好きなものに追われている

東京
ライター
来た、見た、行った!
かつら ひさこ

なんとなく、余裕がない。

去年から趣味が増えたせいなのだが、とにかく時間がないと感じる。

仕事で一日の約三分の一の時間が過ぎてしまう。

もちろん、働かなければ生活は成り立たないので仕方がないのだが、仕事が終わって、家のことをして、少し休んでいるうちに、あっという間に一日が終わってしまう。

 

そうなると、趣味に費やす時間が足りない、という気持ちになる。

以前は、もう少しゆったり本を読んでいた気がする。気になる本を買い、時間を作って読み、読んだあともしばらくその余韻の中にいられた。

けれど最近は、隙間時間に大急ぎで読んだり、買うだけ買って積読の山に入れておいたりすることが増えた。

 本を読むこと自体は好きなままで、読みたい本は増えているのに、読む時間と体力が追いつかない。

 

映画も同じだ。

観たい映画があれば、何とか予定を合わせて映画館には行く。

けれど、観終わったあとに残るのが、「いい映画だった」という感触よりも、「何とか時間を作って観に行けた」という達成感の方になってしまうことがある。

ひどい時には、少し時間が経つと、肝心のストーリーが「そういえば、どんな話だったっけ」と曖昧になる。

これは、映画が悪いわけではない。本が悪いわけでもない。たぶん、私の余白が足りないのだと思う。

 

趣味というものは、本来、生活に余裕をくれるものだったと思うのだが、好きなものが増えすぎて、好きなものに追われるような感じになっている。

読みたい本、観たい映画、追いかけたいもの、考えたいこと。

どれも楽しいはずなのに、全部を抱えようとすると、少し息が苦しくなる。

 

そうなると、やはり平日に一日、何もしない休みがほしくなる。

ちょうど気持ちのよい季節になってきた。予定のない平日に、ぶらっとその辺を散歩したい。

目的地を決めず、時間も気にせず、ただ歩く。

途中で本屋に寄ってもいいし、カフェに入ってもいい。

何なら、何も買わず、何も読まず、ただ外の空気を吸って帰ってくるだけでもいい。

そういう時間が、今の自分には足りていない気がする。

 

時間というのは限られている。

体力も、昔に比べて減ったのは間違いない。

新しく好きなことができれば、どうしても今までの趣味は少しずつ後回しになる。

そうなって初めて、読書や映画がこれまでどれだけ自分を形作ってくれていたのかがわかる。

とはいえ、新しい趣味もまた、毎日の日課になりつつある。しばらくは、この沼に潜ることになるのだろうと思う。

 

余裕がない、と言いながら、好きなものを手放す気もない。

だからせめて、急いで楽しむばかりではなく、たまには何もない日を作りたい。

好きなものに追われるのではなく、好きなもののそばで、少しぼんやりする時間を取り戻したいと思っている。

プロフィール
ライター
かつら ひさこ
1975年札幌市生まれ。自分が思い描いていた予定より随分早めの結婚、出産、育児を経て、ライティングを中心とした仕事を始める。毒にも薬にもならない読みやすい文章を書くのを心掛けている。趣味はクイズ、将棋、お茶を飲みながらカフェでぼんやりすること。

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