シンガポールで増える「違法フリーランス」問題

Vol.58
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. 代表
Junya Oishi
大石 隼矢

いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。

突然ですがみなさんは、シンガポールに増える「違法フリーランス」の問題をご存知でしょうか?もしかしたら近い将来あなたも他人ごとではないかも!?先月までとは少し趣向の異なる今回の記事。ぜひご一読ください。

シンガポールで増える「違法フリーランス」問題

ここ数年、「日本を出て海外で働きたい」「フリーランスとして世界で挑戦したい」というクリエイターの声をよく聞くようになりました。 僕自身もそうした挑戦を応援する立場にありますが、いま一つだけ強く伝えたいことがあります。

それは、シンガポールでの“フリーランス就労”には、想像以上に厳しいルールがあるということです。 先日、人材開発省(MOM)が、異例の注意喚起を発表しました。それは「外国人フリーランスが、シンガポール国内の顧客に対して仕事をすることは違法」というものです。(参考:The Straits Times

しかも対象は建設業や飲食業だけではなく、写真・映像・デザイン・メイクアップ・イベント撮影などのクリエイティブ分野にも及びます。いま、SNSやマッチングサイトを通じて“気軽に仕事を請け負う”ケースが急増しており、それに対して政府が本格的にメスを入れ始めたという状況です。

罰則は“本人だけ”ではない

この点で勘違いしがちなのは、「やった本人が罰せられるだけ」と思われがちなところ。実際には、依頼した企業側も罰則対象となり、「知らなかった」では済まされず、最大2万ドルの罰金や禁錮刑もあり得ます。つまり、発注側も“正しい雇用・契約ルート”を通していない場合、同じく責任を問われるということです。

ではなぜいまのタイミングで、「外国人フリーランス」が問題になっているのか?背景には、現地のクリエイターたちの切実な声があります。

シンガポールの人材開発省とVICPA(映像・デザイン関連の協会)によると、近年は短期滞在の外国人が低価格で案件を請け負うケースが増えており、正規登録されたローカルクリエイターとの不公平な競争が生まれています。現地で活動する人たちは、保険や医療積立、税金などの義務を果たしながら仕事をしています。

一方、観光ビザなどで働く“無許可フリーランス”は、そうした負担を避けて低価格で受注できてしまう。当然、業界全体の価格バランスも崩れます。MOMが問題視しているのは、まさにこの「ルールの外」での取引が拡大している点です。

ここで改めて整理したいのは、「海外クライアントから仕事を請ける」と「海外で仕事をする」では意味が違うということ。例えば日本の自宅から、シンガポール企業の案件をオンラインで進めるのはOKです。ですが、同じ案件でも現地に渡って撮影・打ち合わせ・納品対応などを行うと、それは“就労”扱いになります。この違いを理解していない人が意外と多いのが現状です。

クライアント・企業側も他人事ではない

人材開発省は明確にこう述べています。

「企業は、外国人フリーランサーを雇ってシンガポール国内でサービスを提供させてはならない」
つまり、発注側にも確認義務があるということですね。

クリエイティブ案件を発注する場合は、正規のライセンスを持つエージェンシーや法人を通すことが最も安全です。だから弊社のように、人材開発省の認可ライセンスを持つ企業がその“中間支援”を担うことで、リスクを避けながら正しい契約を結ぶことができます。

最後に

クリエイティブの仕事は国境を越えていくほど面白い。ただし、その自由には「法の理解」という前提が欠かせません。

シンガポールはチャンスが多い国である一方、世界でもトップクラスにルールが厳格な国でもあります。“情熱とスキル”だけで飛び込むと、思わぬところで足をすくわれかねない。海外で働きたいと思う人ほど、まずは「合法のライン」を正しく知ること。それが、長く安心して活動を続けるための第一歩だと僕は思います。

フェローズシンガポールの活動について

私たちFELLOWS CREATIVE STAFF SINGAPORE(フェローズシンガポール)は、シンガポールおよび東南アジア各国に拠点を置くクリエイティブ人材やプロフェッショナル人材との広範なネットワークを活かし、企業の皆さまの多様な課題に応える伴走の支援を行っています。

ブランド戦略に関わるアートディレクター、デザイナー、マーケター、映像・編集・ライティングのスペシャリストはもちろん、現地ならではの文脈を理解したローカル人材との共創体制の構築も可能です。

もしこの記事を通して「外部のクリエイターや現地人材の力を取り入れたい」と思われた方がいれば、ぜひお気軽にご相談ください。

課題の明確化から人材の選定・伴走支援まで、一気通貫で対応いたします。詳細はプロフィールよりご覧いただけます。皆さまからのご連絡をお待ちしています。

■参照:

●The Straits Times: Firms not allowed to engage foreign freelancers in Singapore (2025)

●Malay Mail: Singapore cracks down on unlicensed foreign freelancers (2025)

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. 代表
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。2012年 京都外国語大学 卒。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。シンガポール国内のクリエイティブ人材や専門職人材に特化した人材マネジメントサービスを提供している。
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