップを作るので、全店に置いて欲しい」と交渉したところ、OKをいただいたんですね。当然ポップの作り方なんて知らなかったのですが、プリントソフトを使って自分なりに形にしたところ、その出来が結構良くて。結果的に何千枚かを全国の店舗に置いてもらうことが出来たんです。子どもの頃から工作や美術が好きだったこともあって、作ること自体も面白かったのですが、成果が出たことで気が良くなっちゃって(笑)。あぁ、こういう仕事もいいなあと思って、印刷関係の会社に転職しました。

入ってみた印刷の世界はいかがでしたか?

広告に近いかなと思って入った転職先は、印刷物を作るというよりは、営業資金調達のための機械販売が主な業務でした。それを2年間続けたんですが、それだけでは儲からないので、きちんと制作に取り組んでみてはと会社に提案したんです。そうしたら、タイミング良く百貨店の周年記念と重なって、そこで仕事を取って来ることが出来たんですね。それをきっかけに、少しずつポスターや広告代理店の仕事をいただいて、販促物を作るようになっていったんです。

独立されたきっかけを教えてください。

販促物を作っている時に、付き合いのある資材メーカーに引き抜かれまして、5〜6年ほど在籍しました。ここでは、販促物や看板の素材について幅広く知ることができましたし、所長業務も経験させていただきました。その後、そろそろ独立準備に入ろうと考え、会社を辞めたのですが、すぐに準備が整うわけではありませんので、1年くらいは覚悟していたんです。その時に、以前勤めていた機械販売の会社から手伝って欲しいといっていただき、お手伝いをしながら1年半ほど過ごし、結果的には、資材メーカーの社長の支援を受けて独立させていただきました。

大手が対応できないニッチな市場を狙う

独立後、初めてのお仕事は何でしたか?

以前、店舗装飾をしたことのあるWi-Fiのレンタル会社に、Wi-Fi機械の液晶画面を保護するためのフィルムを作ることを提案しました。当時はまだWi-Fiが出始めたばかりで、レンタルが主流でしたので、何度でも使うものなら画面の保護が必要じゃないかと思って提案したところ、それはいいねということになり仕事に繋がりました。加工に使うのはスマホの画面保護フィルムでしたが、加工する技術を持っていても、なかなかそれをやる会社がなかったんです。というのもその当時は、フィルム製造を大手業者が一手に引き受けていたので、小ロットで受けている会社がなかったものですから、弊社なら対応できますと言って話を進めました。

現在、特需プロジェクトでは、どのような仕事がメインなんですか?

弊社は、印刷技術によって販促のすべてをサポートするというのがコンセプトで、そのための製品作りが8割を締めています。大手では、ある程度の量の発注がないと受けられない場合でも、弊社では小ロットの要望に応えています。いわゆる隙間産業ですね(笑)。紙や木材、金属などさまざまな素材を使い、サイズを問わず大抵の形状には対応できますので、オリジナル商品もお受けしています。それが、口コミや紹介で広がっていって、面白い物を作りたいという方からのオーダーに繋がっています。

オーダーの例を教えてください。

例えば、店舗のウインドウの装飾やポスターやポップ、看板の制作、ペット素材で作るバインダーやファイル、パッケージや卓上カレンダーなどの制作経験もあります。普通はフォーマットと呼ばれる型があって、それを使うのですが、そのまま使うのではなく、弊社では非効率的であっても1つひとつ型を作って、すべてオリジナルとして対応しています。

他社で同じことをするのは難しいのですか?

パッケージやポップなどを作る際に使う、切り抜きや筋入れ、折りなどを自在に加工する機械を弊社では先行して導入しています。他社ではそれ以前に量産をしなくてはならないものがありますから、なかなかそこまで手が回らないというのが実状ですね。それに、例え機械を持っていても、それをどう使いこなして、どう製品作りに活かすかを考えられないと、結局機械に使われている状態になってしまいます。ですから、同じ機械を持っているところはありますが、弊社と同じことをしている会社はあまりないと思います。

製品へと繋がるアイデアは、至る所に転がっている

販促用バックの試作品

販促用バックの試作品

オリジナルの型は、使い切りにはならないのですか?

