【2026年トレンド予測】シンガポールで進む 働き方とクリエイティブビジネスの変化

Vol.61
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. 代表
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。

いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。2026年最初のコラムは、現在のシンガポールの空気感とクリエイティブ人材やビジネスについて、開催中のイベント情報を交えながら書いてみたいと思います。       

1. 2026年、シンガポールのクリエイティブはどこへ向かうのか

年が明けると、シンガポールの街は一気に表情を変えます。特に1月は、街全体を舞台にしたアートイベントや、海外から多くの関係者が集まる国際的なカンファレンスが集中する時期です。

2026年1月も例外ではありません。美術館や劇場だけでなく、公共空間や街区そのものを活用したイベントが立て続けに予定されており、街のあちこちでクリエイティブな動きが同時に立ち上がります。

こうした光景は、突発的な盛り上がりによるものではなく、ここ数年、シンガポールのクリエイティブ産業は、急激な変化ではなく、制度整備や支援策を積み重ねながら、静かに、しかし確実にフェーズを移行してきました。

その結果、アートやデザインは単なる文化イベントではなく、都市の使い方や経済、そしてクリエイターの働き方と結びつく領域へと広がりつつあります。2026年は、そうした変化がイベントの内容や人の動きとして、よりはっきりと目に見える形で現れてくる年です。

現地に身を置いている立場として、2026年はシンガポールのクリエイティブの方向性が明確になる転換点だと感じています。

2. 「光」と「都市」を使って、街そのものを作品にする

1月には、Light to Night Singapore 2026 や Singapore Art Week 2026 といった大規模なアートイベントが予定されています。これらのイベントに共通しているのは、「展示会場に行って作品を見る」のではなく、「街を歩くことそのものが体験になる」よう設計されている点です。

作品は、美術館やギャラリーの中だけで完結しません。光の演出、建築の構造、広場や歩道といったパブリックスペース、さらには夜間の人の流れまで含めて、都市全体が一つの表現の場として使われています。こうした「都市をキャンバスとして扱う発想」は、近年ますます洗練されてきました。アートが街に“置かれる”のではなく、都市の機能や時間帯と組み合わさることで体験になるのが特徴です。

個人的には、「アートを見に行く」という意識よりも、「気づいたらアートの中にいる」この距離感こそが、シンガポールのクリエイティブを象徴していると感じています。

3. 舞台芸術・パフォーミングアーツが「産業」として語られる年に

2026年5月には、世界各国の舞台芸術関係者が集まる国際会議 ISPA Congress が、シンガポールで開催される予定です。ISPA Congressは、作品発表やショーケースを目的としたイベントではなく、舞台芸術を取り巻く環境や仕組みそのものを議論する場として知られています。

こうした議論の中では、舞台芸術単体ではなく、デザイン、映像、音楽、空間演出といった周辺領域との関係性も自然と取り上げられます。これまで個別のジャンルとして語られることが多かった分野が、相互に連動する「総合的な表現の集合体」として捉え直されていく流れです。

2026年は、舞台芸術が文化活動としてだけでなく、都市や経済と結びついた「産業」としてどう成立するのか、その議論が一段深いレベルに進む年になると考えられます。

4. フリーランス・副業が前提となり、仕事の形が再設計されていく

年明け以降の報道でも触れられていますが、2026年に向けて、シンガポールでは雇用や働き方を取り巻く環境に変化が見られます。契約ベースでの採用が増加していることや、外国人労働にかかるコストが上昇していることは、その一例です。

これらの変化は、必ずしもネガティブなものとして捉えられているわけではありません。むしろ、プロジェクトごとに必要な専門性を組み合わせる働き方が、現実的な選択肢として広がってきている状況だと言えます。

実際に現地を見ていると、フルタイムの仕事を持ちながら別のプロジェクトに関わる人、フリーランスとして複数の案件を並行して進める人、国境を越えてリモートでコラボレーションを行う人など、すでに多様な働き方が浸透してきています。

こうした環境の中では、特定の会社に所属しているかどうかよりも、どのようなスキルを持っているのか?誰と、どのような形で組めるのか?という点がより重視されるようになります。2026年に向けて、シンガポールのクリエイティブ産業では、働き方そのものが前提から見直され、仕事の設計がより柔軟な方向へと進んでいく流れが加速していくはずです。

5. 2026年に強くなりそうなキーワード(現地肌感)

最後に、これまで見てきた動き全体を踏まえたうえで、私自身が現地で感じている「2026年のシンガポール・クリエイティブ」を象徴するキーワードを整理してみます。

まず強く感じるのは、「都市そのものがメディアになる」という感覚です。
美術館や劇場といった専用の場だけでなく、街区、建築、公共空間、夜の時間帯まで含めて、都市全体が何かを発信する装置として機能し始めています。

それに伴い、パブリックアートが特別なものではなく、日常の風景として定着しつつある点も見逃せません。期間限定のイベントで終わるのではなく、「街にあるのが当たり前」の存在として、アートが都市に組み込まれてきています。

また、シンガポール単体ではなく、ASEAN全体を横断するクリエイター同士の連携も、以前より現実的なものになっています。地理的・制度的なハブとしての立ち位置が、実際の制作やコラボレーションの形に反映され始めています。

そしてもう一つは、アートとビジネスの距離がさらに近づいているという点です。対立するものではなく、互いに条件を理解したうえで、どう接続するかが現実的に議論される段階に入っているといえるでしょう。

 

こうして振り返ると、2026年のシンガポールで起きるのは、派手な革命や劇的な転換というよりも、これまでの当たり前の基準が、一段と引き上げられるような変化だと感じます。2026年のシンガポールのクリエイティブは、よりオープンに、より流動的に、そしてより都市と密接に結びついていくはず。会社員かフリーランスか、日本か海外か、といった単純な二択ではなく、「どのように関わるのか」「どのような価値を提供できるのか」が問われる時代です。

現地にいる立場として、この変化は、チャンスが減るという話ではなく、関われる入口が増えていく話だと感じています。2026年のシンガポールは、また一段、おもしろくなりそうです。

■参照リンク一覧

・必読!シンガポールにおけるクリエイティブ産業の2025年度予測:https://www.creators-station.jp/column/agent/246245

・ 働き方・雇用トレンド(フリーランス/契約雇用)More contract hiring, higher foreign labour costs among trends shaping Singapore’s manpower landscape in 2026

https://www.businesstimes.com.sg/singapore/more-contract-hiring-higher-foreign-labour-costs-trends-shaping-singapores-manpower-landscape-2026

 

■フェローズシンガポールの活動について

私たちFELLOWS CREATIVE STAFF SINGAPORE(フェローズシンガポール)は、シンガポールおよび東南アジア各国に拠点を置くクリエイティブ人材やプロフェッショナル人材との広範なネットワークを活かし、企業の皆さまの多様な課題に応える伴走の支援を行っています。

ブランド戦略に関わるアートディレクター、デザイナー、マーケター、映像・編集・ライティングのスペシャリストはもちろん、現地ならではの文脈を理解したローカル人材との共創体制の構築も可能です。

もしこの記事を通して「外部のクリエイターや現地人材の力を取り入れたい」と思われた方がいれば、ぜひお気軽にご相談ください。

課題の明確化から人材の選定・伴走支援まで、一気通貫で対応いたします。

詳細はプロフィールよりご覧いただけます。皆さまからのご連絡をお待ちしています。

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. 代表
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。2012年 京都外国語大学 卒。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。シンガポール国内のクリエイティブ人材や専門職人材に特化した人材マネジメントサービスを提供している。
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