シンガポールのAIは”次のフェーズ”へ進めるか
Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。本日はおまちかね(?)のシンガポール×AIのトピックスについて。
シンガポールでは今、AIをめぐる空気が変わり始めており「導入した」「試してみた」という段階から、「では、これをどう使いこなすのか」という次のフェーズに移行し始めています。本日は、現地で感じているシンガポールのAI事情と、そこから見えてきた課題について、少し私見を交えながらお話ししたいと思います。
2026年、問われるのはAIの導入ではなく「再設計」
ここ数年、シンガポールのAI人材やAI政策については何度かこのコラムでも触れてきました。国家戦略としてAIを推進し、研究開発拠点を整備し、海外テック企業を呼び込む……。外から見れば、シンガポールはすでに”AI先進国”に見えるかもしれませんが、2026年に入り、その空気が少し変わっています。
「AIのIKEAモーメント」から抜け出せるか
シンガポールのデジタル開発情報大臣であるジョセフィン・テオ氏は、「多くの企業はまだAIの“実験段階”に留まっている」と、シンガポールの経済新聞「The Business Times」にて発言しました。そしてこの“AIの実験段階”のことを「AIのIKEAモーメント」とも表現しています。
ジョセフィン・テオ氏が言う、「AIのIKEAモーメント」とは、初めてIKEAに入った人が、プロの手で組み立てられた家具を見て「自分にも組み立てることができる」と感じる心理を意味しています。でも、実際にIKEAで買った家具は、自分でやってみると意外にうまく組み立てられなかったりしますよね?つまり「利便性や魅力は十分わかっているが、使いこなせていない」という状態を表現した言葉であり、世間がChatGPTのようなAIツールが使いやすいと感じるようになったが、うまく活用できていない状態を指した発言でした。
生成AIを導入し、社内ツールを試し、マーケティング分析に使ってみる。こうした取り組みは確かに進んでいます。しかし、事業構造そのものを変えるところまで踏み込めている企業はまだ少なく、いまだAI活用は足踏み状態。もっと言うならば、AIを導入してしまったことにより、業務が今までより煩雑になってしまった組織も存在します。そのため2026年のシンガポールでは、この”AIを試しに触っている状態”から抜け出せるかどうかの分岐点になると、現地では感じています。
海外のクリエイティブ組織では、すでに変化が始まっている
これまでシンガポールはAI活用のための戦略を次々に打ち出しており、2017年には、AI戦略を推進する中核機関「AI Singapore(AISG)」がシンガポール政府によって設立されたことを契機に、2019年にNational AI Strategy(国家AI戦略)が発表されるなど、公共交通、金融、医療など重点分野での活用はすでに進んでいます。ただ、AI活用の土台はすでにできているが、ビジネスへの活用がまだ最適化されていない状態であり、ここをどう乗り越えるかが2026年のテーマになると考えられます。
ここで少し見方を変えて、シンガポール以外の海外に目を向けてみましょう。
フランス・パリに拠点を置く広告・マーケティング会社のオグルヴィ(Ogilvy)は、自社のクリエイティブやマーケティング戦略に生成AIを活用するため、「Ogilvy AI」というプロジェクトを立ち上げました。また、世界最大規模の広告代理店グループであるPublicis Groupeも、自社の顧客データやテクノロジーを一元化した「CoreAI」構想を発表するなど、ヨーロッパや欧米諸国では、AIの活用を前提に事業を加速させる動きが着々と進んでいます。
シンガポールの現場でも、生成AIによるビジュアル初期案作成やデータドリブンなターゲティング最適化といった業務は増えていますが、まだまだAIを事業の根幹まで落とし込めている会社は少ない状態。ここを脱却するために必要となるのは、「本当に必要なAI人材」をどのように見極めるかという点がポイントになるでしょう。
本当に必要なAI人材を探すために、「人材紹介会社」ができること
繰り返しになりますが、シンガポール現地で感じるのは、AIを扱える人自体は増えているものの、「AIを経営戦略に落とし込み、組織構造そのものを再設計できる人」は依然として不足しているという実態です。
その結果、多くの企業が「AI人材を採用したい」と考えながらも、どのような人材を、どのタイミングで、どのポジションに迎えるべきかを整理しきれていない状況が見受けられます。
こうした状況のなかで、我々のような人材紹介会社の真価も問われています。AIが候補者の選定を自動化できる時代に、履歴書を見て右から左に紹介するだけの人材紹介会社に価値はなく、人材紹介会社・紹介先の会社・候補者の誰も得しない、三方悪しの構図になってしまう恐れがあります。
しかし逆に、どのフェーズでAI人材を投入し、正社員・契約・プロジェクト型などの形態をどう組み合わせて組織を最適化するか……。ここまで設計できるパートナーの価値は、むしろ高まっていくはずです。AI時代に必要なのは、単なる紹介や採用ではなく、「人材活用の設計力」を持つ人材であると感じています。
2026年は”AI再設計元年”になるか
2026年、果たしてシンガポールのAIは、試験段階のフェーズを超えられるでしょうか。
もう皆さんにもお分かりの通り、AIは便利ではありますが、魔法ではありません。単に導入しただけで競争優位が生まれるフェーズは、すでに終わりを迎えつつあります。今問われているのは、「どこにAIを導入するか」ではなく、「どう組み直すか」という最適化です。
国家も、企業も、エージェンシーも。そして、働く私たち自身も、単に「AIを触る年」から、AIを前提に社会や組織を「再設計(Redesign)する年」へ生まれ変わることができるのか。
その決定的な転換点の最前線に、今、シンガポールは立っています。
■フェローズシンガポールの活動について
私たちFELLOWS CREATIVE STAFF SINGAPORE(フェローズシンガポール)は、シンガポールおよび東南アジア各国に拠点を置くクリエイティブ人材やプロフェッショナル人材との広範なネットワークを活かし、企業の皆さまの多様な課題に応える伴走の支援を行っています。
ブランド戦略に関わるアートディレクター、デザイナー、マーケター、映像・編集・ライティングのスペシャリストはもちろん、現地ならではの文脈を理解したローカル人材との共創体制の構築も可能です。
もしこの記事を通して「外部のクリエイターや現地人材の力を取り入れたい」と思われた方がいれば、ぜひお気軽にご相談ください。
課題の明確化から人材の選定・伴走支援まで、一気通貫で対応いたします。
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