メタバースで魅力発信、大阪を世界一おもろい都市に。「どうせ無理」より「できたらおもろい」
株式会社Meta Osakaは「大阪を世界一『おもろい』都市(まち)にする」というミッションのもと、オリジナルメタバースの開発、現実世界を再現する最新技術「デジタルツイン」のイベント企画・運営などを行っています。大阪万博での出展や、自治体・鉄道会社との共同プロジェクトなど分野の垣根を越えたつながりで事業を展開している代表取締役の毛利 英昭(もうり ひであき)さんに、“おもろい”まちづくりに込めた思いをお伺いしました。
「日本が外国に乗っ取られてしまう」危機感をバネにメタバース業界へ進出
不動産からメタバース業界へ進出した経緯を聞かせてください。
もともとは不動産会社の社長でした。大阪の分譲マンションの売買に25年以上従事するなかで、一般の外国人や外資系企業がマンションを買いに来ていることに気がつきました。そして、この流れは地方の土地や山にまでも及んでいます。
このような現実を目の当たりにして、「日本が海外の企業に占領されつつある」と危機感を持ちました。また、そのころに株式会社Meta Heroes(以下:Meta Heroes)の松石 和俊社長ととお会いしたことを機に、株式会社Meta Osaka(以下:Meta Osaka)の立ち上げにいたりました。
Meta Heroesでは、メタバースやAIを活用した課題解決事業を展開されていました。松石社長から「これからはメタバースの時代が来る。日本はすでに世界に比べて周回遅れで、このままでは、バーチャル空間の大阪も海外の企業に乗っ取られてしまう」「毛利さん、立ち上がってください。一緒にやりましょう」と提案があり、事業化を進めました。
当時は「メタバースが儲かるから新しいビジネスをしよう」ということよりも、「このままでは海外の企業に先を越されてバーチャルの大阪までもが乗っ取られてしまう」という危機感が「動かなあかん!」と私を突き動かしました。
松石社長に初めてお会いしたのが2022年。その翌年の23年9月にMeta Osakaを設立しました。
バーチャルが盛り上がればリアルも盛り上がる。「自分のまちに自信と誇りを持って」
どのような事業を行っていますか?
企業や行政のメタバース導入をトータルプロデュースでサポートし、新しいインフラの普及を行っています。具体的には、「オリジナルメタバースの開発・制作」「メタバース関連技術を活用した広告代理業務及びコンサル業務」「デジタルツイン(リアルとメタバースを融合した)のイベント企画・運営」「地方自治体や地域の課題解決や経済活性化のためのコンサル業務」を行っています。
ミッション「大阪を世界一おもろい都市(まち)に」について、「おもろい」の基準はあるのでしょうか?
「おもろいの基準」は「子どもたち」なんです。特に大阪の地元の子どもたちですね。それは「俺らのまちが一番おもろい!」という自信を持ってほしいと思っているからです。
大阪が好きなら、大阪で働き続けたいという気持ちも湧いてくると思います。けれども、ゲーム開発やITなどの最先端技術の仕事が、東京一極集中になってしまっている。だからこそ、まず大阪で成功モデルをつくりたい。そうなれば、地方にもそのモデルを転用できると考えています。
バーチャルが盛り上がればリアルも盛り上がるという相関があります。まちの活性化は、まちの価値を上げます。シビックプライド(※)とも呼ばれますが、自分の住むまちに誇りを持てることが「おもろい」のだと思います。
※シビックプライド…特定の地域に誇りを持ち、その地域を良くするために貢献しようとする自負心のこと
子どもたちの小さな思いを全肯定。「夢スピーチ」で言葉を自信に。
「未来のトビラをひらく『こども万博』」についてお聞かせください。
「子どもの夢を全力で応援したい」。その思いから子どもたちが主役になって楽しめる「こども万博」を実施し、2025年10月10~11日に、株式会社ママそら、株式会社キッズスター、Meta Osakaの3社で共創プロジェクトとして「EXPO2025大阪・関西万博」での開催が決定しています。メインコンテンツには「夢スピーチコンテスト」「おしごと体験」「こども縁日」があります。このうちの「夢スピーチコンテスト」は、子どもが登壇して将来の夢や思いを語ってもらう場です。
大阪の社会課題のひとつに「子どもたちの自己肯定感の低さ」が挙げられています。実は、全国平均よりも低いです。はっきりとした理由はわかりませんが、大阪の「ボケとツッコミ」の影響が少なからずあるように感じています。大人たちは「この子、あかんたれやねん」と平気でいったりする。もちろん愛情を込めたツッコミです。でも、子どもたちはこのような言い方に本当は萎縮しているのかもしれません。なので、「夢スピーチコンテスト」が自己肯定感や自己効力感を育む機会になるように取り組んでいます。
「夢スピーチコンテスト」に挑戦する子どもたちはどんな様子でしょうか?
