初監督映画『同窓会』 次の映画づくりの機会が すでに楽しみでなりません
- Vol.46
- 映画監督・俳優・脚本家 宅間孝行/サタケミキオ(Takayuki Takuma/Mikio Satake)氏
『同窓会』DVD――1月23日(金)リリース
まず、もっとも露出度が高いということで、「俳優/宅間孝行さんは」という主語で書きます。TBSラジオ『サタケミキオと宅間孝行』やフジテレビ『映画の達人~Filmania~』のMCが好評で、4月から始まるNHK朝の連続テレビ小説『つばさ』の出演も決まっています。でも、実は、コアなファンの多い、劇団『東京セレソンデラックス』の主宰者であり、脚本家であり、演出家でもある方です。そんな宅間さんが、2008年夏に公開した初監督映画が『同窓会』。 主人公の映画監督が、高校時代の恋を実らせたはずの結婚生活を捨てるところからドラマが始まるのですが、長崎を舞台にした青春ドタバタ劇あり、ミステリーチックな挿話と意外な結末ありの見事なウェルメイドムービーに仕上がっています。そんな『同窓会』のDVD発売を機に、宅間さんにお話をうかがってきました。
宅間孝行初監督映画『同窓会』、 いよいよDVDリリース!
『同窓会』は、長崎弁が、とてもよい感じで効いている作品ですね。
劇中の同窓会の舞台は東京になるだろうから、主人公たちの出身地は地方がいいと思った。僕自身は東京出身なのですが、劇団(『東京セレソンデラックス』)で長崎弁を使った経験がありました。リズムや法則などを会得している数少ない方言が長崎弁というのが、この作品に長崎弁を使った最大の理由です。ただ、構想として言えば、九州弁全般に漂う雰囲気が使えればなんとかなるなとも思っていた。たとえばフィルムコミッションの誘致が熊本の方が熱心だったりしたら、設定は熊本になっていたかもしれませんね(笑)。
登場人物の子供時代を演じる子役たちが、成人役の役者ととても雰囲気が似ていて、けっこう感動したんですが。
キャスティングに際して「似ているように」と意識はしましたが、絶賛されるほどとは思わないんですが(笑)。登場人物のキャラクターがそれぞれとてもはっきりしているので、子供時代と現代の統一はうまくとれたと思いますけどね。ルックスについては、中村獅童くんの役柄の子役が、抜群に似ているのでインパクトあったんじゃないですか。その印象が強いのかもしれませんね。
撮影期間は?
3週間です。
これ、3週間で全部撮り切った作品なんですか?ちょっと信じられない。ロケも豊富ですし。
追加の風景映像などを除けば、きっちり3週間で撮っていますよ。この撮影は、6月だったのにまったく雨に遭遇しなかったという幸運もあり、見事なくらいスケジュール通りに進行しました。振り返れば、ちょっと奇跡的とも思います。
編集は、きわめて手数が多いように感じました。とても丁寧だし。かなりの労力を注いだのでは?
そうですね、編集にはものすごく時間をかけました。初監督作品ということもあって、撮影に関してはやりたいことができなかったという思いがけっこう残りました。その分、思いの丈を編集にぶつけることになったのですが、スタッフの協力もあって思い通りにやらせてもらえ、ありがたかったです。
ミュージッククリップのような仕上がりのパートもありました。とても印象的でした。
ああ、主人公が帰省するところですね。ポンと「長崎の実家に行きました」ではつまらないし、かといって行程を追うだけでは説明的だし。絵的におもしろくならないかなと考えた末に、出てきたアイデアです。
プロの映画人たちは、 「なるほど」と僕を理解してくれるのも速かったです。
初監督を終えての、感想は?
総評としては、とにかく大変だった(笑)。作品を完成させてみてあらためて思うのは、振り返ると「ここは、もっと自分の思うように撮るべきだった」と「ここは、自分の思うように撮らずに、かえってよかった」が混在していることです。つまりは、とても勉強になった。それが感想ということになりますね。
初監督ということで、映像作品づくりへの準備などは?
