むこだあゆみ「はじめまして、ダレカさん」展

金沢
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

金沢在住のアーティスト・むこだあゆみさんの個展「はじめまして、ダレカさん」展に行ってきた。

むこださんの作品は、金沢の寺を会場にしたアートイベント「オテラート金澤」で初めて拝見した。

オテラート金澤出展時の肩書は「主婦」。作品は棺桶を題材にした「末、輪廻」。

4人の子供の母で、普段は葬儀場でスタッフとして働くむこださん。

子育ても一段落ついた39歳の時に、「40歳からの10年は自分のために時間を使おう」と思い立ち、幼少期から好きだった絵を本格的に描き始めた。

オテラート金澤への出展は、目標である個展開催への練習の意味もあったという。

作品の持つパワーやメッセージ性に圧倒された私は、むこださん初となる個展開催を楽しみにしていた。

会場となるのは、金沢から3駅離れた津幡駅前の「だるま屋旅館」。旅館の客室や廊下をギャラリーとして使っている。

展覧会では、タイトルにもなったオリジナルキャラクター「ダレカさん」を軸に、写真約30点、絵画8点を展示。

むこださんによれば、ダレカさんは個展開催に向けて撮影に行った山に群生していたキノコを見て着想を得たキャラクターだ。

キノコ群が集落に見えたむこださんは、そこに暮らすダレカさんをイメージ。

クマにもネコにも、妖精にも思えるダレカさんは、見る人の心の中に存在し、その姿かたちは受け手によって変化する。

写真家でもある、むこださん。

お子さんや金沢の街の風景、能登空港や廃品処理場などで働く人たちの姿を切り取った写真からは、ありきたりのようでかけがえのない日常の瞬間や小さな幸せが伝わってくる。

むこださんは「写真は誰かの日常の一瞬を切り取らせてもらっているけど、実際にはその人の時間は前後も流れ続けている。シャッターを切ったタイミングで偶然映り込んだ一人ひとりの人生を感じながら、作品を制作している」と語る。

本個展でも、オテラート金澤で発表した棺桶アートを展示。

旅館の客室を1つ使い、蓮や涅槃像、満月などを描いた棺桶を設置した。

棺桶の内側には仏教で大きな意味を持つ沙羅双樹の木を、蓋の裏面には沙羅双樹の花を描いている。

むこださんは「棺桶の内側や蓋の裏側は故人が最後に見る景色。邪気を払うと言われる墨を磨って描くことで、安心して送り出す意味がある」と説明した。

棺桶の表には登り竜を描くなど縁起物にもこだわり、新たな旅立ちを願う気持ちを込めた。

棺桶の周りを取り囲むのは、大小の靴。

亡くなった人を見送る大人、死を怖がり少し離れたところにいる子供、親にくっついている子供などを表現している。

部屋の壁に下がる筆絵は一つひとつの命を表しており、太くて長いものから、薄くて擦れたもの、点がいくつもつながって線になったもの、線にもならず消えていくものなど、人の生き様を感じさせる。

職業柄、若い人の自死に触れることも多いというむこださんは、棺桶アートに込めた思いについて「自分の死を見つめ直し、1人でも多くの人が命をつないでほしい」と語った。

棺桶アートから日常を切り取った写真作品、みんなの心の中にも存在するというダレカさん。

それぞれの作品はテイストこそ違うが、当たり前に生きることの尊さや日常という奇跡のすばらしさを共通して感じさせる。

彼女自身が持つエネルギーの大きさが、作品全体に命を吹き込んでいるようにも思えた。

独特の世界観と不思議な魅力を持った作家として、今後の活躍も楽しみにしたい。

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むこだあゆみ個展「はじめまして、ダレカさん」

会期:2026年6月19日(金)~25日(木) 10時~17時

会場:だるま屋旅館(石川県河北郡津幡町北中条ラ38-10)

入場無料

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者やインターネット回線、動画配信サービスのまとめ記事などを執筆しながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

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