商品はそれぞれ特殊な要望を受けて作っていますが、形にするために試行錯誤し、解決方法を見つけて、ノウハウを作ります。そのノウハウが次の商品作りに繋がりますし、自分たちの技術のストックにもなるんです。ですから、小ロットでも互いにメリットはあります。小さな要望を拾い上げて形にして、裾野を広げていくことが、すなわち自分たちの利益になるのです。

小ロットの場合、価格が高いというイメージがありますが。

みなさん、そうおっしゃいますね。でも、小ロットだからといって高額な訳ではなく、同じことを大手に依頼した場合は、このぐらいかかるということを明確に比較して、納得のいく価格を提示しています。それでもやはり価格的に厳しいという場合は、素材を変えることで価格を抑えるという提案も行っています。その場合、お客様のご要望に沿うような形になるように、素材選びも大事なポイントになります。

形状のアイデアなども提案するのですか?

そうですね。とにかく変わった形やパッケージが多いので、まずは相手の望む形を試作します。それをもとに、ここをこうした方がいい、この素材がいいとアイデアを出し合って作ります。

アイデアというのは、どういった時に浮かぶのですか?

街中を歩いていると、いろんなところにアイデアが転がっています。例えば金属でしか作れないものを擬似的にペット素材で作れないかとか、ガラスだけど他の素材でも応用できないかといったことを考えていますね。今思うと、1つのことを次に応用できるのは、これまでさまざまなジャンルの仕事を経験し、現場を知っていることも大きく関係しているかもしれませんね。

何よりも大切にしているのは、判断のスピード感

ご自身が仕事をする上で譲れない部分、こだわっている部分を教えてください。

1番大切にしているのは、判断をするスピード感ですね。僕は結果をすぐに知りたいので、こんなものが欲しいという相手の要望や、自分自身のアイデアは、思いついたらすぐ試作してみます。その上で、足りない部分を補ったり改良を行いますが、違う方法でアプローチするためにも、良し悪しの判断を即座に行うことが、こだわっている部分と言えるでしょう。幸い弊社は小ロットなので、試作のリスクも少なくて済みますしね。

ニッチな部分を拾っていると仰いますが、大手の印刷会社とはどのような関係なのでしょうか。

弊社は、いい関係だと思いますよ。現在、印刷業界の利益は全体的に下降傾向にありますが、だからといって印刷物の価格を下げるのではなく、新規開拓に対応していく必要があると思うんです。そのために、大手からお客さんを紹介してもらい、こちらはアイデアと技術を提供して新規開拓に繋げるなど、互いに利益を得るように協力し合っています。ちょっとした相談所みたいな感じですよ(笑)。僕自身、今の流行りの物や色などの勉強にもなるので、いい関係を築いていると思いますよ。

今後の展望についてお聞かせください。

サービス面においては、現在は法人を対象にしていますが、この先は汎用性をもって、もっと一般向けのサービスを展開していきたいと思っています。これまでに蓄積したノウハウをもとに、いずれは今の技術をDIYにも活用していきたいですね。そのアイデアは、今はまだ頭の中にありますが、そのうち形にしていくつもりです。

取材日: 2016年10月5日 ライター: 八幡智子

 

株式会社特需プロジェクト

  • 代表者名:代表取締役 松浦鉄也(まつうらてつや)
  • 設立年月:2013年10月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:特殊印刷に関わるすべての業務
  • 所在地:北海道札幌市東区北22条東15丁目4-22 おおぎビル2F
  • URL:http://www.tokujuproject.jp/
  • お問い合わせ先:上記HP「お問い合わせ」より

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