ゲーム2022.10.12

元漫画家アシスタントがゲーム制作会社の社長に! 地元を「ゲーム業界の第一線で活躍できる場所」に

名古屋
株式会社プランタゴゲームス 代表取締役
Toshihiko Kojima
小島 俊彦
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学生時代に有名漫画家のアシスタントに合格し、その経験をきっかけにデザイン・エンターテインメント界隈を縦横無尽に駆け巡る小島俊彦(こじま としひこ)さん。地元・愛知を拠点に、アニメーション・ゲーム制作会社「株式会社プランタゴゲームス」を立ち上げ、キャラクターデザインからアニメーション制作、オリジナルゲーム開発などで存在感を発揮しています。アシスタント経験から「一時は漫画家デビューも考えた」と話す小島さんはなぜ、ゲーム業界へ舵を切ったのか。地元への想いなども伺いました。

豊富なノウハウで、キャラクターのデザインからモーション制作までを一元管理

社名「プランタゴゲームス」の由来は何ですか?

「プランタゴ(Plantago)」 は植物の「オオバコ」です。生命力がとても強いオオバコは、人や動物に踏まれるような場所で育ちます。他の植物が育ちにくい場所で、たくましく成長していくんです。その生命力にあやかって名付けました。また、社名にゲーム開発に必要な「PLAN」が含まれているのも気に入っています。

現在手掛けられている事業を教えてください

オリジナルゲームの開発と受託案件の両方を手掛けています。ゲームアニメーションや背景の受託に強く、特に2D系のキャラクターを動かす案件を得意としています。
ゲーム業界だけでなく、CMや遊戯機器のキャラクターアニメーションや、テレビアニメの美術監督の実績もあります。手掛ける領域がどんどん広がりを見せています。 淘汰の早いゲーム業界で創業9年目。私たちもしぶとく成長しているのかなと思います(笑)。

他社との違いはどんなところにありますか?

一つは、アニメーションのミドルウェア「Spine」や「Live2D」の実績が豊富で、ノウハウが集積している点だと思います。
もう一つは、キャラクターデザインからモーション制作までを一元管理できる点。サポートできる領域がかなり広いため、安心して任せていただけます。

自分のアイデアで人を喜ばせたい。機械科専攻から、漫画家のアシスタントに

デザイン・エンターテインメント業界に入られたきっかけを教えていただけますか?

もともとデザイナー志望ではなく、大学は機械科を選びました。将来は商品開発の仕事に就きたいと思っていたんです。自分が生み出した商品でお客さんが一喜一憂してもらえるのが夢でした。
絵の勉強をしてきたわけではなかったのですが、精緻な製図を描くのはとても得意でした。そして在学中に人気漫画家のアシスタントに合格したことで、思わぬところから漫画業界との接点ができました。
アシスタントの仕事を通じて自分のアイデアや描いた絵(作品)が読者に届き、喜んでもらうことに魅力を感じました。編集者とのつながりもあって一時は漫画家デビューも考えました。

ゲームソフト会社で企画から設定までを経験 多彩なスキルを身に付け独立

デビューはしなかったんですか?

はい。最終的に「日本一ソフトウェア」という地元企業に就職することを決めました。 当時の日本一ソフトウェアは小さな会社でしたが、その後大人気となるゲームソフト「ディスガイヤ」制作の真っ最中で、とにかく人手が足りない状況でした。まずは、ゲームの不具合を見つけるデバッガーからゲーム業界に飛び込みました。

日本一ソフトウェアではどのような経験をしたんですか?

日本一ソフトウェアには12年ほど在籍し、ディスガイヤシリーズではデザイナーのトップとしてグラフィックのディレクションから外部イラストレーターの手配まで、デザイン面の統括を任されるまでになりました。当時は専門職としてプランナーのいない会社だったのでゲームの企画や設定までを考える必要があり、ゲーム開発の幅広い領域を経験し、多彩なスキルを磨くことができました。
そして、その頃に盛り上がってきたスマホゲームに未来の可能性を感じ、転職を決意しました。スマホゲーム専門の開発会社で1年ほど経験を積んでプランタゴゲームスを立ち上げました。
今は大手が参入しているので難しいかもしれませんが、当時は開発者が自分達の力でヒットを飛ばせるチャンスがありました。

資金調達はクラウドファンディング 世界中から6万ドル超を集め開発

どのようにしてプランタゴゲームスを立ち上げられたのですか?

