なぜか最近モテている話

宮城
ライター
KIROKU vol.16
佐藤 綾香

 

なぜか年下の、20代の女の子にモテはじめている。自分で言うのも恥ずかしいけれど「なんか最近モテてんな〜」と自覚してしまうほど、けっこうモテている。

ここでの「モテ」は恋愛的な意味ではなく、人間的に好かれている、という方向でとらえてほしい。

 

同じ会社で働いている子が退社時間が重なったときにコソッと「ずっと話してみたかったんです」と教えてくれたり「将来に悩んでいるから話を聞いてほしい」とわたしを頼ってくれたり、あまり接点のなかった子が退職するときに「連絡先を教えてほしい」とわざわざわたしのデスクまで話しかけにきてくれたり、仕事の飲み会で偶然向かいの席になった子が照れながら「推しです」と告白してくれたり、いま、わたしのなかではとにかく、けっこうモテている。

 

いままでこんなにたくさんの後輩から慕われたことがなかったので、純粋な「ありがとう」という気持ちが大きい。

ただ、そこには気恥ずかしさや「そんなにいい人間ってわけじゃないんですよ」と自分を卑下するような姿勢が混じり合っていて、わりと複雑な思いでいる。

 

恋愛的な意味でモテるとその副作用がこわくて警戒心が先に立つが、人間的にモテているこの状況は、素直にすごくうれしい。

しかし、わたしがこの状況に慣れていなくて、気持ちを打ち明けてくれているのに「え、あ、あ、お、恐れ入ります」といった明らかに様子のおかしい受け答えをしてしまう。

わたしはほんとうに30年以上も生きてきたのだろうか。

まともに生きてきたらもっとマシな、余裕のある受け答えができるはずなのだけれど、それができる気配は一向にない。

 

自分が20代だった頃を考えると、30代の女性の先輩はなんだかキラキラして見えた。

「こんなひとになりたいな」と憧れていた先輩たちもいて、「こんなひとになれるようにがんばろう」と日々を一生懸命生きてきた、つもりだ。

そんな対象にこのわたしもいよいよ入りはじめたのかと思うと、胸がこそばゆい。

いまわたしを慕ってくれる後輩がいるのなら、そして後輩がわたしにすこしでも憧れの気持ちをもってくれているのなら、すべてはわたしがだいすきな先輩たちのおかげである。

おもしろくてかっこいい先輩たちがいたからこそ早く30代になってみたいと期待で胸がいっぱいだったし、これからどんどん歳を重ねるのもたのしそうだ、と自分の人生を他人任せにせず大切に生きようと前を向ける。

 

 

正直、自分が後輩に慕われるとはおもわなかった。

ひとの好き嫌いは激しいし、何を考えているかわからないとよく言われるし、ひとり行動がすきだし、別にいいアドバイスができるわけじゃないし、年下じゃなくとも「このひとはわたしと話すとき居心地が悪そうだな」と察するシーンも多々あるし、むしろ苦手な先輩に分類されるほうが自分でも納得がいく。

それなのに、このわたしが、いま、後輩に好かれているだなんて。

生きてみなきゃわからないことってたくさんあるなぁ。

とにかくわたしをすきでいてくれているみんなに、いつもありがとう、とハグしてまわりたい。

いつもありがとう。ハグ。

 

 

プロフィール
ライター
佐藤 綾香
1992年生まれ、宮城県出身。ライター。夜型人間。いちばん好きな食べ物はピザです。

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