金沢21世紀美術館「コレクション展3 デジャ・ヴュ」
私にとって、「なんだかこの光景夢で見た気がする」「こんな会話前にもしたなぁ」というデジャ・ヴュは、比較的頻繁に起こる現象だ。
しかし、実際にデジャ・ヴュは脳の錯覚だとか勘違いだとか、実際には体験したり見たことはないけれど「そう感じてしまう」だけらしい。
そうは言っても、デジャ・ヴュが起こった時はなんだか不思議な気持ちになるし、錯覚とは思えないくらいの確信や驚きに近い発見を感じるのも事実だ。
金沢21世紀美術館で収蔵作品を中心に展開するコレクション展のテーマが「デジャ・ヴュ」と知り、私はアートからデジャ・ヴュの謎を少しでも解明できるかもしれない!と期待した。
今回の展示では、1990年代から近年にかけて活動する8名の作家の絵画やデジタル、立体的なインスタレーションなど、幅広いジャンルの作品が並んだ。
同展の担当学芸員・宮澤佳奈さんによると、1990年代以降は、インターネットの進化や紛争など社会情勢にうねりが起きた時代。
そうした社会的な変容と内面的世界を考える上での重要な考え方、アイデアを感じられる作品を選んだという。
私が特に気になったのは、泉太郎さんの「くすぐられる夢を見た気がする」シリーズだ。

泉太郎 《くすぐられる夢を見た気がする》
スポーツ選手の決定的な瞬間を収めた写真を再現するという作品なのだが、写真のポーズを人間が意図的に模倣するための彫刻と、実際に人が彫刻に乗り込み(?)再現する様子を収めた映像、そして再現映像を収録する際に同時に録音された周囲の環境音で成り立っている。

スポーツ選手の一瞬を捉えた写真は、ある意味雑誌や新聞でよく見るような光景なのだが、実際に再現するとなると膨大な労力と身体性、時間等を要するという現実を作品から認識させている。
私たちが生きていく中で、流し見るように過ぎ去るひとつひとつの場面も、実は奇跡に近い刹那なのではないかという気になる。
また、ブラジルの作家 ヴィック・ムニーズさんの「ピクチャー・オブ・エアー」シリーズも不思議さや錯覚にも通じる違和感があって面白い。

ヴィック・ムニーズ《ピクチャー・オブ・エアー ベルリンからの眺め、ドイツ 東経13度19分59秒、北緯52度31分0秒/1989年11月9日午後6時57分/方位角93度7分126、地平高度90度》2001(画像提供:金沢21世紀美術館)
美しく煌めく夜空の写真のようだが、実はヘアジェルを敷き、空気を吹き込むことで作られた星の配置図を写真に撮ったものだ。
その星の配置はベルリンの壁崩壊やアポロ11号が月面着陸した瞬間など、人類にとって大きな出来事が起きた日時と場所の夜空をNASAのソフトを使って割り出しているのだという。
透明なヘアジェルという何気ない日常のアイテムが、写真に収められることで、歴史的に重要な瞬間の夜空と同じに見えるということ。
物事の価値観や存在も揺らぐようなメッセージ性が、作品から伝わってくる。
ほかにも同館収蔵後初披露となるスプツニ子!さんの「Tech Bro たちの⼈類論争」や、2枚のスクリーンに映し出された70年代のサスペンス映画とイギリスの立体駐車場の映像が交差するルナ・イスラムさんの「縮尺(1/16インチ=1フィート」など、さまざまな視点でデジャ・ヴュを感じさせる作品が楽しめる。

スプツニ子! 《Tech Broたちの人類論争 #2 -データ、AI、ポピュリズム、そして民主主義の未来》2024

ルナ・イスラム 《縮尺(1/16インチ=1フィート)》 2003
同展でデジャ・ヴュの謎を解き明かすヒントをもらうつもりが、ますますデジャ・ヴュの迷路に迷い込んでしまったようだ。
その記憶や目に映るものが本当に真実なのか、自分自身の感覚は正しいのか、そもそも存在すら疑ってしまうような胸騒ぎを、ぜひ作品を通じてじんわりと感じてみてほしい。
期間:2026年1月31日(土) – 2026年5月10日(日)
10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)
会場:金沢21世紀美術館 展示室1〜6
料金:一般 450円(360円)
大学生 310円(240円)
小中高生 無料
65歳以上の方 360円
※( )内は団体料金(20名以上)
※当日窓口販売は閉場の30分前まで
休場日:月曜日(ただし、5月4日は開場)、5月7日







