「腕立て100回!」

第100話
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
Akira Kadota
門田 陽

2023年も押し迫ってきた11月25日、僕は突然腕立て伏せを始めました。目標は一か月後のクリスマスの日に腕立て100回ができること。いつ以来でしょうか。腕立て伏せの記憶があるのは10代の頃まで遡るので40年以上ぶり。当時体育の授業で20回か30回かやったのが過去最高かな。いや、違いますね。中学時代僕はバレーボール部で、その頃は毎日やっていました。体重も今より20キロは軽くて華奢な僕はあの頃、指立て伏せもできていました。それを思い出したのがまずかったです。ついついやればできると思ってしまったのです。無謀でした。

11月25日の朝、まずは10回と思って床に両手をつけて体を持ち上げようとしたのですがうまく上がりません。一度立ち上がりスポーツドリンクを飲んで、気合を入れて腕を回し再びやってみました。何とか体は持ち上がりましたが5回もできずに終了。夕方にもう一度やってみましたが7回でダウン。それでも朝よりは少しできたのでそこに希望の光を感じました。

11月26日、朝4時15分起床。何とか10回できました。いい気分。

11月27日、朝5時40分起床。15回できました。昨日より5回のプラス。いい調子です。夜、30年来の付き合いになる同業で同郷の中村聖子さんと差し飲み。「門田さん、ぜ~んぜん変わらないですね」という明らかなお世辞にとても機嫌が良くなり深酒。

11月28日、朝5時起床。やや二日酔い。
あれ?なんか体が重くてギリギリ15回。前日から進歩なし。

11月29日、6時半起床。この日も15回できつくなりストップ。心にうっすら暗雲がかかりました。

11月30日、7時起床。この日も15回で腕がきつくなり終了。何か変えないとまずいなと思い、夕方に髪を切りました。これでわずかながらでも体が軽い気がしたので夜に再挑戦。ようやく20回できました。

12月1日、6時45分起床。左肩に違和感。左肩は一昨年にいわゆる50肩で半年病院に通って保険のきかない高い注射を打ち続けた経験があるので大事をとってこの日は腕立てを休みました。

12月2日、6時起床。左だけでなく右も痛く、両肩にフェイタスを貼って様子見。午後、サン・アドに勤める若手コピーライターの宍戸ショーくんとその彼女と三人で昼飲み。
つい気持ちが若くなって、その夜はフェイタスを貼ったまま挑戦。25回できたのですが、肩が明らかにひどくなりました。

12月3日、5時起床。肩も腕も痛くつらいです。日曜日なので腕立て伏せも安息日ということにしました。

12月4日、6時起床。肩も腕も相変わらずなので月曜日ですが安息日になりました。

12月5日、5時起床。前日にネットで「腕立て100回」で検索したところ色々な情報を収集。腕以外の他の筋肉も鍛える必要があることや、食事ではサラダチキンがよいことなどを学び、早速コンビニで購入(※写真①)。

※写真①

ただ肝心の肩は痛いままでこの日も0回。

12月6日、6時50分起床。肩は不調のままなので腕立て伏せの代わりにスクワットを30回行う。あれ?スクワットはいきなり30回できました。

12月7日、5時起床。腕立て伏せ0回、スクワット35回。

12月8日、5時起床。腕立て伏せ0回、スクワット40回。

12月9日、4時起床。腕立て伏せ0回、スクワット45回。

12月10日、5時起床。日曜日なので腕立てもスクワットもお休み。

12月11日、5時起床。大阪出張。ホテルの部屋が狭く、ベッドの上で腕立て伏せ。スプリングのせいかわりとうまくできる。久々に25回。

12月12日、4時半起床。スプリングのおかげで今日も腕立て伏せ25回。夜、大阪の若手5人と忘年会。隣で50人以上のグループの忘年会が大盛り上がり。大阪にはまだ昭和が少し残っています。

12月13日、5時50分起床。腕立て伏せなんとかギリギリ30回。

12月14日、4時半起床。腕立て伏せ今日もどうにか30回。

12月15日、改めて言います。無謀でした。肩の痛みを堪えながらここまでやってきましたが、今日も30回で限界。クリスマスまであと10日です。決めました。無理だ。辞めることを決めました。

そもそもなぜ腕立て伏せを始めたのでしょう。理由があります。手前味噌ですが、2015年の9月から毎月1回書いているこのコラム「とりとめないわ」が今回で100回になりました。編集部の方からせっかくなので100回目っぽい企画をやってみてはどうでしょうと言われて、うれしかったのです。最初に思いついたのは箱根駅伝。今度のお正月が第100回大会で盛り上がるのは間違いないのでそれに便乗した企画を考えたのですが、箱根駅伝に関してはテレビ、新聞、雑誌はもちろんYouTubeや各Web等であらゆる企画が行われていて入り込む余地がありません。そこからアイデアに詰まって、すがる思いで名前に100が付くところで考えれば何か出るかもと新宿区の百人町(※写真②)にあるカフェにこもってノートに企画を書いていきました。

※写真②
  • 読書百遍。
  • 百歳のコピーライターを探す。
  • 百色で絵を描く。
  • 百食作る。
  • 百人とキスをする。
  • 百か国の人と出会う。
  • 百貨店でアルバイトをしてみる。
  • ゴミを百個拾う。
  • なぞなぞを百個作る。
  • 筋トレ百回。

と、書いたものを眺めてシンプルでわかりやすい筋トレを選んだのでしたが、自分が還暦だということを計算に入れていませんでした。

結果は失敗。このままではさすがに恥ずかしいので罰ゲームというわけではないですが、今これを書いている12月25日に一つ自分自身との約束を決めました。2024年1月1日から毎朝7時にコピーを一本、僕の会社(門田コピー工場株式会社)のHPのWORKSのページに「本日のコピー」という形であげていきます(http://copy.co.jp)。一日一本。今までに作って実際に広告で使われたものから新作や未発表のものまでゴチャ混ぜです。一年で365本(来年は閏年なので366本)。もし失敗したら、その時点でコピーライターを引退します。当面の目標は一年ですが、できれば10年後3652本までは続けたい。ま、その前にくたばるのかもしれません。酒好きですしね。今回の腕立て伏せで自分の体力のなさを痛感しました。それと会社勤めの頃は鬱陶しかった上司への毎日の報告が妙に懐かしいです。日課があるって、いいことなのかもしれません。それを思い知った今回の腕立てチャレンジでした。ありがとうございました。

ところで腕立て伏せをやっているときに、ふと以前仕事でメキシコにルチャ(プロレス)の撮影に行ったときに購入した覆面を付ければ強くなりそうな気がして被ってみた(※写真③)話はまたの機会に。

※写真③
プロフィール
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
門田 陽
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州、(株)電通を経て2023年4月より独立。 TCC新人賞、TCC審査委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP