番長プロデューサーの世直しコラム 100回記念 櫻木光氏×豊原功補氏 対談

Vol.114
櫻木光氏×豊原功補氏対談

クリエイターズステーションきっての人気コラム「番長プロデューサーの世直しコラム」が、この4月で100回を迎えました!

これを記念して、今回の「あの人に会いたい!」は、コラム筆者の櫻木光さんと、櫻木さんの友人であり熱心なコラム読者でもある俳優・豊原功補さんとの対談をお届けします。同じバスケットチームに所属するなどプライベートでも交流が深いお2人だからこそのコラム裏話が飛び出し、対談は盛り上がりました!

 

足掛け8年で100回到達 思いがけない反響にビックリ!

この4月でコラムがついに100回を迎えました!

櫻木さん:足掛け8年ですね。1ヶ月に1万ずつ貯めると、8年で100万円たまるんだなぁ、としみじみしていますよ。

豊原さん:ホントに1万ずつ貯金していたの?

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櫻木さん:いえ、このコラムでお金はもらっていません。お金をもらっちゃうと、好きなことがかけなくなるから。でも、僕は一度も締め切りに遅れたことがないんですよ。仕事が忙しいときは、徹夜で書いたこともあります。

豊原さん:そういうところは、櫻木は真面目だよねえ。

最初に豊原さんが櫻木さんのコラムを読んだのは?

櫻木さん:仕事の現場で一緒になって、その待ち時間に見せたのが最初ですね。

豊原さん:最初は、電車で化粧している女性にモノ申したりしていたよね。昔、近所にいた口うるさいジジイみたいで、面白かったなあ。

櫻木さん:最初は軽い気持ちで始めたんですが、内容によってはTwitterなどで拡散して、40,000ヒットのアクセスがあったりして、本当に驚きますね。反響があった回は、多くの人に見られている分、ネットでボロカスに言われているのを見かけることもあり、最初は調子に乗って書いていたんだけど、だんだん書けなくなりましたね。書く内容のウラを取るために、いろいろ調べたりして、気を使うようになりました。

豊原さん:最初の頃は、ウラなんて取らなかったでしょ?

櫻木さん:最初は取ってないですね。ウラ取るためにネットで調べると、知らなくてもいいことまで知ってしまう。腹が立つことがあって、それについて書こうかなと調べると「表面的には腹が立つけど、実は深い理由があったんだ。」と知ってしまって、書けなくなる。

豊原さん:そこなんだよね。モノを知ると、書けなくなる。

櫻木さん:そんな状況になってきて、言葉の使い方に苦心するようになりましたね。役者の演技と一緒で、不特定多数の人に自分の表現を見せるのは、ものすごく難しい。

豊原さん:モノを知りすぎると、書けない、表現できない、というところは確かにあるんだよ。「王様は裸だ!」と言ったのは子どもだったけど、年を取ってからも子どもの部分をあえて残して、大人にならない努力も必要だよな。

櫻木さん:そう、自分を棚に上げることも必要ですね(笑)。

「日本の幼稚な社会に切り込む」スタイルにシンパシー コラムを通して櫻木さんが見える!?

確かに、最初のころとコラムのテイストが変わってきていますね。

櫻木さん:昔のコラムを読むと恥ずかしいですね。8年前というと、まだ30代後半。

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豊原さん:アルバムと同じだよね。でも、最初の頃は丸裸で書いていたから、ストレートに面白かった。「日本の幼稚な社会に切り込む」スタイルに、シンパシーを感じたね。ああ、これは、自分と同じ感性を持っている人だ、と。普段から話していても、櫻木とは共通の感覚があるんだよね。生き方に対する感覚、仕事への向き合い方、食い物、飲み物への思いも一緒(笑)。こういう時にはこういう形が一番ステキ!と感じる水準も同じだった。

櫻木さん:豊原さんにはプライベートも知られているので、嘘がつけないんですよ。コラムを通して、自分のことを把握されてしまうんです。

豊原さんは、コラムを読むと櫻木さんのことが見える?

豊原さん:調子が悪い時は、コラムを読むとわかるんですよ。もちろん、プライベートを知っているからわかるんだけど。でもね、話をしたり、書いたものを読んだりして「そうそう!」と膝を叩きたくなる人は少ないから、そんな人が元気がないと、こっちが寂しくなる。だから、櫻木のコラムは「世直しコラム」なんだけど、俺が世直ししたくなるというか、「櫻木直し」をしたくなる。

櫻木さん:ダメなときは、バレますね。そんな時に一緒に飲んでいると、必ず痛いツボを刺されるんですよ。もうそれが、本当にピンポイントにその通りで、「スイマセン」としか言えない。

豊原さん:弱っていることはわかるんだけど、「今のお前は最悪だ!世直しどころじゃない!」と、グサッと言っちゃうんですよ。それで、トボトボ帰っていく櫻木の背中を見て、ああ言い過ぎたなあ、と思うんだけど(笑)

櫻木さん:反論できないので、背中を見せるしかないんです(笑)

悩んでいる若い人を思い浮かべながら書く 「今が勝負だよ」と誰かが言わなければならない

豊原さんから見て、櫻木さんはどんな人ですか?

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豊原さん:海綿みたいな人(笑)。グショグショに濡れているか、カラカラに乾いているかのどちらかで、ちょうど良く湿っていることはない人です。

櫻木さん:豊原さんは、人のことをよく見ていますね。バスケの時も、メンバーや対戦相手をすごく素直な目で見ている。

豊原さん:人を見ることは好きなんだよね。見ていると、共感する部分が生まれてくる。

櫻木さん:だから、飲んでいて、適当な建前を言うと、すぐに突っ込まれるんですよ。しかも、的確なので、「あんた見ていたんかい!」と言いたくなる。

それは、飲むときもちょっと緊張しますね。

豊原さん:でも、飲み始めたら昼まで飲むからね。最近はそこまでじゃない?

