夢か現か、三千大千世界が交差するオテラート金澤選抜展
個人的に、地元・金沢の自慢のひとつでもある「oterart(オテラート)金澤」。
金沢市内の10前後の寺院が宗派を超えてギャラリー会場になり、現代美術から伝統工芸、パフォーマンスやワークショップなど多彩なアートや表現が楽しめる、国内外でも珍しいのでは?!と思う大好きなイベントです。
過去のoterart金澤レビューはこちら(2024年、2023年、2022年、2019年)
oterart金澤は毎年秋に開催されるのですが、初の試みとして5月1日~5日に近江町市場や金沢駅からほど近い聞善寺さんで、昨年度の本展で受賞した作品を中心に展示する「oterart金澤選抜展」が行われました。
2024年のoterart金澤は9月21日~29日まで8寺院で開催されたのですが、すべてのお寺を巡ることはできなかったので、選りすぐりの作品が一堂に見られるのはなんともありがたいです。
聞善寺さんの本堂へ入ると、内陣の両脇には前年度準大賞となった髙明輝さんの絵本原画『あさごはんかい』やサポーター賞を受賞した田中美路さんの『ヘブンリィ・プレイス』、倉林雅幸さんの『人魂蝶夢』が展示されています。
『あさごはんかい』髙明輝/画家
『ヘブンリィ・プレイス』田中美路/陶芸家
『人魂蝶夢』倉林雅幸/画家
昨年は3つの作品を違うお寺で鑑賞したのですが、展示する場所(お寺)が変わるとまた作品の印象も異なるのが面白いです。
作家さんにお話を伺うと、展示するお寺やスペースが決まってから作品の立案や創作を始めるという方も多かったので、アーティストさん自身もまた本来のイメージとは違う作品の表現となって楽しかったそうです。
聞善寺さんのお庭には、oterart金澤2024大賞に輝いた森本梓円さんの作品『麒麟の庭』が!
『麒麟の庭』森本梓円/金沢美術工芸大学 彫刻専攻
FRP(繊維強化プラスチック)やガラスファイバーが素材になっているそうですが、透明感と煌めきとその佇まいが幻想的な作品です。
2階へ上がる階段の手前には、木彫刻作家の齋藤美知代さん制作のサポーター賞受賞作品『不思議な柘榴(ザクロ)』と、金沢美術工芸大学の市田朱里さんの『おもし』が。
今回、案内役をして下さった齊藤さんがご自身の作品と一緒に写真を撮ってくれました。
『不思議な柘榴』齋藤美知代/木彫刻
『おもし』市田朱里/金沢美術工芸大学
そして、今回この選抜展でもうひとつ楽しみにしていたのが、2021年に大賞を受賞した漆芸作家・太田魁さんの『水環琴 (みなわのこと)』の演奏でした。
『水環琴 (みなわのこと)』は太田さんが洋楽器の「レインスティック」に着想を得た筒状の楽器で、表面に漆を塗っています。
みなわのこと『水想』太田魁/漆芸作家
楽器の表面を漆で固めることで、音が閉じ込められ反響して良い音色が奏でられるそうです。
実際に演奏していただいたのですが、お寺の2階の畳敷きに突然お水が流れてきたような、心洗われる音で引き込まれました。
百聞は一見に如かずなので、太田さんの演奏はぜひこちらから聞いてみてください。
oterart金澤は毎年テーマが決まっていて、2024年度は「夢か現か」。そして今年は「三千大千世界(さんぜんだいせんせかい)」です。
三千大千世界は「私たちの生きている全宇宙を表現した言葉」とのこと。
無限の可能性を感じる壮大なテーマを、どのような作家さんがどんな作品で表現するのか楽しみです!
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「oterart金澤選抜展」 聞善寺(金沢市瓢箪町5-33)
2025年5月1日(木)~5月5日(月)
参加作家:髙明輝/画家、倉林雅幸/画家、小坂素石/書家、森本梓円/金沢美術工芸大学・彫刻専攻、齊藤美知代/木彫刻、BeBe/イラスト作家、太田魁/漆芸作家、田中美路/陶芸家、髙津芽生/金沢美術工芸大学・油絵専攻、イチゴカメラ/写真家グループ、山口実華/作家、市田朱里/金沢美術工芸大学、marinco/クレイアート
「oterart金澤2025 三千大千世界」
前期:2025年9月20日(土)~28日(日)
後期:2025年9月20日(土)~28日(日)
【浅野川地区】廣誓寺/聞善寺/崇禅寺
【東山地区】浄光寺
【小立野地区】天徳院/棟岳寺
【寺町地区】興徳寺/長久寺/常松寺
