情熱を支えに女性を輝かせる事業を提案し続けたい

仙台
株式会社ラウンジ・デコ 代表取締役 及川茂吉 氏
ラウンジ・デコのオフィスにお邪魔すると、一番に目を奪われるのは、宝石のように輝く石鹸 Savons Gemme(サボンジェム)です。南フランスのグラースで生まれたこの石鹸の日本総代理店であるラウンジ・デコの及川氏は、美容師・メイクアップアーティストからキャリアをスタートし、現在は2つの会社の代表取締役を務められる実業家です。女性を対象とした各種事業を展開し、新しい価値観・商品を提案するうえで、今後さらなる成長のためには、eコマースへの注力と専門家であるクリエイターの力、そして何事も実現させたいという情熱が必要と語ってくださいました。

おのずから道は美容へと開かれる環境に生まれて

ラウンジ・デコ社の創立までの歩みはどのようなものだったのでしょうか

3人兄弟の真ん中が私ですが、母が気仙沼で美容室を経営しており、姉も美容師、弟も美容学校を卒業という美容一家で生まれ育ちました。もともとファッションに興味があったこと、私は長男で自分が店を継ぐべきなんだろうと思っていたことから、東京の美容学校を卒業し、そのまま東京で美容師として就職しました。就職先で、ヘアだけではなくメイクアップも学び、見習いからスタートしてTV局やさまざまな撮影現場も経験しました。しばらくして26歳のころ、当時最先端だったロンドンのヴィタルサスーンへ留学することを決めて日本を後にしました。

留学はキャリアに対してどのような変化をもたらしたのでしょうか

当時、ロンドンで最新の技術や感性に触れられたことは私にとって大きかったです。学校へ通いながら、パリコレに携わるカメラマンやスタイリスト、モデルエージェンシーとコラボレーションしてフォトセッションを行ったり、ヘアメイクの自由な表現や、一流の仲間との交流など、刺激に満ちた約1年を送りました。そのままイギリスでパリやミラノのコレクションを目指すか、帰国するか、言い換えれば「アート or 実業のいずれを選択するのか?」の狭間でずいぶん悩み、家族の事情なども考えて、戻るなら早い方がいいと地元の気仙沼へ戻る決心をしましたが、また世界のステージに立ちたいという思いを抱きながらの帰国でした。

ピンチはチャンスと捉え、ゼロからイチを作るのが自分の仕事です

帰国後の活動はどのようなものだったのですか

最初の自分の店舗となる「FACE美容室」を地元、気仙沼で開店し、次に婚礼衣装とヘアメイクに特化した「コスチュームRUN」、続いて「FACE仙台店」を出店しました。私自身は気仙沼と仙台を行き来しながら、ブライダルファッションショーを主催するなど、とても目まぐるしく多忙な時期を過ごしました。その後、これらの店舗を束ね株式会社 蘭として法人化しました。

事業家として活動の幅を広げられたきっかけについてお聞かせください。

美容室のスタッフが成長すると次々に独立していき、喜ばしい反面、弊社にとっては戦力ダウンで売上が縮小しました。そこで、店舗に人ありきの業態を超えた実業を目指し、結婚式場のブライダルヘアメイク専門業者への道を模索しました。もっと個性が広がる新しいブライダルスタイルの提案を武器に、ファッション誌のようなBook(資料)を営業ツールとして制作し、県内すべての式場に持参して営業しました。今考えると情熱で押し切った感がありますが、おかげさまで、現在、受注が年間1000件を超える事業に成長しました。

及川さんのお仕事に対する考え方について伺えますか?

新事業に踏み出した時は「このままでは成長限界を迎え、現状維持が精一杯」というマイナスからの発想で、これを覆す、変えるためにはどうする?と問いかけることが新しいことを考え出すスタートでした。まさに「ピンチはチャンス」です。自分の仕事は、持てる技術・資源の提供先をどのように増やすか、ゼロから何をイチにするのかという思考をすることで一番パワーと情熱が必要ですが、これは経営者の仕事、自分にしかできない部分だと思っています。

さらなる飛躍を目指して新規事業ラウンジ・デコで世界を目指す

美容からブライダルに続く新たな可能性にチャレンジされたのが、サボンジェムとの出会いと伺いましたが、そのきっかけは?

