コンセプトに困ったら、白いクラウン

東京
コピーライター
TOKYOそういえば日記 88
コジマカツヒコ

アジェンダ、アサイン、セグメント、ペルソナ、インサイト、マイルストーン。

 

会議の席でとりあえず頷いて聞いているものの「ワタシホントハワカリマセン!」という、そこのアナタ。

ダイジョーブです。問題ありません。ほとんどはセーターを「ニット」と言い換えているようなものですから。

 

ただ、これだけは受け止め方を間違えると仕事が迷走してしまう。それが「コンセプト」というやつです。

 

今回は「コンセプト」についての小話です。

 

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「コンセプトって、何ですか?」

 

そう聞かれたとき「かっこいいひとことです」と答えてしまう人は案外少なくないと思います。

キャッチコピーみたいなものでしょう、と。クライアントにもそんなふうに捉えている人は少なくありません。

 

でも、コンセプトはキャッチコピーではありません。

では、コンセプトとは何なのか。

 

それをわかりやすく教えてくれるのが、1967年に発売された3代目トヨタ・クラウンの新聞広告「白いクラウン」(1968年掲載)です。

 

この広告キャンペーンにクリエイティブディレクターとして関わったのは日本のコピーライターの草分けのひとり、梶祐輔さん。

梶さんは電通を経てフリーとなり、その後、日本デザインセンターの設立にも参画した人物です。

 

どんなキャンペーンだったのか。

 

当時の日本では「高級車」といえば黒。官公庁や企業の社長が、運転手付きの黒塗りの車の後部座席に乗る。それが高級車のいわば常識でした。

 

そこへ登場したのが「白いクラウン」をコンセプトとするこの広告。

© Nippon Design Center, Inc.

Client : トヨタ自動車株式会社 Creative Direction : 梶 祐輔 Art Direction : 川端 一誠

Design : 川端 一誠 、 宮本 隆司 Copywriting : 中島 啓雄 Photography : 前田 宗夫 Agency : 電通 

 

黒ではなく、白。

 

お堅く近寄りがたい高級車ではなく、明るく、おおらかに、家族と一緒に自分で運転して楽しむクルマ。

時代の変化を色ひとつで象徴してみせたわけです。

 

背景には、戦後の高度経済成長期があります。

人々の暮らしが豊かになり「いつかはいいクルマを」という憧れが少しずつ大きくなっていった時期。

 

そこに「高級車は運転手に乗せてもらうもの」ではなく「自分で運転して家族と幸せな時間を過ごすもの」という新しい価値を提示したわけですね。

 

新聞広告では、コンセプトワードの「白いクラウン」をベースとする「白いクラウンは幸せなハイライフの象徴。」というキャッチコピーが掲げられ、テレビCMでも家族が白いクラウンで楽しそうに出かける姿が描かれました。

 

つまり売っていたのはクルマだけではなかった。

「こんな暮らし、いいですよね」という、これからの人生そのものを見せたのです。

 

「白いクラウン」は大きな成功を収め、3代目クラウンは市場で圧倒的な支持を獲得しました。

そしてクラウンは「黒塗りの高級車」から「自分で運転する最高級のマイカー」へイメージを大きく変えていきました。

 

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コンセプトとは何か、という話に戻ります。

 

コンセプトとは表現そのものではありません。

表現の土台にある「どう考えるか」「どこへ向かうか」という考え方です。

 

その人に、どんな価値を感じてもらいたいのか。

今までとは、何を変えるのか。

世の中や人を、どんなふうに見るのか。

 

そういうことを考え抜いた先に生まれる「これでいこう」というゴールへの合い言葉。それがコンセプトなのだと思います。

 

だから「かっこいい言葉」を先に考えなくてもいい。

むしろ、その逆です。

 

かっこいい表現に取りかかる前に「社会や人を、今回はどう見るのか」というモノサシをつくっておく。

 

そのモノサシがあるから、コピーを書く人も、デザインする人も、映像をつくる人も、営業の人も、クライアントの担当者も、みんながブレずに同じ方向を向くことができる。上がってきた表現案に対して正しいジャッジもできる。

「でも、こっちのほうがカッコよくない?」「いや、こっちのほうが今っぽいでしょう」など、関係者それぞれがフワッとしたイメージで好きな方向へ走り出してしまうのを防いでくれるわけです。

 

だから、表現が強くなる。

そして、ちゃんと効く。

 

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この「白いクラウン」のお話。僕の若い頃は宣伝に関わる仕事に就いたら必須科目のように教わったのですけれど、近年は知らない人も出てきたと感じています。なのでここに書いてみました。

 

もし明日「コンセプトを考えてください」と言われて困ったら、いきなりかっこいい言葉をひねり出そうとしなくても大丈夫。

 

「誰に、どんな価値を感じてもらいたいのか」

「何を変えたいのか」

「そのために、世の中をどう見るのか」

 

それらを飾らない普通の言葉で考えてみてください。きっとうまくいきます。

 

「コンセプトに困ったら、白いクラウン」

 

覚えておくと役に立ちますよ。

 

 

 

p.s.冒頭のカタカナ言葉の答えはプロフィール欄に書きました。

プロフィール
コピーライター
コジマカツヒコ
アジェンダ(Agenda)→ 議題・予定している内容 / アサイン(Assign)→ 仕事・役割を割り当てること / セグメント(Segment)→ 顧客や市場などを、特徴ごとに分類したグループ / ペルソナ(Persona)→ 想定する典型的な顧客像 / インサイト(Insight)→ 表面的には見えにくい、本質的な気づき・顧客心理 / マイルストーン(Milestone)→ 目標達成までの途中に設定する重要な節目 / ニット(Knit)→セーター 例)とっくりセーター

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