「朝の散歩のミステリー(解決篇)」

第121話
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
Akira Kadota
門田 陽

暑さ寒さも彼岸までと言いますが、さすがに今年は当てはまらないだろうと思いきや、朝晩だいぶ凌ぎやすくなってきました。日の出の時間も少しずつ遅くなり習慣化している朝の町内散歩を5時から6時に繰り下げても汗だくにならなくなりました。

散歩は毎朝約30分弱。家から半径500メートル圏内をとぼとぼ歩きます(当然いま頭にはつまらないオヤジなダジャレが浮かんでいますが書きませんよ)。まずは徒歩30秒で着く台東区立黒門児童遊園の様子を確認(※写真①)。

写真①

総面積147㎡のちいさな公園。この日はたまたま誰もいませんでしたが、朝5時頃の始発直前だと酔ったまま寝ている人がいることが多いです。いやほぼいます。いや必ずいます。児童遊園という名前ですが、あるのはベンチのみで遊具は一つもなく、児童の姿も見たことがありません。正直ここに児童は来ちゃダメです。昼間は禁煙区域なのに喫煙者多数と鳩に餌をあげる困ったおじさんとおばさん、それにインバウンドの観光客の集合場所になっているみたいで、ちょっとした治外法権。真横に交番があることがまるでコントの世界みたいです。でも色んな人間模様が見れるので嫌いな場所ではないです。

ふだんは5秒で横切るのですが、よく見るとタイルの地面に絵が描かれているのを発見(※写真②)。

写真②

うん?トマト?じゃないな、リンゴかな。リンゴですね!あ、さらに狭い公園をじっくり観察すると色々な種類の林檎の木が植えられていて、ちょうど実もなっています。食べられそうにはないけれど鑑賞用にはいい感じ(※写真③)。

写真③

さらに加えて目を凝らすと植え込みには「リンゴとことば」と題したコラムの掲示板(※写真④)や座りにくいとしか思っていなかったベンチもリンゴの形でした(※写真⑤)。これからはリンゴ公園と呼ばさせていただきます。

写真④

写真⑤

続いて児童遊園から上野広小路方面に徒歩2分、ランチ時は開店前から行列のできるとんかつ屋さん「井泉」の横の路地を曲がるとブロック塀沿いにズラリと並べられた駐車禁止のパイロン(※写真⑥)。いやいや、こんなに置く必要がありますか。何があっても車やバイクや自転車の駐車(駐輪)を許さない強い意志の表れ。しかしその壁の向こうには何があるかというと、これがなんと駐車場でしてその駐車場にも車は一台もいません(※写真⑦)。人間のやることはヘンなことばかりです。

写真⑥

写真⑦

そしてこのあと黒門小学校の脇を抜けて家に戻るのですが、そこであのおばあさんと遭遇。1週間ぶり。いつもかわいい黒い犬と散歩をしているおばあさん(※写真⑧)。若くされていますがおそらく80歳前後。気になっていました。あれは1週間前。おばあさんのTシャツに太い黒のマジックで「もう、いやだ」という手書きの文字。どう見てもフォントではないのできっとご本人が書いたはず。「いやだ」だけならいいのですが、「もう」が気になります。僕が中高生くらいだったら迷わず声をかけたでしょうが、なにせ黄色いメガネのチューリップ帽のジジイです。怪しいはずです。「もう、いやだ」が「もう、いやだいやだ」に増えると困るので心配だけど何もできませんでした。そのおばあさんです。「おーー!」、少し声が出ました。薄手の白いカーディガンの下の白いTシャツには「もう、大丈夫」という手書きの文字!この「もう」には救われました。ここ1週間できっと何かが起こって、何かが解決したのでしょう。

写真⑧

おばあさんに勇気をもらった気がしたので、
この夏もう一つ気になっていたことを確かめに行くことにしました。それは家から徒歩3分、大江戸線上野御徒町駅の改札を出てすぐのエスカレーターの横に貼られた一枚の手作りポスター。そこには「エスカレーターの先は階段です!49段」と書いてあります(写真⑨)。

写真⑨

が、エスカレーターを上がると階段が左右に二つ。左がA3出口(※写真⑩)、右がA4出口(写真⑪)です。

写真⑩

写真⑪

どっちのことだ?数えてみました。左(A3)が47段、右(A4)が43段。3回数えましたが、どちらも49段ではありません。よほど聞こうかと悩みましたが、この時代クレーマーと思われるのもイヤなので放っていたのですが、今回勇気を出して改札に座っている職員の方に聞きました。もちろん朝夕の忙しい時間ではなくお昼の人が少ない時間に聞きました。すると親切に外まで出て来られてポスターの所まで一緒に行ってくれました。「なるほど。A3はうち(都営)ではなく東京メトロさんの管轄なので、A4の階段のことですね」「A4は43段です」「そうですか。うちの数え間違いかな。わざわざありがとうございます。言っておきます」と、とても丁寧な対応。解決しました。答えは数え間違い!いやいやでも、6段も間違えますかね?ちょっとモヤモヤしますが、それでもA3出口とA4出口で管轄が違うという面白い情報も得られたので聞きにいって正解でした。ようやく夏が終わりそうです。

ところで、「暑さ寒さもセブンまで」というコピーをセブンイレブンに提案したかったなぁ、という話はまたの機会に。

プロフィール
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
門田 陽
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州、(株)電通を経て2023年4月より独立。 TCC新人賞、TCC審査委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

門田コピー工場株式会社 https://copy.co.jp/

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