櫻木さん:基本的に、朝日は見ますね。

豊原さん:枠をはみ出すことも大切だから。罪悪感が少しはないと、人間面白くなくなっちゃうでしょ(笑)

櫻木さんのコラムは、若い人に向けてのメッセージですよね。

櫻木さん:仕事の部下だったり、バスケットチームの若い奴らだったりを頭に浮かべながら書いたりしますね。

豊原さん:俺たちが若い頃って、バブルの全盛期で大人がすごく楽しそうだったんだよね。大人は楽しそうだから、早く大人になりたい、って思っていた。今の若い奴らって、面白い奴もつまらない奴もいるけど、俺たち大人は楽しいんだぞ!って見せることは大切だよね。

櫻木さん:そう考えると、日本が幼稚な社会なのは、大人である自分たちのせいになってしまうのだけど(笑)、そこは棚に上げて、誰かが言わないといけない。自分が将来、どうなっていくのか、何かになれるのか、悩んでいる若い人たちに、今が勝負だよと言ってあげないと。

豊原さん:例えば仕事で、そういうことを言うと、若い奴らの反応はどうなの?本人がわかっていることもあるだろうし、言われたくない、ということもあるだろうし。

櫻木さん:もう聞きたくない、という反応をする奴もいますよ。でもそれは、響いている証拠ですから。

SNSの普及で人間形成が変わる 宇宙人になろうとしている時代に「世直し」を!

この8年の間に、SNSが爆発的に普及しましたけど、コラムに影響はありましたか?

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櫻木さん:めちゃくちゃ影響ありましたよ。コラムを広めるためには有効なツールですけど、書きたいことが書けなくなる側面もあります。

豊原さん:俺も告知用にFacebookを使っているけど、宣伝ツールとしては本当に便利ですごいね。だけどさ、人間の付き合い方は様変わりしたね。例えば、昔はファンレターは封筒に入って「私信」で他人は見ないけど、今はTwitterやFacebookに書き込むと周りの人も見ているわけだから。

櫻木さん:意地悪な感情をさらしたい、という意識も感じますね。しかもそれが、否定的な意識ではなくて「良いことを言ってやった」と肯定的に思っている。

豊原さん:そういう指摘は、俺が櫻木にしているように、個人的な付き合いの中であったけど、今は面識がないのにそんなことを言えるのは怖いね。

櫻木さん:自己顕示欲を簡単に示せるんですよね。

豊原さんのような芸能人の方も、SNSの登場で、距離感が変わりましたよね。

豊原さん:おごったような言い方になるかもしれないけど、昔は、芸能人やスポーツ選手は、不特定多数に向けて遠くから話している感じだったけど、今はSNSを通せば会話の立ち位置が降りてくるというか、1対1で話しているような、同じ距離感で発信している不思議な感覚がありますね。これは誰に向けて言っているんだろうと感じる時もある。

櫻木さん:自分たちの世代は、PCもケータイもスマートフォンも大人になってから手にしたけど、そうではない若い世代は感覚がまったく違いますよね。

豊原さん:スマホをいつも握りしめているしね。簡単なイジメ発生装置だから、怖くて離れられないんだよ。そんな状態で10代20代を過ごせば、人間が今までとは変わってきて当然。

櫻木さん:生まれたときからスマホがある世代は、もっと違う人間になるんでしょうね。

豊原さん:このまま行くと、宇宙人になるんだろうな、と思うよ。頭でっかちで指がやたらに長い、あのイメージ通りの宇宙人。そこを櫻木には世直ししてほしいね!宇宙人だから、明らかにおかしいことをやるんだよ。それを身近な例を挙げて書いてほしい。

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櫻木さん:そうですね。100回もやっていると、ネタが付きて怒りが収まってきたような気もしていたのですが、豊原さんの話を聞いていると、まだまだ書けそうですね。

豊原さん:頼むよ。まずは、飲み屋で話をしながらスマホをチェックしている奴を何とかしてほしいね。まぁ、飲んでいる席で俺の前でスマホをチェックしたら、「お前何やってんだ!」って説教する前に取り上げるけどね(笑)

取材日:2015年4月6日 ライター:植松

Profile of 櫻木光(さくらぎ ひかる)/ CMプロデューサー

クリエイターズステーションきっての人気コラム「番長プロデューサーの世直しコラム」筆者者。足掛け8年で、連載100回目を迎える。  

Profile of 豊原功補(とよはら こうすけ)/ 俳優

映画『南極料理人』 『寄生獣』 『新宿スワン』 『ストレイヤーズ・クロニクル』 テレビドラマ『平清盛』 『レディー・ジョーカー』 『悪貨』 『マザー・ゲーム』などに出演。 2007年、『受験のシンデレラ』で第5回モナコ国際映画祭の最優秀主演男優賞を受賞。 テレビ、映画、舞台、CMなど多方面で活躍中。 <受賞歴> 2003年、ギャラクシー賞「センセイの鞄」。2005年、アメリカ シネマパラダイス映画祭 最優秀作品賞「心中エレジー」、ベルリンアジアパシフィック映画祭 最優秀作品賞「心中エレジー」。2007年 モナコ国際映画祭 最優秀主演男優賞「受験のシンデレラ」。  

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