WEB・モバイル2021.11.02

バンド活動を続けるため身に着けたIT知識。医療機関向けネットワークの保守技術で起業、事業と音楽活動が広がっていく。

石川
合同会社ハードコアネットワークサービス 代表社員
Takashi Okada
岡田 崇志

大学入学後、のめり込んでいったのは、勉強ではなくバンド活動。後に合同会社ハードコアネットワークサービスの代表社員となる岡田崇志(おかだ たかし)さんは、大学を中退して、アルバイトをしていた流通小売業の大手に入社します。しかし、バンド活動に力を入れるためには、ITの技術を身につけて時間や場所にしばられない仕事をするしかないと決心し、スキルのない状態でITベンチャー企業に入社、技術と知識を習得します。

医療機関の非常勤職員としてシステムの保守を担当する中、医療機関が外注先企業を探していることを知り、自ら起業して入札に参加。落札後は企業として業務に携わります。その後は他の医療機関や他業種の案件も請け負うなど、順調に事業を拡大してきました。ファーストフルアルバムの発売前日、岡田さんがビジネスと音楽にかける思いを語ってくれました。

 

医療機関向けシステム、インフラの保守は利便性と安全性のバランスが課題

現在、展開している事業の内容を教えてください。

医療機関向けにパソコン、ネットワークシステム、サーバーなどインフラの保守を担当しながら、パソコンの設定や調達、ハード・ソフト両面での業務改善の相談にあたり、対応しています。また民間企業からの社内システム改善や考案の依頼を受けて、自社でシステムを構築しています。さらに、ホームページの改善やSEO対策のアドバイス、企業のニーズに応じたソフトウェアの開発や提案も行っています。

業務の中心となっている医療機関のインフラ保守は、苦労される点も多いのではないでしょうか。

IT技術の進歩に伴って、さまざまな業務が省力化されて便利になる反面、セキュリティ対策が非常に重要になっています。担当している医療機関では、外部業者が施設内ネットワークを構築し、セキュリティを高めると利便性が下がり職員から不満の声が上がります。一方で利便性を優先するとトラブルが多くなり、リスクが高まります。このため、利便性と安全性のバランスをとりながら、職員の情報教育やモラル向上を図ることが課題となっています。

 

バンド活動にはまり、大学を中退。アルバイトから流通小売業の大手に入社

起業された経緯を教えてください。

子どもの頃から数学が得意で、念願だった地元の国立大学の理学部数学科に入学しました。入ってみると、日々の授業では思っていたほど数学に集中できず、次第に大学での学びに興味を失っていきます。一方で夢中になっていったのが、バンド活動でした。

高校時代から音楽が好きで文化祭で演奏を披露してはいましたが、大学で巡り会ったバンド仲間に大きな刺激を受け、ベースギターをマスターして、朝から晩までアルバイトの時間を除いては、演奏に熱中していました。バンド活動の費用を捻出するために、大学近くにあった大手流通小売チェーンの商業施設でアルバイトを始めたところ、勤務先の上司から正社員になってはどうかと勧められ、大学を中退し、入社しました。

ただせっかく入社した商業施設を辞めてしまいますね。

アルバイトとしての勤務態度を評価し、社員になることを勧めていただいた当時の上司は、バンド活動で週末に休んでも「君が休んでも売り場が回るようにしてくれればそれで構わない」と認めてくれていました。ところが、異動で新たに着任した上司からは「小売業の販売担当が週末に休むのは困る」といわれ、これではバンドのライブや練習もできないと考え、辞めてしまいました。

 

バンド活動を優先するために目指したIT技術者。知識ゼロの状態から、ネットで検索して業務に対応

それからITの道へ進んだのですね。

結局、実現しませんでしたが、当時バンド仲間と海外ツアーの話が持ち上がり、時間や場所にしばられずにできる仕事として思いついたのがIT技術者になることでした。とはいえ、全く知識もなかったことから、まずはどこかのIT企業に入って仕事をしながら技術を身につけようと考えたのです。

そこで知人の紹介を受けて、ITベンチャー企業に入社します。会社は企業や団体から業務委託を受け、クライアント先に人材を派遣して、パソコンデータの入力や医療機関の電子カルテの保守や運用を行っていました。

「全く知識がなかった」という状況で、業務を進めるには問題はなかったのですか?

当初はパソコンの知識がほぼなく、エクセルの関数やマクロも怪しい状態でした。会社にも十分な知識を持った上司や先輩もおらず、独学でシステムの技術を身につけていきましたね。

派遣先で問題解決を求められると現場では全く理解できないままに「分かりました。明日までに考えてきます」と返事をして、家に戻って必死でネットを検索、時には徹夜で解決策を探り、翌朝、何食わぬ顔で「できました」とこたえているような状況でした。

そうして経験を積み、スキルを高めて独立に至ったのですね。

そこまでにはまだ紆余曲折がありました。自力で学んで対応できている状態なら会社勤めの意味がないのではないかと考え始めるようになりました。さらに当時所属していたバンドがメンバーの方向性の違いから解散することになり、気持ちも落ち込んでITベンチャー企業を退社します。

