グラフィック2024.06.26

「中国と沖縄の懸け橋になりたい」。中国人ならではの視点とデザイン力で、沖縄の魅力をアピール

沖縄
ユニコーン株式会社 代表取締役/クリエイティブディレクター
Cho Ensei、Te Tang
チョウ エンセイ /テー タン

2020年、北京から沖縄に移住し、広告とキャラクターのデザインをするユニコーン株式会社を設立したチョウ・エンセイ(代表)さんとテー・タンさん(クリエイティブディレクター)。2人は中学校からの同級生で、営業マンとクリエイティブディレクターとして、北京の別々の企業で多くの実績を積んできました。北京で十分なキャリアを持っていたにもかかわらず、なぜ異国の地であり、さらに首都圏から遠く離れた沖縄で起業したのでしょうか?その真意と展望を伺いました。

中学時代からの仲の2人。北京の大手営業職と物理教師・クリエイティブディレクターを経験

左から、クリエイティブディレクター テー・タンさん、代表取締役 チョウ・エンセイさん

お2人は北京出身と伺いました。

テーさん:北京で育ち、中学校で出会いました。その後は別々の大学に進学し、別々の会社で働いていましたが、ずっと友人関係は続いていました。

会社設立までのキャリアを聞かせてください。

チョウさん:北京の大手企業で営業職をしていました。セールスマネージャーとして充実した日々を送っていましたが、いつかは起業したいという目標を持っていました。
テーさん:私は大学で物理を専攻していて、卒業後は高校の物理の教師として2年ほど働いていました。しかしその2年間で、中国の政治的な影響で教育制度がガラリと変わり、個人的に受け入れられなくなってしまいました。教師を辞めて転職しようと思い立ち、電通グループの北京電通に入社しました。

テーさんは教師から広告会社とまったく異なる職種ですが、デザインの知見や技術はお持ちだったのでしょうか?

テーさん:小さな頃から絵を描くことは得意でした。そのため物理を生徒に説明する際にも、ビジュアルに落とし込みながら教えていました。北京電通ではそれらのあらゆる経験が生きたと思っています。
北京電通での肩書きはデザイナーでしたが、日本と中国のデザイナーの役割は異なるようです。中国ではデザイナーの役割の幅が日本よりも広くて、例えば、一つの広告案件に必要なすべてを担います。日本でのクリエイティブディレクターという立ち位置に近いと思います。
トータルで15年以上勤めるなかで、フランスの化粧品ブランド「クラランス」やゲーム、自動車など、中国国内にある外国資本の大手企業を中心に、さまざまな広告を担当しました。中国のデザイン賞をいただいたこともあります。

「でこぼこの2人」だからこそ、協働すれば会社が上手く回る。北京にて起業

どのような経緯で会社設立にいたったのでしょうか?

チョウさん:テーとは長い付き合いなので、お互いの長所と短所を熟知しています。私は営業という職業柄、コミュニケーション能力は高い方だと自負していますし、経営的な知見も持ち合わせています。一方テーは、デザイン能力は非常に高く、理系だからか細かいところまで目が行き届きます。そんなでこぼこの2人なので、パズルのように組み合わされば会社を上手く運営できると感じたのです。

ご活躍されている中、なぜ沖縄に来るご決断をされたのですか?

テーさん:チョウと二人で会社を作ったらおもしろそうだな、上手くいきそうだな、と感じたのがきっかけです。まず2017年に北京で、広告制作の会社をチョウと立ちあげました。

沖縄の文化と風土に心惹かれ、移住を決意。新型コロナの影響も?

それから、どのような経緯で沖縄に拠点を移すことになったのですか?

テーさん:沖縄に特別な魅力を感じたことが大きな理由です。琉球文化と日本文化、アメリカ文化が混ざった沖縄の文化は唯一無二です。せわしない北京の生活に少し疲れていたこともあり、沖縄のゆったりした雰囲気にも心惹かれました。2人で日本のいろいろな場所を旅行しましたが、沖縄が一番好きです。
もう一つの大きな理由に、中国は新型コロナウイルスの流行以降、景気が悪くなりつつあることもあげられます。広告業界は特にその傾向が著しくて、沖縄の方がビジネスチャンスがあるかもしれないと感じたのです。また中国では、広告に対する規制も年々厳しくなってきており、クリエイティビティを存分に発揮できないこともストレスでした。

オリジナル商品制作、アートスクール運営で事業の安定化図る。生徒の成長に喜び

沖縄に移住して4年たちますが、事業は順調に進められていますか?

