2025年、シンガポールのギグエコノミーが広げるクリエイティブ人材の新境地

Vol.52
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. 代表
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。

 

今回のテーマは、前回の「必読!シンガポールにおけるクリエイティブ産業の2025年度予測」でも少し触れた「ギグエコノミー」について。

ギグエコノミーとは、インターネットやアプリなどを活用して、特定の企業に所属せずに単発または短期の仕事を請け負う働き方や、その働き方によって成り立つ経済活動を指しています。つまるところ「会社に所属しない働き方」のことですね。

日本でも広がってきたこの働き方ですが、もちろんその流れはシンガポールも例外ではなく、東南アジアではプロジェクト単位でチームを編成し、柔軟に価値を生み出す新たなギグエコノミーの形も生まれています。多国籍企業やスタートアップ、そして現地のクリエイターたちが国境を越えて連携し、スピードと創造性を武器に新たな経済圏を築きつつある昨今…。本稿では、その最前線を現地の視点から紐解きます。

プロジェクト型で働く時代へ──シンガポール発・進化するギグエコノミー

「会社に所属しない働き方」は、もはや一部のフリーランスだけの話ではありません。2025年現在、東南アジア、特にシンガポールを中心に、ギグエコノミーは新たなフェーズへと進化しつつあります。これは単なる“副業”や“単発案件”というイメージではなく、「自律したプロフェッショナルによるプロジェクト単位での価値創出」が社会に定着し始めていることを意味します。

とくに、クリエイティブ業界ではこの流れが顕著です。ブランド戦略やSNS運用、UI/UXデザインといった分野では、プロジェクトごとに最適なメンバーを組み、数ヶ月単位で柔軟にチームを形成・解散するスタイルが浸透しています。

アジアのハブとしての「柔軟さ」と「スピード」

ではなぜ、ギグエコノミーがシンガポールに根付くことになったのか? その背景には、シンガポールがビジネスハブとしての特性を持っていることが挙げられます。

シンガポールでは、多国籍企業やスタートアップが共存し、スピーディな立ち上げやマーケティング展開を求める環境において、社内人材だけでは対応が難しいケースが増えています。

そこで活躍するのが、即戦力として外部から参画するクリエイターたち。契約形態はフリーランスだけでなく、エージェント経由、サブスク型でのチーム提供、パートタイム雇用など多様です。Upwork(※)などグローバルプラットフォームの活用も増える中、シンガポール国内でも現地密着型の人材マッチングサービスが充実しつつあります。

※Upwork:世界最大のクラウドソーシングプラットフォームで、フリーランスの仕事を発注・受託できるサービス

周辺ASEAN諸国におけるギグワーカー同士の協力関係

また、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアといった周辺国でも、リモートでの国境を越えたコラボレーションが進んでいます。英語を共通言語とした“アジア版分業体制”が形成されつつあり、クリエイティブワークも国境を越えた「ギグ」でつながる時代になりました。

たとえば、あるシンガポール発のF&B(飲食・食品関連)ブランドでは、フィリピンの映像ディレクター、マレーシアのSNS広告運用チーム、ベトナムのイラストレーターと連携しながら、スピーディにキャンペーンを構築しています。こうした流動的な人材活用が、ASEAN全体のギグワーカー同士のつながりを支えているのです。

国主導で推進する働き手側への配慮

従来であれば「安定した職に就く」ことが重視されていましたが、現在では「スキルと時間を最大限に活かす」ことへの価値観が強まっています。特に若年層や育児・介護など制約を抱える人々にとって、ギグワークは選択肢の幅を広げてくれる存在となっています。

政府側もこの流れを後押ししており、シンガポールでは「個人スキル開発支援(SkillsFuture)」やフリーランス向け保険制度、フィリピンではギグワーカー向けの所得報告制度など、制度的な整備が進められています。

次なるステップ:「つながる」ことで広がる可能性

ギグワークが進化していく中で、求められるのは「信頼できる人材との出会い」と「プロジェクト全体を支える仕組み」です。そうした背景から、私たちもシンガポールにてFellows Creators Collective(FCC)というクリエイターとのキュレート型クリエイタープラットフォームプロジェクトを始動しました。単なるオンライン上のマッチングでは作り難い、長期的な関係性を前提とした“エージェントが伴走するギグエコノミー”の形を模索しています。

今後もこのコラムでは、アジアのクリエイティブ業界における新たな動きを追いかけながら、現場で見えてきた兆しをリアルにお届けしていきたいと思います。

■弊社の活動について

私たちFellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.は、ここシンガポールや東南アジアを拠点としているクリエイティブ人材やプロフェッショナル人材と多くのネットワークを持っています。

この記事を読んでくださる企業の皆様には、Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.をぜひ課題解決や新たな取り組みに活用していただければと思います!ぜひプロフィールよりお気軽にご相談ください。

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. 代表
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。2012年 京都外国語大学 卒。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。シンガポール国内のクリエイティブ人材や専門職人材に特化した人材マネジメントサービスを提供している。
Contact:https://www.fellow-s.com.sg/contact-us/
X(Twitter):@junya_oishi
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100063693212316
LinkedIn:https://sg.linkedin.com/company/fellows-creative-staff-singapore

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP