グラフィック2019.09.11

「新潟発、海外へ!」CGクリエイターの活躍の場、可能性をもっと広げるために。

新潟
株式会社ファンタジスタ 代表取締役
Hiroki Kurihara
栗原 弘樹

「当社のスタッフ(CGクリエイター)をリスペクトしている」と話すのは、株式会社ファンタジスタの代表取締役 栗原弘樹氏。クリエイター・ファーストを貫く企業の根底にあるものとは?また、東京ではなく、新潟にCG系のプロダクションを起業しようと思った背景とは?
TVアニメのCG制作やVRのゲーム開発等に加え、現在、始動したばかりの海外向けのマンガ配信サービスに関する意気込みなど、さまざまなお話をお聞きしました。

教員から社長への転身。クリエイター育成、そして雇用の立場へ。

会社立ち上げまでの経緯を教えてください。

地元である新潟のコンピュータ専門学校で、プログラミングなどのITを学び、卒業年次に学校から「教員をやらないか」と声をかけてもらったんです。当時、そんなに真面目な学生ではなかったので、そんなに長くは続かないだろうと思っていましたが、専門学校の教員はやってみるととても楽しくて15年勤務しました。担当はCG科でしたが、時代の流れとともにプログラミングからHP制作、DTP、デジタルコンテンツ系の学科も増えていく中で、私も趣味的な範囲でさまざまな分野の理解を深めていきました。

先生をされる中でどんな気づきがありましたか?

学生の就活に関してですが、プログラマーとしての採用は新潟でもありました。ただ、CGなどのデジタルコンテンツ系となると、地方での就職先が全くない。レベルの高い学生もいるのに、東京に就活で赴くにもハンデがあって諦めてしまう学生もいる。また例えば、一人っ子だから地元に残って欲しいという親御さんの想いがある、など、いろいろなケースで「せっかくの学びを活かせない」という問題に直面しました。“それなら自分で新潟に会社を立ち上げよう”という結論です。

起業はおひとりで?

当時は、私とスタッフ7名でスタートしました。7名のうち、4名は教え子です。他3名も同専門学校グループのデザイン系、アニメ・マンガ系を学んできた卒業生になります。資金面や人材、経営に関することなどは、勤務していた専門学校グループから支援していただきました。

「ファンタジスタ※1」という社名に込めた想いは?

まずひとつはサッカー好きということ。 あとは、CGの会社を立ち上げましたので「ファンタジーを作る」という意味を込めて、ファンタジスタと命名しました。

※1 フォワードにあたるサッカー選手に対する賛辞で、サッカー用語のひとつ。

会社設立当初は、やはり大変でしたか?

学校で教員をしているだけでは、請求書を作ることも、見積りを出すこともありません。会社経営に関して、完全に素人でしたので苦労はしましたね。
集まった卒業生は、東京の大手CG会社さん(株式会社 白組)で1年修行させてもらったのですが、それでもまだ経験値1年。業界に関する知識も乏しくて、みんなが手探りの状態でした。そんな中で恵まれたスタートが切れたのは、専門学校グループの手厚いバックアップと、東京のCG会社さんが「新潟に帰ってすぐにできる仕事」をしっかりと教え込んでいただいたおかげだと感謝しています。

やりたいことは山ほどある。まずは海外向けマンガ配信で第一歩。

現在の事業内容について教えてください。

3DCG部門と、メディア事業部門の2本柱となっています。 3DCGは創業から続けている映像制作で、例えばアニメやゲーム、遊技機のCGを制作などを行っています。メディア事業の方は、大日本印刷さんとの共同事業で、つい最近本格的に始動となりました。SNSを通じて日本のマンガを宣伝し、海外向けにマンガ配信サービスを行うプロジェクトです。BL(ボーイズラブ)マンガ「FUTEKIYA」は、すでに無料ためし読み期間を過ぎ、課金が始まっています。オールジャンルの「マンガプラネット」は、10月下旬からスタート。今、弊社で一番力を入れているプロジェクトになりますね。

今、スタッフさんは何名いらっしゃいますか?

CG制作事業部は17名。メディア事業は7名になります。 会社設立から15年目になりますが、VR(ヴァーチャルリアリティ)コンテンツの制作プロジェクトを進めるにあたり、企画やシステム制作をメディ事業部が、グラフィック部分をCG制作事業部が担当という形で共同事業を、はじめて両事業部のスタッフが協力して仕事を行う体制が整いました。
また、新規事業に関しては外部スタッフ(プルーフリーディング※2と呼ばれる校正など、翻訳関連を担当)も活躍してくれています。
※2 翻訳会社からあがってきた、日本語から英語に変換したマンガの原稿を、ネイティブのプルーフリーディングチームが校正しています

日本のマンガを海外の人に楽しんでいただく中でのポイントは?

