映像2023.06.26

映画ソムリエ/東 紗友美の”もう試写った!” 第24回『交換ウソ日記』

Vol.24
映画ソムリエ
Sayumi Higashi
東 紗友美
拡大

拡大

拡大

拡大

拡大

拡大

拡大

拡大

拡大

拡大

『交換ウソ日記』

▶SNS全盛期にあえてのアナログなやりとりが沁みる度:100

大人もハマる青春恋愛映画!ときめきを欲している人にオススメ!

みなさん、交換日記の思い出はありますか?
懐かしい人も、書いたことがない人も、大人にこそ見てほしい『交換ウソ日記』を今日は紹介させてください。

2013年に携帯小説サイト「野いちご」で配信が始まり、2017年に文庫化、2020年にTikTokで話題になったことがきっかけで多数メディアで注目され、シリーズ累計60万部を突破した櫻いいよによる青春小説『交換ウソ日記』が原作です。若者の活字離れが進む中でのこの数字には驚きですよね…!ティーンから絶大な人気を誇る原作の実写映画化になります。

映画は、高校二年生の希美が移動教室の机の中に「好きだ。」と書かれた手紙を見つけるところからスタートします。
送り主は、学校イチのモテ男子・瀬戸山くんですが、それは希美の親友に宛てられた手紙でした。瀬戸山くんの勘違いから始まった交換日記でしたが、希美は本当のことを言い出せないまま、つい瀬戸山君の想い人のフリをして交換日記のやり取りを続けてしまうのですが…というお話です。

思ったことをはっきり口にする真っ直ぐな性格の瀬戸山潤を演じるのは、高橋文哉。
2019年に「仮面ライダーゼロワン」(EX)で主人公に抜擢されると、その後も様々なドラマに出演。2022年には日経トレンディが選ぶ「来年の顔」にも選出された大注目の若手俳優です。
そして、不器用なヒロイン黒田希美を演じるのは子役からキャリアを重ね、ドラマ「silent」(CX)など、話題作への出演が途切れない、注目の若手女優・桜田ひよりが演じます。

早速ですが感想はですね…いやぁ…まさかまさかでした。
37歳になった私がまさか、17歳の恋愛で胸が打たれまくるとは思いませんでした…!
とある調査によると高校生の98.9%がなんらかのSNSを利用していることがわかった現代ですが、この映画ではひたすら交換日記で心の距離を詰めていきます。SNSで簡単に連絡がとれるようになった今だからこそ響くものがあるんです。またこのような時代に、手書きの”交換日記”だけで恋愛も、そして主人公の成長までもきちんと成立させているのがお見事でした!

注目ポイントとしては、劇中に登場する“交換日記”。書いたのは、高橋さんと桜田さんご本人だそうで、2人は瀬戸山と希美の文字にそれぞれ特徴をつけてキャラクターを表現することにも挑戦したそう!男女のリアルな文字がスクリーンに浮かび上がる演出が度々登場して、甘酸っぱい気持ちを感じさせてくれます。また手間と時間のかかったやりとりを追体験できます。
昨今のSNSではスタンプで会話の意図を汲み取るシチュエーションも、もはや当たり前になってきましたし、削除ボタン一つで抱えていた感情がなかったことになってしまうこともあります。

もちろんその便利さに感謝していますが、こんな時代だからこそ感じられる待つ喜び、何を描こうか考えながらペンを取り選び取った言葉、アナログなやりとりが愛おしいんです!

そして、主人公の男女の性格が磁石のS極とN極のように真逆なのも効いています。
時間をかさねお互いを理解していこうとする関係性と、ゆっくりお互いに向き合うことができる交換日記というコンテンツの相性がよく、引き込まれました。
個人的には今回の希美というヒロイン像は高校生でありながらも活発すぎず元気すぎず、比較的落ち着いているのが大人でも見やすかったかなと思います。

この映画で映画初監督を務めたのは「中学聖日記」(18/TBS)、「アンナチュラル」(18/TBS)、「わたし、定時で帰ります」(19/TBS)、「婚姻届に判を捺しただけですが」(21/TBS)などの演出に参加し、2022年の「インビジブル」(TBS)ではチーフディレクターを務めた竹村謙太郎さん。
青春恋愛モノでありつつも、期待していた以上にドラマパートの芯が通っていて胸きゅんするだけじゃなく一人の人間が成長していく様をしっかり描いた、見応えある映画に仕上がっていましたよ。
キラキラな恋愛映画に対して苦手意識を持っている方もいるかもしれませんが、今回はそのフィルターを取っ払って、学生の皆さんはもちろんのこと、大人にも映画館で胸の高鳴りを味わってきてほしいです。

タイ映画『すれ違いのダイアリーズ』(2016)で、新米教師の青年が前任女性教師の日記を読んで、会ったこともない彼女の人柄に触れて恋をしましたし、昨年公開した邦画『恋は光』(2022)でも交換日記で“恋の定義”を語り合うことを通じて男女の物語が展開していく場面があり、自分の胸のうちをSNSではない手段で、恋を盛り上げていました。文字に触れることは真心に触れることなのかもしれませんね。

さて、親友のふりをして書きすすめた”ウソ”の交換日記の行く末はどうなるのでしょうか。
この映画のラストはきっとあなたをずっとずっと温めてくれるはず!

 

『交換ウソ日記』
7月7日(金)全国公開

 

■出演:高橋文哉 桜田ひより 茅島みずき 曽田陵介 齊藤なぎさ/板垣瑞生

■原作:櫻いいよ「交換ウソ日記」(スターツ出版文庫)             

■監督:竹村謙太郎  ■脚本:吉川菜美  ■音楽:遠藤浩二

■製作:「交換ウソ日記」製作委員会

■公式サイト: movies.shochiku.co.jp/koukan-usonikki/ 

■公式Twitter:@koukan_usonikki

■公式Instagram:@koukan_usonikki 

■公式TikTok:@koukan_usonikki

©2023「交換ウソ日記」製作委員会

プロフィール
映画ソムリエ
東 紗友美
映画ソムリエ。女性誌(『CLASSY.』、『sweet』、『旅色』他)他、連載多数。TV・ラジオ(文化放送)等での映画紹介や、不定期でTSUTAYAの棚展開も実施。 映画イベントに登壇する他、舞台挨拶のMCなどもつとめる。 映画ロケ地にまつわるトピックも得意分野で2021年GOTOトラベル主催の映画旅達人に選出される。 音声アプリVoicyで映画解説の配信中。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP