楽しもう、東京国際映画祭
先日、日比谷ミッドタウン前を通りかかったところ、大きなスクリーンいっぱいにハリー・ポッターが流れていました。そう、HIBIYA CINEMA FESTIVALをやっているんですね。
テーマは昨年に引き続き「ながらシネマ」とのことで、飲食を楽しみつつ、ピクニック気分でくつろげるように屋外上映が組まれていました。日比谷公園も含め、どうやら数か所で開催されているようです。
私が偶然通りかかったミッドタウン前は、どうやらそのまま10月27日から始まる東京国際映画祭(TIFF)の会場でもあるようでした。そこで今回は、知っているようで知らない「国際映画祭とは何か?」をちょこっとばかり掘り下げつつ、東京国際映画祭の楽しみ方を一緒に考えられたらなぁと思います。
国際映画祭とは何か?二つの顔を持つ舞台
ざっくり言って、映画祭には主に二つの大きな顔があります。それは、①優れた作品をたたえる文化的な側面と、②作品の権利が売買されるビジネスマーケットとしての側面です。
1. 映画を売り込む「ビジネスマーケット」としての役割
国際映画祭など大型の映画祭の本質は、②の「ビジネス」の側面にあるといっても過言ではありません。
映画祭は、作品を売る・売り込むための場でもあります。目玉商品としてのオープニング作品やクロージング作品は注目を集めるためのプロモーションであり、新しい才能を発掘し広めるためのコンペティション部門は、作品の価値を高めるための審査の場です。
特にコンペティション部門で受賞することは、作品の権威を高めると同時に、マーケットでの買い付け価格を劇的に上昇させる、重要なビジネス要素でもあります。
映画人の本番は「フィルムマーケット」
一般でニュースになる(表に見える)側だけではありません。映画に携わる人たちからすれば、映画祭の「本番」は併設されているフィルムマーケットの方にあるといえます。
フィルムマーケットは、文字通り映画の商談の場であり、映画の売買は「権利」を買う形で行われます。詳細についてはこちらの方の記事、そしてマンガがとても面白いのでぜひご確認ください。
[【参考】noteの記事とマンガ]
有名どころでいうと、カンヌ映画祭のマルシェ・ドゥ・フィルム、ベルリン映画祭のEFM(ヨーロッパ・フィルム・マーケット)、そして東京国際映画祭のTIFFCOMなどがあります。
マーケットだけを単独で開催しているロサンゼルスのAFM(アメリカン・フィルム・マーケット)のような例もあり、映画とはショービジネスなのだなぁということを思い知らされます。とある知人は、カンヌに入り浸って(買い付け)大変な目にあっているようでしたが、マーケットがあることで、世界中の映画人が交流するのです。監督、俳優、プロデューサー、評論家など、世界中の映画関係者が一堂に会し、情報交換や新たな企画の種を蒔く場になります。
2. 観客向け「お披露目の場」としての役割
一方で、映画祭は映画ファン・観客へのお披露目の場でもあります。
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特別な体験: 普段見られないスターも見られれば、監督やプロデューサーから話を聞いたり、裏方のことを知ったりできるトークショーやティーチインの機会が与えられます。
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新しい作品との出会い: 誰もが知っている大作の続編や監督の新作だけでなく、「買い付けが決まっていない新しい風を吹かせてくれそうな作品」も上映されます。
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観客の力が試される: 敢えて一般公開日の「観客の反応」によって買い付けを決めるバイヤーもいます。もう見られないかもしれない一本を見たいファンにとって、その声は非常に重要なのです。
ここで自分たちの国の配給会社に買い付けられないと、のちに公開されない場合も大いにあるのが現実です。映画祭は期間が短く、どんなに多くても同じ作品が見られるのはせいぜい2~3回、少なければ1回なんてこともあります。
東京国際映画祭(TIFF)の楽しみ方と構成要素
ここからは東京国際映画祭(TIFF)について掘り下げていきましょう。TIFFは国際的なコンペティション部門を中心に据えつつ、多様な特別企画や提携イベントを通じて、世界の映画文化とビジネスの交流点となっています。
映画祭の主要な部門
TIFFの主要部門を見ていきましょう。
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コンペティション: 世界中から集められた長編作品の中から、「東京グランプリ」などの主要な賞を競う部門。新たな才能や世界的な話題作を発掘するTIFFの核です。
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ガラ・セレクション: オープニング、クロージング作品、その他国内外の著名な監督の最新作や、注目度の高い話題作を上映する華やかな部門。レッドカーペットなどのイベントも行われます。
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アジアの未来: アジアの新鋭監督(第一作、第二作)の作品に焦点を当て、アジア映画の新しい才能を紹介・育成する部門。
