<作る>を本気で楽しむ!映画を作るメタ映画『映画大好きポンポさん』レビュー

都内某所
映像編集者
秘密のチュートリアル!
野辺五月

 

『映画大好きポンポさん』はPixivコミックの漫画-

更に言えば、Pixivに取り上げられる経緯も、作者杉谷庄吾【人間プラモ】が2日間で作った熱いパッションを
「WEB漫画として蔵出し→クリエイターの評判→Pixivへ」という流れで出てきた作品です。

?2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

https://comic.pixiv.net/works/3728

それが満を持して、映画化!
しかも、アニメーション『この世界の片隅に』チームが立ち上げた新進気鋭の制作会社CLAP

映画のスクリーンで、豪華なスタッフによる「映画を作る話」を見る贅沢。

2018年この漫画がスゴイで20位以内にランクインした原作は当然面白いのですが、だいぶ前の記憶……今回は「敢えて忘れたまま見た」結果をレビューします。

 

【ストーリー】

敏腕映画プロデューサー・ポンポさんのもとで製作アシスタントをしているジーン。


©2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

映画マニアで撮影にも憧れていた彼が突然の抜擢で、CM制作から映画作りに加わることに。
そして、監督してポンポさんから『MEISTER』の脚本を託される……。
ヒロインに抜擢された新人女優とともに、今、波瀾万丈の撮影が始まる!

※ちなみに、後で確認したところ、漫画は2巻まででており、スピンオフが他に2つ出ていますが、映画版は1巻をベースにアレンジされていました

 

 

感想

【リアルでファンタジーな、クリエイターズライフ!】

この映画をお勧めしたいのは、まず、いの一番に、「映画」が好きな人、そして「映画を作る工程」に興味のある人です。


©2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

ざっくりと舞台裏を知りたいという方には本当にお勧め。
わりとリアルに工程が、丁寧に優しく描写されています。

作ってる側からみても「あるある」と、「こうだったらいいな」がテンポよく描かれる優しい世界…
&制作工程を描きながら、クリエイターの個人的な思いを大事にしてくれる作品という様相。


©2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

「作るって楽しい」を味わいたい方、あるいは、思い出したい方!

綺麗な背景・丁寧な描写・センスのよい曲に乗せて、小気味よく楽しく見られるので、作る系統の仕事をする方の「テンション上げ」にもお薦めです。
※注意※ただし、あまりに近い現場の人にとっては逆にへこむこともあると思うので原作より注意が必要……かも?この辺りは下のネタバレに書きます

また珍しいところでは、監督はもちろん、「プロデューサーって何やってる人?」がちょっとだけ分かるところはポイントです。強ち嘘じゃないな…も。


©2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

それから編集の面白さと、業の深さと…「その画面このソフトだよな」とか、「あ、この試写室…。」
うん分かる気がするなというところは、実際の現場の人も楽しめるかもしれません。

またポスターやシーンに「あの映画かな?」の既視感があったり、ちょっとしたパロディ要素があるのも(大人の事情で)原作程はないのですが映画ファンにとってニヤリですね。


©2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

ヒヤヒヤ・ヒリヒリというより、ワクワク・ドキドキが強調されている流れではありますが、反面ポンポさんの鋭い指摘や、制作にかかわっているものとして、胸に刺さる言葉もいろいろ。

あまりにポンポさんが素敵で強いので、「結局何とかなりそう」という安心感が多少出てしまうのですが、「紆余曲折を経て、作品完成までのカタルシス」は感じられるかなと思います。

個人的に、映画の尺話!と、「世間受け狙うと八方美人のぼやけた映画になっちゃう」というところが、めっちゃ刺さりました。

また劇中劇のBGMがクラシックで他はわりとポップという音楽の使い方がよかったなぁとおもいました。

調べると音楽担当はまさかの、BiSHなどWACKグループのサウンドプロデュースも手掛ける<松隈ケンタ>さんなんですね。

挿入歌も花譜&EMA(from DUSTCELL)とボカロPカンザキイオリというタッグに、OPはまさかの新妻聖子が歌うという豪華かつ面白い組み合わせだなぁと思いました。

