初の自社開発&パブリッシング作「フルーティモ!」が発売!目指したのは“子どもたちが初めて遊ぶ”3Dアクションゲーム

Vol.244
代表取締役/ゲームディレクター
Hideaki Hakozaki/Yuta Otani
箱崎 秀明     大谷 勇太

コンシューマーゲームのグラフィック制作や3DCGイラストで実績を重ねてきた株式会社プラネッタが、初の自社開発・自社パブリッシング作品となる「フルーティモ!」を発表し、9月18日に発売を迎えた。

ゲームの舞台は不思議なテーマパーク「カジューンランド」。少年ビミタとバックパック型アンドロイドのじいちゃんが巨大なフルーツを集める“フルーツ探索アクション”だ。今回はゲームディレクターを務めた大谷勇太さんと、プロデューサーで代表取締役の箱崎秀明さんに、開発のきっかけから遊びやすさの工夫、そして会社としての挑戦まで話を聞いた。

「子どもが初めて遊ぶ3Dゲーム」を目指して──「フルーティモ!」開発秘話

『フルーティモ!』(Steam®)©PLANETA Co., Ltd.

新発表の「フルーティモ!」はどんなゲームですか?

大谷勇太さん(以下、大谷さん):テーマパーク「カジューンランド」を舞台としたフルーツ探索アクションゲームで、プレイヤーは主人公ビミタと、ビミタが背負っている相棒のじいちゃんと一緒に大きなフルーツを集め、ゴールするのが目的です。じいちゃんのアームで吸い込んだり、ゼリー弾を投げたり、サーチ機能を使ったりして、隠れたフルーツを探し出す。その一連の流れを楽しんでもらうアクションゲームです。

世界観はどのように発案していったのでしょう?

大谷さん:最初はスペインで開催されているトマト祭りのように、フルーツを子ども同士ぶつけ合ってワチャワチャした華やかな絵面になるようなゲームをイメージしていました。またマップのスケールとしてはおもちゃ箱をひっくり返したようなコンパクトなものを想定していたんですが、開発スタッフの助言もあり、ある程度ゲームにはリアリティを残したい。でも、リアリティを残すにはフィールドを広くしないといけないと考え、“テーマパーク”を舞台に決めました。
本作は「子どもが初めて遊ぶゲーム」をコンセプトにしていますが、結果として子どもたちが遊んだとき「次はあれを見に行こう!」と自然に遊びを見つけられる導線ができたと思います。

『フルーティモ!』(Steam®)©PLANETA Co., Ltd.

出てくるフルーツのデザインもみずみずしさがあり、そこもゲームの魅力だと感じました。

大谷さん:「おいしそうで、さわりたくなる」ようなデザインを大切にしました。そのためフルーツ単体だけでなく、ジュースの川やシャーベットの丘など、見ただけで遊びが想像できるランドマークを各所に配置しています。私達が培ってきた3DCGの強みを総動員し、親子で眺めても楽しい画作りを心がけました。

開発で特に大変だった点はどんな部分でしょうか?

大谷さん:私達は長年ゲーム開発を行ってきましたが、デザインや3Dモデルの制作はできても、例えばUIやサウンドを作れる人員がおらず、水・雪といったゲーム内の特殊な表現に詳しい人材もいなかったことですね。また個人的にもゲームディレクターの経験がないので、進め方や提案など、すべて手探りで進めていったのがかなり大変でした。
そのため仕様書の書き方も勉強しなおし、プログラマーやモデラーなど、社内で調査・試作・検証を繰り返し形にしていき、他社のゲームなども参考にしながら進めていきました。ありがたかったのは、プログラマーが仕様の意図を理解し、より良い案を提案してくれたこと。単なる仕様通りで作るのではなく、より良いユーザー体験をチームで積み重ねて考えることができました。
また、モデラーたちも単にモデルを作るのではなく、デザインや配色などレベルデザインを含め提案してくれたことでクオリティの高い世界観を構築できたと思います。
ゲームディレクター:大谷勇太さん

今回の「フルーティモ!」はプラネッタ初の自社パブリッシング作品ですね。きっかけは何だったのでしょう?