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ジャパニーズ・アニメーション: 日本のアニメーション作品を特集する部門。近年は海外作品も加わり、「アニメーションの未来へ」と題して多様な作品を上映します。(例:『ルックバック』『メイクアガール』など)
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TIFF/NFAJ クラシックス: 国立映画アーカイブ(NFAJ)との提携企画。映画史に名を残すクラシック作品や、特定のテーマに沿った特集上映を行います。
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その他の特別企画: 特定の映画人の回顧企画(例:映画監督 吉田喜重)、特集上映(例:センターピース、ジャパン・プレミア)などがあります。
特徴的な特別企画・提携催し
TIFFの特色を出し、文化的な多様性を深める重要な催しです。
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TIFF/NFAJ クラシックス ブラジル映画週間: (2025年開催の場合)「日本・ブラジル外交樹立130周年」などを記念した特集。ブラジル映画の黄金期とされるシネマ・ノーヴォ(グラウベル・ローシャ作品など)から現代の秀作までを上映し、ブラジル映画の多様性と歴史を紹介します。
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日中映画週間: 日本と中国の映画交流を促進する企画。相互の映画の紹介や、映画人による交流イベントも。話題作のチケットは瞬殺になることが多いです。
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ケリング「ウーマン・イン・モーション」: ファッションブランドのケリングがパートナーとなり、映画業界における女性の貢献を称え、地位向上を目指すトークイベントや表彰を行います。(カンヌでも実施されている企画です。)
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TIFFトークサロン: 監督や俳優による舞台裏トークが聞けます。
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学生・若手向けワークショップ: 映像制作や映画批評を学ぶ体験講座もあります。
無料屋外上映会で雰囲気を楽しむ
そして、一番最初にお話した日比谷のシネマフェスティバルと同じ会場でそのまま行われるのが【屋外上映会】です。
ラインナップに、私が大分前に紹介し、そして今まさに日本上映権の期限が迫っている『赤い糸 輪廻のひみつ』も入っているので是非チェックしてほしいです。映画館で見られるのは11月まででその後は何とも……という事情もあり、でっかい画面でみんなで見られるなんて、他にない機会かと!

『赤い糸 輪廻のひみつ』(c)2023 MACHI XCELSIOR STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.
こういった他にない話題作までもチョイスして無料公開してくれるのも、また映画祭の醍醐味かもしれません。
今後の映画祭情報とまとめ
現在、東京国際映画祭の座席チケット(有料)も既に売り出されています。まだ売り切れていない作品もあるので、是非チェックしてみてください。(プレス参加以外にも、個人的に数本どうしてもと意気込んで取ったチケットもあるのですが、どれもこれも楽しそうで……全部見たい!!!)
その他おすすめの映画祭
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香港映画祭(日本開催): 毎年同時期に開催されます。去年はたしか恵比寿ガーデンプレイスなどをベースに行われたかと思います。(今年の情報がいまだに薄いのですが……)チケット争奪戦になるほどの人気です。
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キネコ国際映画祭: 10月末に開催される子ども国際映画祭。(特集はポーランド映画)
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東京フィルメックス: 11月末に開催。
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広島国際映画祭: 11月末に開催。
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名古屋国際アニメ映画祭: 12月に開催。
国内でもちょこちょこある様々な映画祭……狙い・主催・色、それぞれに違いますが、気になった方は是非覗いてみて下さい。新しい出会いや楽しみがあるかもしれません。
まずは都内の方は、ぜひ、東京国際映画祭 2025年10月28日(火)〜11月5日(水)へ!
無料上映は『赤い糸 輪廻のひみつ』の他にも、『教皇選挙』『366日』『新しい靴を買わなくちゃ』『遥かなる山の呼び声』『ジョーズ』『ネムルバカ』『パリタクシー』『ヴェノム:ザ・ラストダンス』『バッドボーイズ RIDE OR DIE』『恋するプリテンダー』『グランツーリスモ』『はじまりのうた』『ベスト・キッド』『スーパーマン』シリーズ『マクロスF・Δ』シリーズなどなど……話題作が溢れているので、まず雰囲気を楽しむところからでも!