とりあえず知人が経営する飲食店でアルバイトをしていたところ、以前の派遣先だった医療機関の方がたまたまお客さまとして来店。私の姿を見ると「飲食店のバイトをしているのだったら、うちのパート職員としてネットワークシステムの保守をしてくれないか」と声をかけてくれたのです。

 

偶然の再会から再びIT業界へ。それがきっかけとなりついに起業

「運命の出会い」ですね。

「特殊技術職」のパートタイム職員という身分で、また以前のように医療機関の業務を担当することになりました。1年半ほど働いたところで、医療機関がネットワークの保守技術を入札で外部業者に発注することを考えていると知り、急いで起業し、業者として入札に参加しました。結果、落札できたことから今度は外部の事業者として業務を担当することになりました。

社名の「ハードコアネットワークサービス」に込めた思いを教えてください。

私がやっている音楽は、ハードコアロックと呼ばれるジャンルです。「ハードコア」には「不屈の精神」、「確固たる意志」といった意味があります。変化する社会に負けず、信念を持って行動するという思いを込めて社名にしました。

会社として大切にしていることはありますか。

第一に考えているのはお客さまの不便を解決すること。利用される方がトラブルに陥らないようシミュレーションを十分に行うよう心がけています。また、最新の技術を学んで取り入れることは大切ですが、複雑になってしまい利用される方が「分からないことが分からなくなる」のは本末転倒です。そのために分かりやすい仕組みを作り、小さなトラブルでも根本から解決するよう努めています。

 

ハードコアネットワークサービスのこれからと起業したい方へのエール

時代とともにお客さまへの提案は変化していますか?

オンラインによる会議の開催や、イベントの運用などに関する相談を受けることが増えました。実際、弊社がさまざまな企業や団体から、オンラインで相談を受ける機会があり、ご相談に応じて、オンラインを活用したサービスの企画やサンプルの作成などを行っています。

IoTやAIによる「第4次産業革命」が進み、情報の速度や量、利便性が高くなる一方、そこに潜む危険も非常に高くなっています。私たちは安全と利便性を追求し、お客さまがストレスなく業務を行えるよう、常に意識して事業に取り組んでいます。

今後の展望や将来のビジョンについて教えてください。

IT技術の進化はめざましく、予測が困難です。それでも安全性と利便性の両面から次世代を応援していきたいです。特に日本が先進国から遅れているICT(※)技術の導入と、情報リテラシー教育を展開していきたいと考えています。

学校関係者とも協議をしており、課外授業として子どもたちがパソコンを使って目的の情報を安全に取得し、収集した情報を分析、活用する能力を高めるようなスキル向上や意識改革を担いたいです。

※ICTは「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術のこと。パソコン以外にスマートフォンやスマートスピーカーなど、多様なコンピューターを使った情報処理や通信技術の総称。

起業しようと考えている人へアドバイスをいただけますか。

自身の体験によるものですが、趣味やプライベートなど自分のコアとなる部分を大事にしてください。意思を持って考えて動くこと、すなわち「考動」すれば、どんな経験もこの先無駄になることはありません。

また、経済活動の原点は貢献だと思います。自分が、自社がどうありたいか、何ができるかを考え、人の役に立つことが仕事につながっていくと思います。

取材日:2021年9月21日 ライター:加茂谷 慎治

 

【Bonus track】参加するバンド「alley」の1stフルアルバム「Eclipse」が9月にリリース。いつかは海外ライブツアーの実現を

IT業界を目指す理由になったバンド活動についてお聞きします。現在参加しているバンド「alley」からファーストアルバムが発売されましたね。

当初参加していたバンドは2017年に解散しましたが、長年一緒に音楽活動をしていたドラム担当から新しいバンドでベースを担当してほしいという話があり、活動の方向性や楽曲に共感したので参加することに。

「alley」はピアノ、ボーカル、ドラム、ベースで編成し、ハードコアの要素を持ちながら、ジャンルにとらわれないサウンドを目指しています。仕事のスケジュールと調整しながら練習やライブ活動を重ねて、今回のファーストフルアルバム「Eclipse」が仕上がりました。 CDは、ハードコアやメタル、パンクなどを中心に扱うレーベル「Daymare Recordings」からリリースされ、TSUTAYAやTOWER RECORDSの一部店舗でも買えます。YouTubeで視聴も可能( https://www.youtube.com/channel/UCC9LjHY4P4ON-rMduq8qfIA )です。

バンド活動の予定や目標を教えてください。

ライブの本数を重ねるのは難しいかもしれませんが、リリースライブツアーと次回作に向けて活動していきます。新型コロナウイルス感染症の収束状況にもよりますが、バンド結成当時からの目標の一つである海外ライブツアーも実現したいですね。

 

合同会社ハードコアネットワークサービス

  • 代表者名:岡田 崇志
  • 設立年月:2017年10月20日
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:主に医療機関向けのパソコン・ネットワーク・サーバー等インフラの保守、パソコンの設定・調達、ハード・ソフト両面の改善相談、ホームページ作成、メンテナンス、SEO対策のアドバイス、ソフトウェアの開発・提案
  • 所在地:〒929-0112 石川県能美市福島町カ10
  • お問い合わせ先:090-3762-7522

本記事の記載の社名、店舗名は各社の商標または登録商標です。

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