oterart(オテラート)金澤2022|親子で作品を出展した金沢仏壇職人の母と女子高生

金沢
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

金沢で毎年秋に行われているアートイベント「oterart(オテラート)金澤」。いくつものお寺をギャラリーとして使い、地元作家や一般公募の作品が展示される。

「oterart(オテラート)金澤」の背景をまず語ると、実は金沢は寺院が多い。市内には「寺が多い地区」というものがあり、観光地としても人気のひがし茶屋街周辺(東山地区・浅野川地区)と、にし茶屋街周辺(寺町地区)から小立野地区にかけてまとまっている。さらに各寺院の宗派は「金沢はコレ!」と偏っているわけではなく、いくつもあってバラバラなのだという。

「oterart(オテラート)金澤」では宗派関係なしに市内の寺院が協力し合い、さらに人間国宝作家の伝統工芸作品から学生作家の現代美術まで同じ空間に飾るという、考えれば考えるほどエモすぎるアート展なのである。

お寺によって門構えや内部の構造、宗派的な違いもあり、ひとつひとつの場所に「雰囲気」がある。寺院という普段は法事などの用がない限り足を踏み入れることが少ない場所を、この期間だけは心置きなく回遊できるのも魅力のひとつだ。

さて、今年の「oterart(オテラート)金澤2022」は「癖」をテーマに、11の寺院で60組のアーティストが作品を展示した。

東山地区の観音院では、親子で作品を出展したという齊藤親子に出会った。金沢仏壇の職人として木彫刻を生業とする齊藤美知代さんと、娘で金沢高等学校2年生の齊藤愛花音(あかね)さんだ。

母の美知代さんはこれまでも作家として「oterart(オテラート)金澤」に参加し、今年度からイベントの実行委員も務めている。

美知代さんは今年、観音院の本堂奥に鎮座するご本尊の真ん前に、寺に伝わる梵字の「阿」(大日如来を意味する)の木版を装飾する台として木彫刻を制作し設置した。

あえて非対称なデザインにし、自由に流れる雲や蓮を彫り込んだ作品名は「あ!ア!阿!」。

「金沢仏壇の職人」という堅気な(勝手な)イメージと正反対に、豪快に明るく笑う美知代さんらしい、楽しいタイトルだ。

そんな母の姿や作品を、娘の愛花音さんは幼少期より見てきた。今年度最年少参加者として、フェルト細工で作った作品「好きの気持ち」を母と同じ舞台に出展した。

声がかかったとき、ほぼ全員がプロの作家という中、作品を出展するのは気後れしたという。しかし、めったにない経験と心を決め、学業と両立させながら制作に挑んだ。

ハートを模したフェルトのクッションに「アニメ」や「手芸」、「空手」など、自分の好きなものを刺繍していったら約50センチ×50センチの大きな作品になった。

空白となっている部分はこれからの人生、もっと増えていくであろう自分の「好き」を表現していると愛花音さんは説明する。

お母さんの仕事について尋ねると、「いつかは母の仕事を継ぎたい」。愛花音さんは少し恥ずかしそうに、そう答えた。

齊藤美知代さん(左)、住職の安念さん(中)、齊藤愛花音さん(右)

観音院では齊藤さん親子のほか、住職・安念さんの奥様と妹さんによるアートユニット「あ・うん」の作品や、近江町市場近くの「紙文具あらき」の店主でもある「オリオリ折り紙マン」の折り紙細工、猫の音楽隊を粘土アートで制作した「marinco」の作品などを展示した。

「飛天」-あ・うん

 

「ウサギサンノサケグセ」-オリオリ折り紙マン

今年の「oterart(オテラート)金澤2022」は終了したが、来年もきっと秋の金沢では三者三様な各寺院を多彩なアーティストたちが芸術で飾るだろう。

全国的に見てもこれだけ宗派の異なるお寺が手を取り合い、ひとつのイベントを実現させるのはめずらしいことだそう。

来年のシルバーウィークはぜひ、「oterart(オテラート)金澤」で命の洗濯をしてみては。

取材協力:観音院
石川県金沢市観音町3-4-2

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者やインターネット回線系のまとめ記事などを執筆しながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

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