箱崎秀明さん(以下、箱崎さん):これまで長く受託案件をやってきましたが、会社の方向性的にもオリジナル作品をいつか作りたいと思っていました。そんな中、数年前に大谷の案件が落ち着き、なおかつ会社的にも開発費の余裕ができた。そのタイミングでオリジナルを一本やりたいと話していたなかで、大谷から「フルーティモ!」のアイデアを聞き、じゃあやってみようということで今回の開発につながりました。
ただ、子ども向けの優しいゲームにするのは面白くない。それに、最近はYouTubeで子どもが気軽にゲーム実況を見られたりと、昔に比べて目も肥えています。“子ども向け”というジャンルに甘えず、会社としてより良いものを見せるためにも、グラフィックやゲーム性にも最大限にこだわりました。プラットフォームはSteamですが、親御さんと一緒に安心してプレイできる作品になったと思います。

最初の発案は大谷さんとのことでしたが、どんな思いがあったのでしょうか?

大谷さん:私には子どもがいまして、はじめは「自分が作ったゲームを子どもにやってほしい」という半ば私的な思いが(笑)発案のきっかけでした。そのうえで、子どもができるようなゲームは何か?と考えたのですが、箱崎からもあった通り、子ども向けのゲームって上から俯瞰で見たような見下ろしのカメラだったり、右に進んでいけば良いものだったり、子ども向けのゲームはこうしなきゃいけない、みたいな常識があるような気がして、個人的には物足りなさを感じていました。
それを打破するために、少し難易度は上がるけど、3D空間でカメラも自由度をもって動かせるようなゲームでも子どもは楽しめるのではないかと考えました。また、3Dのキャラクターデザインや背景美術はプラネッタの強みなので、自分の理想と会社の強みをうまくかけ合わせられたかと思います。
『フルーティモ!』(Steam®)©PLANETA Co., Ltd.

「自分で見つけて解けた!」を実現!テストプレイから得た発見とは?

今回の「フルーティモ!」は実際に社員さんのお子様方にテストプレイをしてもらったそうですね。どんな発見がありましたか?

大谷さん:ポジティブ・ネガティブ両方の意見がありました。「フルーティモ!」は対象年齢を5~6歳くらいの子どもで想定しているのですが、3Dカメラの扱いに困る子も多く、そこが一番の課題でもありました。
そこで、視点をオートで動かせるようにカメラの自動補正機能を徹底的に調整しました。結果として、カメラを触らなくても遊べるようになり、前に進むだけで視点がついてくるような設計にしています。これに関しても開発スタッフのアイデアで実現しました。
とはいえ自由に楽しんでほしいので、自分で動かしたい人用に操作できる余地は残しました。

箱崎さん:もう一つ考えなければならなかったのが、ゲームの区切りを作るか否かという部分。普通に考えればフルーツをいくつ集めると次のステージが開く、というようなステージクリア型の遊びが考えられます。実際社内でもそのアイデアは出ていました。ただそうするとルールが増えてしまい、ターゲットとして想定している子どもたちが遊ぶうえで難易度が上がってしまいますし、遊び方も子どもによって違う。

集めたり、探索したりする子どもたちが集中し、子どもたちなりに自由な遊び方を見つけてほしかったので、本ゲームはステージを区切らないようにしました。フィールド内は自由に行き来でき、好きなタイミングでゴールできるようになっています。

「子どもたちがはじめて遊ぶ3Dゲームを!」というコンセプト通り、子どもファーストの設計を心がけているんですね。

大谷さん:そうですね。3Dのフリーカメラで遊ぶゲームなので、それだけで子ども的には難易度が少し上がります。ただ難易度が上がるだけでは子どもは遊んでくれないので、気軽に繰り返し遊べるギミックを複数配置し、遊び終わった後もインタラクトすると水しぶきが出たり、紙吹雪が舞ったりなど一つ一つのギミックはシンプルな物で構成し遊びやすくしました。ギミックに気づいて試す事で、子どもたちが「自分で見つけて解けた!」という体験をしてもらいたかったんです。達成感を積み上げることで子どもには自信を、一緒に遊んでもらう大人にはゲームとしての納得感を与えられるようにしました。

