世界的問題作の日本初演が話題、再演作品も続々、2026年のミュージカル
早いもので、今年も来年のミュージカルが気になる時期がやって来た。今年2025年は話題の新作ミュージカルが盛りだくさんで、行列を作って渋滞しているような状態だったが、来年2026年は再演が待たれていた人気作品が次々と上演。今年ミュージカルにはまった人々が、既に定評のあるミュージカルでさらに深くミュージカル沼にはまるにはうってつけの年となりそうだ。もちろん新作も粒ぞろいだ。
まずは何といっても新作や日本初演となるミュージカルからピックアップしていこう。最も注目されるのは、米国発の世界的問題作「ディア・エヴァン・ハンセン」の日本人キャスト版の初演だ。 大ヒット映画『ラ・ラ・ランド』や『グレイテスト・ショーマン』を手掛けたベンジ・パセックとジャスティン・ポールが作詞作曲を務め、脚本はミュージカル界の流れを変えた名作「RENT」に大きな影響を受けたことを公言しているスティーヴン・レヴェンソン。日本版演出を務めるのは、人気がうなぎのぼりの小山ゆうな。SNS時代の中で、さまよい続ける若者たち。社交不安障害を抱える主人公のエヴァンが、クラスメイトの死ととっさについた嘘がきっかけで本当の自分に気づいてしまう物語。米国をはじめ世界中でその現代性が衝撃を持って受け止められた問題作で、日本上演が待たれていた。キャスティングは期待を集めるに十分で、エヴァンは柿澤勇人と吉沢亮がWキャストで務める。母親を安蘭けいと堀内敬子が、エヴァンが心魅かれる女性役を木下晴香と松岡茉優がWキャストで演じる充実ぶりだ。また内容は全く明かされていないが、今年再演されたミュージカル「SPY×FAMILLY」の新たなミッションを描く「SPY×FAMILLY2」も話題となっている。
「白爪草」は2020年のコロナ禍の際中に電脳少女シロ主演ですべての役をVTuberが演じる世界初の試みで話題となった映画『白爪草』のミュージカル化作品だ。唯月ふうかと屋比久知奈が出演する「2人だけのミュージカル」となる。安蘭けいは声のみの出演。 忘れてはならない日本初演ミュージカルが「奇跡を呼ぶ男」だ。「奇跡のショウ」で人々を熱狂させている伝道師がある人物との出会いによって、その虚飾に満ちた人生を変化させ始める物語。主演の竹内涼真の演技と歌唱のレベルの高さは初ミュージカルの「17アゲイン」で実証済みだけに、期待が高まる。
また、2010年公開の同名映画をもとにした「ロマンティック・アノニマス」も日本初演で期待大。岩崎大昇と吉柳咲良が盛り上げる。「ノートルダムの鐘」などで知られるスコット・シュワルツの演出が楽しみだ。 「アイ・ラブ・坊っちゃん」は音楽座ミュージカルのオリジナルミュージカルで、純粋な意味では新作ではないが東宝が新たに上演する新作扱いのミュージカル。音楽座ミュージカルのファンであることを以前から公言している井上芳雄が主演する。夏目漱石の人生と小説の世界が交錯しながら進んでいく物語だ。
「レッドブック〜私は私を語るひと〜」は、韓国で異例のヒットを記録したミュージカル「女神様が見ている」の名コンビ、ハン・ジョンソク(脚本)とイ・ソニョン(作曲)が4年の歳月をかけて制作した韓国発のオリジナルミュージカル。日本初演となる日本人キャスト版は咲妃みゆと小関裕太の共演という願ってもない組み合わせが実現した。19世紀の英国ロンドンを舞台に、小説を書くことで自分自身を表現するアンナが、社会の偏見などと闘いながら「私」として生きる道を見つけ出す物語だ。
続いて大豊作の再演作品では、やはり「ミス・サイゴン」が筆頭格。ベトナム戦争に従軍した米兵がベトナム人娘と一夜の恋に落ち結ばれる物語だが、戦後に厳しい現実を突きつけられる米兵らと、大混乱のインドシナで生き抜いていく娘や男たちの姿が感動的に描かれる巨編。名曲が惜しげもなく並ぶミュージカルの金字塔のひとつだ。
