金沢21世紀美術館「路上、お邪魔ですか?」展
現在、金沢21世紀美術館で「路上、お邪魔ですか?」展が開催されている。
同展は、1986年に文化人や研究者が立ち上げた「路上観察学会」40周年記念を兼ねて企画された。
路上や日常の痕跡を芸術として評価する同会の軸は、「まちに開かれた公園のような美術館」というコンセプトを持つ同館と通じるものがあるのだろう。
同展の担当学芸員で建築史家でもある本橋仁さんは、「開館から20年が経ち、同館の中心的なテーマである公共性にも変化を感じていた。路上は誰のものか?をキーワードに、現代アートの域を超え、大道芸や路上園芸、路上観察学会の活動などを紹介することで、公共性の意義をクエスチョンマークをつけて投げかける」と話す。
同展の作品の中でも、大きなインパクトを感じたのは、鈴木康広さんの「遊具の透視法」だ。

鈴木康広《遊具の透視法》
かつて多くの公園に当たり前に存在したグローブジャングル(球体の回転遊具)が暗闇の中に置かれている。
グローブジャングルは鑑賞者が自由に回せるのだが、回転すると壁に映像が映し出される仕組みだ。
誰かに回してもらわなければ、映像をゆっくりと鑑賞できない。
誰かに回してもらうことで遊びが成り立つグローブジャングルの構造を、自然に鑑賞者に体感させるのが面白い。
危険な遊具として、いつの間にか公園から無くなったグローブジャングル。
社会にとってのリスクとは何か、誰のために失われるのか、公共性の意味をより身近な問題として考えさせられる。
現代美術館として、95歳の現役大道芸人・ギリヤーク尼ヶ崎さんを取り上げているのも、特筆すべき点だろう。

路上に描いたチョークの円が、ギリヤーク尼ヶ崎さんと観客を隔てる結界となり、その円の中で踊ることが表現となっている。
展示としては映像作品や写真、取材メモなどが見られるが、8月29日には実際にギリヤーク尼ヶ崎さんが来場し特別公演を行うというから非常に気になる。
東京の廃業した銭湯から譲り受けた部品で制作した「銭湯山車」も興味深い。

銭湯山車巡行部《銭湯山車》
山車には至る所に蛇口やシャワーヘッド、銭湯カラーのタイル、ケロリン桶など、失われつつある銭湯文化への愛が感じられる。
銭湯山車はこの夏、美術館を飛び出して金沢の市街地でもお祭りに参加し、地域の人に銭湯の良さをアピールした。

今回の目玉でもある「路上観察学会」の展示スペースには、同会のメンバー個々が感じる芸術をうかがい知ることができる。

プレスガイダンスでは路上観察学会のメンバーである林丈二さんが解説し、自身が収集した登山靴に挟まった石やアイスの当たり棒などを紹介。

林さんが「面白いと感じるものは人それぞれ違う。誰かに見せるためでなく、自分が面白いと感じたからやっている、ただそれだけ」と話したことが印象的だった。
アート作品を見る時、音楽を聞く時、何かを推す時、かわいい、すてきだと思う時、正解は何だろう、人とは違う風に感じていたらどうしようと不安になることがある。
そんな凡庸思考をカラリと一蹴するような、林さんのシンプルな「好きを追い求める姿勢」に、憧れに近い感銘を受ける。
ゴールデンウィーク期間のみの限定展示となったが、壁一面の花環の展示も、金沢21世紀美術館という環境を考えると異様で目を引いた。

「金沢花環」を唯一製造していたタカギ造花店の廃業を受け、同館が寄贈を受けたものだという。
これもまた、最近見なくなった路上の光景。そして、なんとなく「笑っていいとも!」のテレフォンショッキングを思い出す。
さまざまな観点から路上を見つめ、公共性を問いかける作品は、この記事内でとても紹介しきれない。
この夏、金沢21世紀美術館であなたにとっての路上とは何かをぜひ考えてみてほしい。
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路上、お邪魔ですか?
期間:2026年4月25日(土)〜9月6日(日)
10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)
会場:金沢21世紀美術館
(〒920-8509 石川県金沢市広坂1丁目2-1)
展示室7〜12、14、デザインギャラリー、レクチャーホール
料金:
一般 1,200円(1,000円)
大学生 800円(600円)
小中高生 400円(300円)
65歳以上の方 1,000円
※本展観覧券は同時開催中の「コレクション展」との共通です
※( )内はWEB販売料金と団体料金(20名以上)
※当日窓口販売は閉場の30分前まで
休場日:
月曜日(ただし、7月20日は開場)、7月21日