今年で15年目のプラネッタ。人材不足とフリーランスのギャップを埋めるために

代表取締役:箱崎秀明さん

プラネッタは今年で15年目を迎えます。創業のきっかけを教えてください。

箱崎さん:私自身がフリーランスとして活動していた時期に、いろんな会社に入って仕事をしていたんです。そんな中、取引先の会社はどこも人材不足で悩んでいました。ただ、私が一緒に仕事をしていた方々の中には、経験不足で就職できないフリーランスのクリエイターがそれぞれ存在している。そんな、「企業と働き手のギャップ」を埋めるために自分で会社をつくろう!と思ったのが出発点です。
とはいえ、ただ経験の浅い人を企業に採用してもらうだけでは双方にメリットがありません。そのため私の会社で業界未経験者を採用し、社内で経験を積んでもらったら、そこから即戦力を求める企業に就職してもらう。キャリアの循環を生み出す場として、プラネッタを立ち上げました。

当初はどんな事業を行っていたのでしょう?

箱崎さん:今と大きくは変わらず、ゲームの背景制作やCGイラストといった受託が中心でした。そこから徐々に領域を広げ、現在はアートディレクション/仕様検証/モデリング/コンセプトアート/キービジュアル制作など幅広く関わっています。現在もコンシューマーゲーム用の背景モデルやキャラクターモデル制作、コンセプトアートやカードイラスト、キービジュアルなどグラフィックに特化して各種ゲーム制作に関わっています。

御社が手掛けるカードイラストはどのように作られるのでしょう?

箱崎さん:3Dモデルをベースに絵をつくっていくのが基本的な進め方です。3Dモデルを使用してポージングし、それを基にレンダリング(※)、背景やエフェクトを加えて最終仕上げを行います。案件によってはこちらから複数の方向性を提案し、クライアントの意図を汲みながら調整します。
※文字、数字、3Dモデルなどのデータを画像、映像など、視覚的に理解できる形に変換する処理全般

「フルーティモ!」で得た経験を次のオリジナルへ

「フルーティモ!」の開発を機に、今後は自社パブリッシングは増えていく予定ですか?

箱崎さん:今後もオリジナルへの挑戦は続けたいです。ただ、まだリリースしたばかりなのでどう進めていくかは未定ですね。少なくとも、会社の土台となっているのはお客様から依頼されるイラスト制作をはじめとした受託事業です。今後も依頼いただいた仕事と並行してオリジナルの開発を進めていく流れになる予定です。
また今回の開発では、広報や販売といったパブリッシングの経験も自社にとって大きな機会になったので、どう伝えるか・どう売るかという視点は受託事業にも活かしていきたいと思います。

今後の経営ビジョンなどはありますか?

箱崎さん:「真面目に、ちょっと変なことを本気でやる会社」でありたいですね。受託で培った画づくりの力を核にしつつ、オリジナルでも収益の柱を育て、会社の自由度を高めたい。その先で、働き方や制度を自分たちでも面白く変えていけるステージに進めたいと思います。

最後にお二人から、読者であるクリエイターに向けてメッセージをお願いします。

箱崎さん:制作の現場は必ずしんどい時期があります。でも、自分の「好き」を信じ、小さな前進を継続することで必ず道は開けるはずです。積み重ねた経験が信頼につながり、それが次の挑戦につながるような良い循環を意識してほしいです。
大谷さん:クリエイターとして大事なことは、まずは基礎を作ること。いろんなノウハウやツール、方法論がある中で、自分にとって突き詰められる領域や武器を見つけたら、とにかく手を動かし続ける。その積み重ねが力になりますし、そこから生まれた表現は説得力にもなると思います。
取材日:2025年8月27日 ライター:FM中西

 

株式会社 プラネッタ

  • 代表者名:箱崎秀明
  • 事業内容:ゲーム用3DCG制作 / イラストレーション制作
  • 本社所在地:東京都港区浜松町2-3-8 WTC annex 8階
  • URL:https://pla-neta.co.jp/

 

3Dアクションゲーム「フルーティモ!」

発売日 : 2025年9月18日
ジャンル : フルーツ探索アクション
プレイ人数:1人
プラットフォーム : PC(STEAM®)
対応言語 : 日本語・英語
開発元 / 発売元 : 株式会社プラネッタ
コピーライト:©PLANETA Co., Ltd.
Steamストアページ : https://store.steampowered.com/app/3345000/_/
フルーティモ!公式HP:https://pla-neta.co.jp/fruitimo/
『フルーティモ!』※SNSを毎日更新中!
公式X :https://x.com/fruitimo
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公式Youtube :https://www.youtube.com/@Fruitimo
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