美容技術に関わるのは株式会社 蘭、商品を扱う会社は株式会社ラウンジ・デコと切り分けることに決めたのですが、さてこれから何を扱おうかと考えていたときに香港の美容見本市会場でサボンジェムと出会いました。これは美容家ドミニク・ノヴァク氏により開発された石鹸で、高品質な天然由来の原料のみを使用し、宝石の原石と見紛うビジュアルと、安全かつお肌に優しい使い心地を実現しています。「宝石?石鹸?」という驚きと美しさ、品質・安全性の高さに魅せられ、「この感動を多くの人に伝えたい」という思いからアプローチしました。

そこからどのようにアプローチして、販売権を獲得されたのですか

ラウンジ・デコは立ち上げたばかりで、資本力・販路も整っていない状況でしたが、自社の力不足を隠すことなく、まずはパートナーを探し商品のブランディングから始め、次に販売を開始してどのように推進していくのかという5カ年計画を策定し、開発者であるドミニク氏へ販売計画書を送り続けました 。「絶対に売ってやる!」という情熱のこもったメッセージだったと思います。先方は「あなたがこの商品を愛してくれているのは伝わったけど、ビジネスパートナーとしてまだまだ力不足」とそのときはお断りされました。その1年後に東京開催の美容見本市へサボンジェムが出展した際、大手20社が手を挙げました。私のアドバンテージといえば「この感動を伝えたい!」という情熱を1年間コンタクトし続けたことだけでした。だから、この時も他社に決定したのですが、それでも私は諦められませんでした。

最終的に契約を獲得できた理由についてお聞かせください

転機は東日本大震災の後「オイカワ、ダイジョウブ?」というフランスからドミニク氏のメッセージが届いたことでした。「もし及川に今もあの時の情熱がまだあるならやってみないか?」というオファーでした。最初に契約した企業で成績が上がっていないという実情もあったと思いますが、コンタクトし続けた情熱が伝わって、相手を動かすことができたのではないかと思います。震災後の支援という意味合いもあったのかもしれませんが、企業の規模で取引を行うのではなく、人と人で仕事をするという欧米人らしい決断から徐々に発展して、その後、台湾・中国での販売権も弊社が契約することとなりました。

eコマースはビジネスの根幹として不可欠。もっとより良いものへ発展させたい

eコマースによるメリットは?

サボンジェムをお買い上げくださるお客さまは、少し変わったギフトを探されている方が多く、インターネット検索で見つけてご購入いただくケースが多いです。店舗販売のように場所や時間に縛られることなく購入していただけるのは大きなメリットです。またサボンジェムのディテールや品質の高さといった商品情報を正確に均一に伝えられることもWebならではだと思います。台湾・中国でのサボンジェム展開も、国境を超えたビジネスの成立はインターネットがあるから可能なのです。 一方で、リアル店舗の良さは、手に取って実際に商品を吟味できる、接客によってラウンジ・デコそのものを伝えられるということで、ここも欠くことができない大切な部分だと思っています。

Web制作を社内で行うことにされた理由は?

現在のホームぺージやeコマースサイトは、外注して制作した後、とにかく必要な情報を入れ込んだ状態で、これから整備をしていく必要があります。これまで東京のデザイン会社へ外注していたのですが距離があったこともあり、変更や追加の際、私たちには細やかなニュアンスまで伝えることが難しかったのは事実です。今回初めて社内にWebデザイナーを迎えるのですが、仲間として事業に携わることで社内の状況や情報、ラウンジ・デコの世界観をリアルタイムに共有して、SEO対策も含め時代のスピードに乗った随時更新、あるいは刷新といったサイト制作を一緒に進めてもらいたいと考えています。また、外注であればこちらからの依頼に従って制作するので、そこが終着点となりますが、「もっとこういうものにしたら良いのでは?」というような提案や、それに対する意見交換を通して予想を超える良いものを創造できることは、社内制作ならではのメリットと思っています。

社内クリエイターに一番期待されることは?