私と、スクウェア・エニックスでプログラマーとしてキャリアを積んだ小瀬勇人が中心となってプランタゴゲームスを立ち上げました。同時に、アメリカの企業が運営するKickstarter(キックスターター)というサイトを活用してクラウドファンディングを行いました。まだクラウドファンディングの存在が知られておらず、キックスターターは、英語が必須でしたが海外生活経験がある小瀬の活躍でチャレンジすることができました。
そこで世界中から6万ドル超の支援を集めて「ソウルナイツ(Soul Knights)〜幻影騎士団〜」の開発に着手しました。その後、受託案件を並行して行いながら「ソウルクリッカー(Soul Clicker)」もリリースしています。

テレビアニメ「シキザクラ」に参加。ライフワークの風景写真が活きる

テレビアニメ「シキザクラ」のプロジェクトにも参加されていますよね?

名古屋発のテレビアニメを生み出そうとスタートしたのが「シキザクラ」です。テレビのアニメーション経験はありませんでしたが、地域を盛り上げたいという気持ちが伝わったので美術監督として参加させてもらいました。
「シキザクラ」の背景には東海地方のさまざまな風景が使われているので土地勘があることが求められました。ライフワークとして撮り溜めてきた数万枚の風景写真が大いに役立ちました。また、「シキザクラ」にはSFの要素があるため、ゲーム業界で培ってきた経験や想像力が役立ちました。主人公が躍動する基地のデザインも私が設定から考えたんです。

近いようで壁がある、ゲーム・アニメ・漫画の世界

ゲーム、アニメ、漫画の間に壁を感じますか?

それぞれ近いように感じますが、独自の文化やしきたりがあるので壁を感じることはよくあります。働き方の面ではゲーム業界が一番きっちりしている一方で、デザイン設定などには柔軟性があります。アニメは初期設定や仕様がけっこうガチガチで、機転がきかない一面があります。締め切りがタイトな漫画の世界は過酷で、最初に漫画業界を経験できて良かったです。
「シキザクラ」はアニメでしたが、プロジェクト全体を通じて過去のやり方にとらわれない雰囲気があったのでとてもやりやすかったですね。

名古屋を第一線で活躍できる地に 自発的に動き、楽しめる人と仕事を

御社の今後のプランや目標を教えてください。

名古屋は三大都市の一つに数えられる都市なので、もちろんゲームやアニメの専門学校があります。しかし、それらの専門学校を卒業した後の受け皿となる企業がほとんどないのが現状です。上京しなくてもゲームの第一線で活躍できる場所を整えていきたいですね。
また、今後もオリジナルゲームの開発を続けていきたいと思っています。大ヒットするオリジナルタイトルをリリースできれば、名古屋に新たな雇用を生み出せます。

御社で活躍できるのはどのような人材でしょうか?

言われたことだけをやるのではなく、仕事を自分から楽しみ、周囲に働きかけられる人材が活躍しています。
背景の設定ひとつをとっても、検索した風景をそのまま使うのではなく、自分なりの設定を加えることで鍛えられ、磨かれていきます。構想が固まっていない案件を振られた時に「できません」ではなく、固まっていないからこそ自分の個性を出せるチャンスと考えて「なんとかやってみます!」と言える人がいいですね。

相手が欲しいものを提供するのがクリエイター 何事にもリサーチを

最後に、世の中のクリエイターにメッセージをお願いします。

若いクリエイターによく話すのが「アーティストとクリエイターの違い」です。 アーティストは自分が変えたいものを刷新する存在。そしてクリエイターは、相手が欲しいものや好きなものを提供する存在です。
だから、クリエイターには相手をよく見て、リサーチして、何が欲しいのかを見極める力が必要です。その意識が欠けてしまうと「なぜ私は認められないのだろう?」と思い悩むことになります。
何事にもリサーチする意識を持って、机上ではなく外に出てさまざまな経験をすることでクリエイターとしての成功に近づけると思います。

取材日:2022年8月17日

株式会社プランタゴゲームス

  • 代表者名:小島 俊彦
  • 設立年月:2014年7月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容::オリジナルゲームの開発、ゲーム受託開発、アニメーション受託、2D背景受託
  • 電話番号:052-569-5230
  • 所在地:〒476-0002 愛知県東海市名和町中屋敷51
  • URL:https://www.plantago-games.com
  • お問い合わせ先:

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