ファンにとって待ちきれないのは、堂本光一が再演する「チャーリーとチョコレート工場」。ジョニー・デップが主演した映画でも知られるが、初演で堂本は華麗な衣装と多彩なエンターテナーぶりで工場のポップな魅力を一回りも二回りも広げただけでなく、チョコレートづくりにプロフェッショナルなクリエイティビティーを付与して、子どもの夢を壊すことなく、ものづくりの難しさや面白さまで見せて、大人でもたどり着ける境地を開拓。まったく新しいウォンカ像まで提示してみせただけに期待大。演出はウォーリー木下が手掛ける。
「メリー・ポピンズ」もファンの多いミュージカル。魔法使いのような家庭教師が、人生の楽しみ方を教えて、子どもたちの毎日や親や町の人々の生き方も変えてしまう一大スペクタクルは楽しいことこの上ない。 大竹しのぶ主演の魂のミュージカルである音楽劇「ピアフ」は15周年を迎える。貧しい暮らしからその唯一無二の歌声で抜け出したピアフは世界的な名声を得るが、どこまで行っても達成感や満足感とは無縁の日々。最愛の人との別れなど、歌唱力と演技力がそろって超一流の大竹ならではの表現が随所にちりばめられ、何度観ても感動を呼ぶ作品だ。栗山民也の演出は再演ごとに冴えを増している。 待望という意味では、「レディ・ベス」と「マドモアゼル・モーツァルト」「レベッカ」が挙げられるだろう。
「レディ・ベス」は日本の東宝が宝塚歌劇団の小池修一郎やウィーンミュージカルの巨匠たちと創り上げた歴史ミュージカル。2014年の日本での世界初演に続いて2017年に再演されて以来9年ぶりの再演。2020年のスイス公演の評判も良く、華麗で切ないミュージカルが帰ってくる。レディ・ベスには乃木坂46の奥田いろはと、ミュージカル界の期待の星、小南満佑子が抜擢された。
「マドモアゼル・モーツァルト」は音楽座ミュージカルのオリジナルミュージカルで東宝が上演したこともある話題作。モーツァルトは本当は女性だったが、当時の世の中の状況から、少年として世に出たという物語。音楽座ミュージカルとして上演するのは実に18年ぶりとなる。東宝公演でファンになった人もオリジナルの威力を知っておくべきだろう。
名匠ヒッチコックが英国から米国に渡って最初に撮った映画としても知られる「レベッカ」は、スリラー要素もある人気作品。7年ぶりの再演となる、熱狂的なファンが定着している「ジキル&ハイド」、「天使にラブソングを ~シスター・アクト~」、「RENT」も再演。ミュージカルが初めての人も安心して観られる作品ばかり。ただし、「RENT」はミュージカル界の革命児的作品で、刺激は強い。しかし、これを観ないと、現代のミュージカルを知っているとは言えない作品。絶対的にお勧めする。
「ブラッド・ブラザーズ」も見逃せない。1983年にロンドンで初演され、いきなりローレンス・オリヴィエ賞の最優秀新作ミュージカル賞を獲得。日本では1991年以来何度も上演されているが、今年は東宝製作では19年ぶりに日本版の再演となる。双子の運命の物語を目に刻み付けよう。ストレートプレイでも活躍する日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)の演出で新キャストでの上演となる。
■記事内で紹介した、各種スケジュール情報
●「ディア・エヴァン・ハンセン」=7~8月に東京・有明のEX THEATER ARIAKE (東京ドリームパーク内)で、8~9月に愛知県、大阪府で上演
https://horipro-stage.jp/stage/dearevanhansen2026/
●「SPY×FAMILLY2」=9~10月に上演。劇場は未公表
https://www.tohostage.com/spy-family2/
●「白爪草」=1月8~22日に神奈川県川崎市幸区のスペルノーヴァカワサキで上演
https://horipro-stage.jp/stage/sirotsumekusa2026/
●「奇跡を呼ぶ男」=4月4〜24日に東京・池袋の東京建物Brillia Hallで、5月1〜3日に大阪市のフェニーチェ堺 大ホールで、5月8〜10日に福岡県久留米市の久留米シティプラザ ザ・グランドホールで、5月15〜17日に愛知県稲沢市の名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)で上演
https://horipro-stage.jp/stage/leapoffaith2025/