社外で作っていたこれまでの自社サイトには満足できずにいました。作りたいイメージなどは多数あるのですが、今まで私の頭の中のイメージを外に出して相談できる相手がいなかったので、それに関してキャッチボールできる、相談できる存在であってほしいと思います。私はデザインの管理も行わなくてはならない立場ではありますが、そこだけに注力してはいられないこともあり、気づかないことが多いと思いますので、違う視点で細やかに見てほしいです。たとえば、私は経営者として売る側の視点でWebサイトを見がちなので、社内クリエイターには消費者の目線でも捉えてほしいということです。 新規事業についてもすでにイメージがあり、インターネットは不可欠です。ますます社内クリエイターの力に頼るところが大きくなるということですから、大いに期待しております。

地域貢献――東北の価値をもっと世に打ち出したいという思いが芽生えて

及川さんの今後の展望についてお聞かせください

ロンドンから帰国するときに抱いた「いつかは世界へ」という思いを実現する時期が来たと感じています。先日ブライダルの海外見本市で、台湾や香港の方の新婚旅行先として、日本よりも韓国が選ばれているという実情を知りました。その理由は韓国の営業力が強く、日本からのアプローチが少ないからです。 ならば、ブライダルをフックに台湾から仙台への誘致を試みようと準備を始めました。仙台・台湾直行便が毎日3本就航しているのも大きな理由ですが、京都や東京が観光飽和と言われるなか、仙台や東北は観光商材になる原石がたくさん眠っている地域として、伸びしろが十分にあると思ったんです。

さらにeコマース力は発揮されそうですね

昔は雑誌などでNY発、パリ発、東京発という情報に付加価値を与えるようなエッセンスが必要だったと思います。でもいまは、コンテンツさえあれば、現地発でブランディングが可能な時代です。たとえば台湾からSNS発信で仙台をフューチャーするなど、伝統と歴史と文化がある場所は物語を作ることができ、発信する情熱があればインバウンドを狙えるはずです。最近は「美」という軸に加えて、地元に貢献したいという思いも強くなってきているので、今後は自分の持てる資源を活用して、地元である東北が潤い、喜んでもらえるような何かをもっと形にしていきたいと思っています。

ともに働く人に求めるのは「追い求める」姿勢

一緒に働くスタッフに対してどのようなことを求められますか?

現在のサロンド・デコは変化する過程にあって安定していません。「いまこのスキルがある」というだけでは、2、3年後は勝負できないかもしれません。現在何ができるというよりも、まず探求心があること、一度は人生でガツガツ・がむしゃらになった経験があるかどうか。これがあれば未経験の仕事でも向かっていけると思うからです。会社の向かう可能性を一緒に追い求める人であってほしいと思います。

貴社のビジョンに対しての思いは?

母、姉が働く姿を見て育ったことや、業界自体女性が多い、お客さまも多くは女性が対象ということもあって、女性に支えられていると思っています。弊社では福利厚生として保育費の半額を会社で負担するなど、女性が働きやすい環境を整えるのは当たり前のことだと考えています。女性が凛として仕事をテキパキこなして素敵だと、男性も頑張る気になるんじゃないか? 経済的な相乗効果も生まれるんじゃないか?と思うんですね。 ビジョンを追い求めて、女性を輝かせる、男性も生き生きする、地域も元気になる、そしてみんなが豊かになっていく……。そんな状況を創る一翼を担えればと願っています。

取材日:2018年4月18日 ライター:桐生由規

株式会社ラウンジ・デコ

  • 代表者名:代表取締役 及川茂吉
  • 設立年月:2007年5月
  • 資本金:10,000千円
  • 事業内容:美容・化粧品の販売/サボンジェム事業部/ブライダルケアサロンの運営/他・美容関連企業・ブライダル関連企業
  • 所在地:本社)仙台市青葉区本町2丁目1-8 第一広瀬ビル3F
        TEL:022-398-5658 FAX:022-398-5691
        東京オフィス)東京都港区北青山3丁目6-7 パラシオタワー11F
        FAX:03-5778-5179
  • URL:http://www.lounge-deco.jp/index.html
  • お問い合わせ先:TEL)076-255-6124

サボンジェム:http://www.jewelsoap.jp/
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