日本は縦書きですが、海外は横書き。通常のフキダシに合わせるとフォントが小さくなってしまう問題があります。どうしても収まらない場合は、単語をハイフンでつなぎますが、あまり多くなると読みにくい。ですから、海外向けに読んでもらう前提でフキダシを横長に作ってもらうよう作家さんに依頼する工夫などが必要になりますね。
あと、根本的な違いがもうひとつ。日本は右開きですが、海外は左開きです。以前は、マンガをそのまま反転させて作っていたそうですが、野球マンガなどは打ったら3塁に走ることになる…(笑)現在は、比較的そのまま(右開きで)制作していることが多いですね。

海外と言っても広いですが、主にどんな国をターゲットとしていますか?

我々も新規事業を行うにあたり、さまざまな国へ行って調査をしてきました。「日本のマンガは海外で人気がある」と言っても、どの国でもなかなか流通していません。日本のマンガを手に入れる方法の95%が海賊版であるのが現状です。私たちは、マンガが文化として根付いている2強「フィリピン」と「インドネシア」、まずは東南アジア系を狙ってマンガ入手における正規のルートを提供したいと考えています。
今は英語の翻訳が主になりますが、今後は、その国ごとの言語でより読者層を広げていきたいですね。

新潟本社と東京事務所の役割分担は?

新潟と東京は、新幹線で2時間。新潟から向かう私たちは何も苦になりませんが、東京のお客様、取引先様からは「とても遠い」印象があるようで、なかなか短納期の仕事をいただけない課題がありました。そこで、東京のお客様にもスピーディに対応できるよう事務所を置いています。東京と新潟のスタッフは、スカイプ等のやり取りで連携を図っています。

クリエイター採用=一生面倒を見ること。新潟唯一のCG会社として。

会社経営の中で、大切にされていることはありますか?

「現場はスタッフに任せる」ということですね。スタッフの作品が高度になってきて、私自身が作れないということもありますが、“クリエイターが気持ち良く働けること”を第一に考えています。創業時から「クリエイターに活躍の場を提供したい」という想いは、ずっと貫いているつもりです。
会社立ち上げの頃は、素人集団ということもありましたが「想定外のことがこんなにもあるのか」という驚きと不安がいっぱいでした。その中でも自分は、卒業生や教え子たちに背中を見せていかなくてはいけない立場であると、その想いがあったから走り続けて来れたのかもしれません。

御社の強み、魅力はどんなところにありますか?

例えば「VRを作りたい」というお客様に対して、弊社はヒヤリングから予算管理、企画、演出、プログラミング、展示のお手伝いまで…ワンストップでできることが強みなのではないかと思っています。CGプロダクションとしては小さい会社ですけど、守備範囲は広い。多岐に渡る経験は、必ずこれからの事業展開にも活きてくると自負しています。

 一緒に働くスタッフさんに対しての想いは?

CGクリエイターとして転職する先が新潟にはありません。だからスタッフ雇用の際は、「一生面倒を見る」覚悟で採用しています。定年退職でも、途中でやめることになっても、「この会社に入って良かった」と思ってもらえるよう、できる限り環境(勤務時間、給与、やりがい、福利厚生ほか諸々を含めて)を整えていくことが私の使命です。

今後の展望・ビジョンをお聞かせください。

「クリエイターがやりたいこと」を実現していく会社でありたいと思っています。出口は、できるだけ面白い方へ。もっと可能性を広げてあげたい。
合言葉は、「新潟発、海外へ」。今まで誰も成し得なかったことにチャレンジしていきたい。そのためのチャンスが巡ってきていると感じています。

クリエイター志望の方、現在活躍中の方へメッセージをお願いします

専門学校でクリエイターを育成していた立場から感じていたことでもありますが、クリエイターに大切なのは「自己プロデュース力」です。どのようなものを作ったら?自分をどのように見せたら、どこに売り込めるか?それを見極める力を養ってください。
せっかく良い作品があるのに、面接が下手で就職が決まらないなどの例をたくさん見てきましたから。自分でわからなかったら、人に聞くこと。
ちょっとしたチャンスをつかむ「積極性」「たくましさ」を身に着けることが大事だと思います。

取材日:2019年7月5日 ライター:本望 典子

株式会社ファンタジスタ

  • 代表者名:代表取締役 栗原 弘樹
  • 設立年月:2005年2月
  • 資本金:7,600万円
  • 事業内容: 3DCG映像の企画・制作、Webサービスの企画・制作・運営等メディア事業
  • 所在地:
    【本社】〒951-8131 新潟県新潟市中央区白山浦2-1-28 ITP白山浦ビル2階
    【東京事務所】〒170-0013 東京都豊島区東池袋2-21-1 桐生ビル5階
  • URL:https://fantasista-net.jp
  • お問い合わせ先:TEL)025-234-3421 FAX)025-234-3420

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