「夢はなんですか?」と聞いて、答えられない子どもがとても多いです。「夢スピーチ」を行うことで、夢を答えられるようになるし、夢を見つけるきっかけになります。一人一人が自分の夢を話す。その時に、みんなでその夢を応援する。これが大切にしていることです。
また、社員にも伝えていますが、「発信力・言語化・決断力」がビジネススキルとして大事です。こういったスキルは子どものうちから身に付けている方が絶対にいい。自分で意思決定することを習慣づけると身に付いてくるんですね。“どこに行きたい?” “何が食べたい?”といった、小さな決断でいい。そして、子どもたちが決めたことに対して「それはあかん」と答えるのではなく、肯定する。「なんでそれがいいの?」と、応じたいと思っています。
「Jリーガーになりたい!」みたいな夢を語ると「そんなの無理やん」と、笑われてショックを受け、それ以降、その発言ができなくなってしまう子どももいます。でも、「こども万博」に関わる人たちは、全部肯定して応援します。そうすると、発言をした子どもはやっぱり勇気を持つことができます。
「誰もがあきらめることでも、できたらおもろい」「やってみなけりゃわからない」
毛利社長にとって「おもろい」とは、どんなことでしょうか?
ワクワクするかどうかですね。今まで誰もやっていないことやあきらめてしまうことも、「でも、それができたらおもろいじゃない?」と、捉えています。
「どうせ無理だ」って、特に大人は考えてしまうじゃないですか。でも、そうじゃない。「やってみなけりゃわからないし、できるんじゃない?」っていつも思っています。
テクノロジーで攻めも守りも。技術進化と課題解決のイベントを大阪・関西万博で開催。
『こども万博』に加え、他にも、大阪・関西万博で開催するイベントがありますね。
はい。2025年5月27~28日、大阪・関西万博でMeta Heroesとの共同プロジェクトを二つ開催します。
一つは「メタバース・XR・AIアワード」です。メタバース業界での革新的な取り組みやクリエイターを表彰します。もう一つは「防災万博」で、メタバースを活用した自治体や子どもたちの取り組みを発表します。地域課題を最先端技術やアバターを使って解決する試みですね。
「自治体×防災×メタバース」の組み合わせに新しい可能性を感じます。どのような内容なんですか?
自治体との連携でいえば、24年5月に大阪府柏原市と「メタバース・eスポーツを活用した包括的連携」を締結しました。今年の1月には、「交通安全教室」を大阪府警にも協力いただいて実施しました。人気レースゲーム「グランツーリスモ7」を使って、パトカーの運転ができるというものです。子どもたちは、憧れのパトカーを運転しながら交通安全も学べる。メタバースやeスポーツを活用して、行政と協力しながら地域課題の解決に取り組んでいます。
「エンターテイメントがインフラになる」難波発・未来のまちづくり
デジタルツイン技術を活用したまちづくりについて教えてください
これからのメイン事業として、デジタル技術を使った新しいまちづくり「デジタルエンターテイメントシティ構想 NAMBA」を南海電鉄と一緒に進めています。XR(クロスリアリティ)、Web3.0、エンターテイメント、文化、スマートシティ…これらを融合させて、ゲームや映画の世界に没入するような体験ができる難波のまちをつくります。「デジタルデバイスを装着してまちを歩けば、ゲームのキャラクターが突然現れる」なんてことも、近い将来に実現するでしょう。
そして難波は、観光客以外にもデジタルエンターテインメントのクリエイターが世界中から集まってきて、働く場所にもなっていく。「エンターテインメントがインフラになる」という未来を私たちは見据えています。
難波から大阪の魅力を世界中に発信して、「大阪を世界一おもろい都市に」を実現していきます。
取材日:2025年3月4日 ライター:大野 佳子
株式会社Meta Osaka
- 代表者名:毛利 英昭
- 設立年月:2023年9月
- 資本金:9,384万円
- 事業内容:「オリジナルメタバースの開発・制作」「メタバース関連技術を活用した広告代理業務及びコンサル業務」「デジタルツイン(リアルとメタバースを融合した)のイベント企画・運営」「地方自治体や地域の課題解決や経済活性化のためのコンサル業務」
- 所在地:〒542-0076 大阪市中央区難波5-1-60 なんばスカイオ 27F
- URL:https://www.meta-osaka.co.jp/
- お問い合わせ先:info@meta-osaka.co.jp
- 電話番号:06-6227-8855