しましたよ。「映画監督は、カット割りに責任を持つべきだろう」「そこが芝居とは違うところ」と考え、いろんな作品を、もうストーリーそっちのけで(笑)、絵づくりの部分だけに神経を集中させて何本も観ました。
舞台やテレビドラマから映画監督に進出した方は、おしなべて初監督時に苦労があるようですが。
ありましたね。撮影初日には、明らかに「アウェーだ」と思ったほどです(笑)。
いわゆる、「プロの映画屋たち」の厳しい視線ですね(笑)。
「監督はまず演出に注力してください。カット割は、撮影監督と一緒に考えましょう」と言われて、ええそうなの!?とか(笑)。映画を勉強させてもらい、僕から歩み寄った部分もありますが、プロの映画人たちは演出手法を何度か観察して、「なるほど」と僕を理解してくれるのも速かったです。
監督としてそんな苦労をしながら、主演もしているわけですから。大変ですね。
それはもう、そこが一番きつかったかもしれない(笑)。
でも、それを乗り越えたのだから、得たものも多いのでは?
そう思います。だから今は、次の映画づくりの機会が楽しみでなりません。次は、現場への身の置き方から違うと自信を持って言える。
「最高傑作は、次回作だ」 ――それが僕の感想であり、意気込みです。
ここまでは、監督兼主演の宅間孝行さんにうかがいました。ここからは、脚本家/サタケミキオさんへのインタビューです。脚本『同窓会』は、うまく映画になったと感じますか。
これは映画ですから、脚本で完成ではないという覚悟はちゃんと持っていました。そういう意味では、まったく不満のない作品になったと思っています。
あっと驚かされることが多い、かなり手の込んだストーリーをつくられましたね。
そう言っていただければ、嬉しいです。もちろん「驚かせてやろう」と目論んで立てたプロットがいくつもありますが、公開してみるとこちらの想像を超えた反応が観客から寄せられたりしたのも意外で、おもしろかったですね。
なるほど。ネタバレがあるので、あまり詳しくは触れられませんが、意外な部分にも反応があったりしたわけですね。
ここはなんとなく察することができるはず、ここは絶対に最後までわからないはずという思いで仕掛けをし分けたのですが、前者にも「まったく気づかず、びっくりした」という感想があったんです。
ギャグも豊富で、レストランのエピソードなんか、「ベタだなあ」と思いながらもひっくり返って笑っちゃいました。
ああ、あれは友人から仕入れたネタです。どうやら、実話らしいんですが(笑)。
では最後に、宅間孝行さん、サタケミキオさん双方に質問です。できあがった作品への満足度は、どれくらい?
それには、かの巨匠、黒澤明監督の名言を引用させていただきます。「最高傑作は、次回作だ」――それが僕の感想であり、意気込みです。
取材日:2008年12月8日
Profile of 宅間孝行(サタケミキオ)
1970年生まれ。東京都出身。1997年、劇団『東京セレソンデラックス』を旗揚げ。 【作品】 2005年 『ドッグファイター』(出演) 2005年 『バッシュメント』(出演) 2008年 『同窓会』(監督・脚本・主演) 【脚本作品】(サタケミキオ) 2005年 『アタックNo.1 』 2005年 『花より男子』 2005年 『ワースト☆コンタクト』 2007年 『花より男子2(リターンズ)』 2005年 『歌姫』第二回ギャラクシー マイベストTV賞グランプリ受賞作品 2005年 『ヒートアイランド』 2008年 『花より男子F』 【出演情報】 TBSラジオ 「サタケミキオと宅間孝行」 フジテレビ 「映画の達人~Filmania~」 MC NHK 2009.04~ 朝の連続テレビ小説「つばさ」に出演決定
『東京セレソンデラックス』オフィシャルサイト http://www.ts-dx.com/
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