テーさん:飲食店や小売店、旅行会社、保険の会社、専門学校など、少しずつですがクライアントを増やせています。とはいえ、北京に比べて沖縄のデザイン単価はかなり低く、経営的にもそれだけでは厳しい。そこで、オリジナル商品のデザインやアートスクールなど、別の事業も進めることにしました。

オリジナル商品とアートスクールについて、詳しく教えてください。

テーさん:オリジナル商品については、中国の観光客向けに、シーサーをモチーフにしたキャラクターを作り、グッズ化してお土産店などで販売を始めました。
アートスクールについては、週末に子ども向けと大人向けの絵画教室を開いています。また近隣の公民館でも、子どものための絵画教室を受け持っています。日本の子どもは中国の子どもに比べると、恥ずかしがり屋というか、自分の作品に自信を持っていないように感じたので、鼓舞しながら自信を育てることに注力しています。その成果が徐々に現れているようで、堂々と発言できるようになったり、自分の作品に誇りを持ったりするようになってきました。子どもたちの生き生きした様子を見られることは、やはりうれしいですね。近々展示会を開く予定です。

中国人だからこそ、沖縄の魅力を中国人に伝えられる。「精神的な距離」を近づけたい

今後の目標を教えてください。

チョウさん:大きな展望としては、沖縄の魅力を中国にもっと伝えることで、中国と日本の架け橋になりたいです。日本と中国は距離は近いけれど、精神的な距離は遠い。というのも、中国では毎日のように日本との戦争ドラマが放映されていて、自ずと日本嫌いになってしまう人が多いのです。でも、私たちのように日本をしっかり知ることができれば、きっと大好きになるはずです。だからこそ、沖縄、ひいては日本の魅力をPRすることで、日本好きの中国人を増やしていければうれしいですね。
テーさん:中国人だからこそできるデザインのご提案を積極的にしていきたいです。沖縄は中華圏からのインバウンドが非常に増えていて、沖縄の企業はさまざまな商品を売ろうと必死です。でも、中国人の私たちから見ると、商品の品質はとてもいいけれど彼ら向けにパッケージなどがデザインされていないように感じます。彼らがどんなデザインを好むのか、私たちなら適切なデザインを施せると思います。
また沖縄の魅力を、もっと中華圏の人々に伝わるようにPRしたいですね。「青い海と空」という、美しい沖縄の風景をPRしている媒体はよく見かけるのですが、中国は広いので、実はそのような風景は特別に珍しいものではありません。それよりも、琉球独自の文化に魅力を感じる人が多いのです。中国と沖縄は似た文化も多いですが、よくよく見ると差異があって、それがおもしろい。例えば、中国の福建省でよく食べられる豚足の料理は沖縄にもありますが、味付けなどが微妙に違います。その違いこそ文化であり、中華圏の人は興味があるんです。実は先日、沖縄の県産品のPR映像制作のご依頼を受けたので、その意識を持って作りあげたいと思っています。

最後に、これからどのような人材と一緒に働いてみたいと思いますか?

チョウさん:情熱を持って自分の作りたいものをしっかり説明できる方ですね。
テーさん:営業できる方も大歓迎です。弊社は就業時間を定めておらず、自分の裁量に任せるスタイルを採用しています。今2人の営業担当のパートタイマーさんが在籍しており、業務内容や成果は毎日共有してもらっていますが、基本的に就業時間は自由です。特にクリエイターはその方が自由な発想でいいものを作れると思っています。
チョウさん:スタッフみんなで、餃子などの中国料理を作ったり食べたりと、楽しく仕事をしていますので、ご興味あればぜひ参画していただきたいですね。

取材日:2024年4月19日 ライター:仲濱 淳

ユニコーン株式会社

  • 代表者名:チョウ エンセイ
  • 設立年月:2020年7月
  • 資本金:700万円
  • 事業内容:広告デザイン、キャラクターデザイン、グッズ販売、美術教育
  • 所在地:〒901-2221 沖縄県宜野湾市伊佐2-11-3
  • URL:https://unicornart.jp/

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