映画『映画大好きポンポさん』公式

 

以降ネタバレあり


 

【ネタバレ】

「自分のための作品にしていい」という声……制作してる人間には悲鳴のように聞こえてくる部分が結構ありました。
どんなにいい演技をしようが、思い入れがある人がいようが、切っていくカットを選ばなきゃならないことや、他はどうでもいいくらい、のめり込むところも…。

ただ反面、スイッチが入ると狂気じみてくる「ザ・クリエイター!シーン」はカラフルで楽しい映像なのですが、演出もっと派手にしてもよかったかなと思いました。
もっとイっちゃっててよかったかなと笑


©2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

展開で気になったのは、ラストの編集シーン。倒れてまで作業するシーンからの流れ。そこは監督だけでよかったと個人的には思います。

また追加撮影のくだりも、「あるある」ではあるのですが「ポンポさんだし、結果許してくれるよな」と、葛藤があまりなく進むので、良くも悪くも優しい世界。

この辺は安心して見られる方がいいという意見もあると思うのですが、「そんなに優しくないわ…」とすっと現実に戻される人も居そうなので突っ込んでおきます(笑)

もともと原作のポンポさんが持つ「パンチ」の利いた魅力に対して、映画はオリジナルの展開や背景の雰囲気もあいまって全体的にマイルド。

演出・色彩など絵の表現は素晴らしいのですが、シナリオは本編でも言われてた台詞を借りるなら、「世間受け狙うと八方美人のぼやけた映画になっちゃう」という部分も若干……。あくまで個人的な感想ですが。

 

しかしこれは、原作が今足掻いてるクリエイターをちょっと代弁してくれてるとするなら、映画版がテンポの良さ・完成度の高さで、「こうあってほしい」「作るのっていいよね」と理想の創作を疑似体験させてくれる色が濃い為なのかもしれません。

ちなみに、監督が編集やる現場もありますが、大きなバジェットの作品で「編集=監督一人」は最近聞きません。

「倒れるまで仕上げ作業を一人で!」は、全ての現場の「あるある」ではないゆえ、ご安心を!

これもまた映画。ファンタジー&リアルだからこその作品なのです。


©2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

 

 

<CAST>

ジーン/ジーン・フィニ:清水尋也

ポンポさん/ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネット:小原好美

ナタリー/ナタリー・ウッドワード:大谷凜香

ミスティア:加隈亜衣

マーティン/マーティン・ブラドック:大塚明夫

<STAFF>

原作:杉谷庄吾【人間プラモ】(プロダクション・グッドブック)

『映画大好きポンポさん』(MFC ジーンピクシブシリーズ/KADOKAWA刊)

監督・脚本:平尾隆之

キャラクターデザイン:足立慎吾 演出:居村健治監督 助手:三宅寛治

作画監督:加藤やすひさ 友岡新平 大杉尚広

美術監督:宮本実生 色彩設計:千葉絵美

撮影監督:星名工魚山真志 CG監督:髙橋将人 編集:今井剛 音楽:松隈ケンタ

制作プロデューサー:松尾亮一郎 制作:CLAP

配給:角川ANIMATION

映画大好きポンポさん製作委員会

公式HP:https://pompo-the-cinephile.com/ 

公式Twitter:@pomposan

 

 


6月4日(金) ロードショー


 

 

プロフィール
映像編集者
野辺五月
学生時代、研究の片手間、ひょんなことからシナリオライター(ゴースト)へ。 HP告知・雑誌掲載時の対応・外注管理などの制作進行?!も兼ね、ほそぼそと仕事をするうちに、潰れる現場。舞う仕事。消える責任者…… 諸々あって、気づけば、編プロ・広告会社・IT関連などを渡り歩くフリーランスと化す。 2015年結婚式場の仕事をきっかけに、映像畑へ。プレミア・AE使い。基本はいつでもシナリオ構成!のひと。趣味は飲み歩き。

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