●「ロマンティック・アノニマス」は、3月1〜24日に東京・池袋の東京建物Brillia Hallで、4月1〜5日に大阪府箕面市の東京建物Brillia Hall箕面 大ホールで上演 https://www.tohostage.com/romantics/
●「アイ・ラブ・坊っちゃん」=5月1〜31日に東京・浜町の明治座で、6月に北海道と大阪で上演
https://www.tohostage.com/botchan/
●「レッドブック〜私は私を語るひと〜」=5~7月に、東京・池袋の東京建物Brillia Hall、大阪市の森ノ宮ピロティホール、名古屋市の御園座で上演
https://redbookjp.com
●「ミス・サイゴン」=10~11月に東京・渋谷の東急シアターオーブで、12月から大阪市、福岡市で、2027年1月から静岡県浜松市、札幌市で上演
https://www.tohostage.com/miss_saigon/
●「チャーリーとチョコレート工場」=3月27~31日に埼玉県川越市のウェスタ川越 大ホールでオーブニング公演の後、4月7~29日に東京・日比谷の日生劇場で、5月6~28に福岡市の博多座で、6月5~12に大阪市のフェスティバルホールで上演
https://www.tohostage.com/cacf/index.html
●「メリー・ポピンズ」=3月28日~5月9日に東京・渋谷の東急シアターオーブで、5月21日~6月6日に大阪市の梅田芸術劇場メインホールで上演
https://horipro-stage.jp/special/mp20250628/
●「レディ・ベス」=2月9日~3月27日に東京・日比谷の日生劇場で、4月4~13日に福岡市の博多座で、5月3~10日に名古屋市の御園座で上演 https://www.tohostage.com/ladybess/index.html
●「マドモアゼル・モーツァルト」=5月24日に東京・町田の町田市民ホールでホームタウンプレビュー公演の後、7月10~11日に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで、7月16日に名古屋市のNiterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホールで、7月19日に広島市のJMSアステールプラザ 大ホールで、7月24~26日に東京・後楽園(水道橋)のIMM THEATERで上演
https://ongakuza-musical.com/works/mm
●「レベッカ」=5〜6月に東京・日比谷のシアタークリエで上演
https://www.tohostage.com/rebecca/
●「ジキル&ハイド」=3月15~29日に東京・有楽町の東京国際フォーラム ホールCで、4月3~6日に大阪市の梅田芸術劇場 メインホールで、4月11~12日に福岡市の福岡市民ホール 大ホールで、4月18~19日に名古屋市の愛知県芸術劇場 大ホールで、4月25~26日に山形市のやまぎん県民ホールで上演
https://www.tohostage.com/j-h/
●「天使にラブソングを ~シスター・アクト~」=3月25日~4月21日に東京・浜町の明治座で、5月5~7日に大阪市の梅田芸術劇場 メインホールで、5月15~16日に長野県上田市のサントミューゼ上田市交流文化芸術センター 大ホールで、5月23~24日に仙台市の仙台銀行ホールイズミティ21 大ホールで、5月29~31日に名古屋市の愛知県芸術劇場 大ホールで上演
https://www.tohostage.com/sister_act/
●「RENT」=秋に東京・日比谷のシアタークリエで上演
https://www.tohostage.com/rent2026/
●「ブラッド・ブラザーズ」=3月9日~4月2日に東京・日比谷のシアタークリエで、4月10~12日に大阪市のサンケイホールブリーゼで上演 https://www.tohostage.com/blood_brothers/index.html







