VRで食べていく! 本気のクリエイターを育成する「学び、作り、つながる」場作り

動画コンテンツやゲームなどに続々と取り入れられ、一大ムーブメントとなりつつあるVR(バーチャル・リアリティ)。しかし、その技術を体系的に学び、仕事に生かせる場はまだまだ少ないのが実情です。ストリートビューの提案を行うGoogle認定代理店として創業したLIFE STYLE株式会社は、その市場へ果敢に切り込み、実写VRコンテンツの専門的な撮影・制作技術を習得できる「VRクリエイターアカデミー」を展開。「自分たちはVR市場の優秀な営業マン」と語る取締役・冨山亮太さんに、現在の取り組みや展望を伺いました。

「大手企業のイチ事業部には負けていられない」というベンチャーの本気度

冨山さんがLIFE STYLEの創業に参画することになった経緯を教えてください。

当社代表の永田(代表取締役:永田雅裕さん)と私は、会社設立前から個人事業主として一緒に働いていたんです。ともに営業畑の出身で、「この営業力を生かしてビジネスを展開できないだろうか」と考えていました。ビジネスは「作る人」と「提供する人」で成り立ちます。どんなにおいしい料理を作るレストランでも、サービスがダメでは評価されませんよね?自分たちは優秀なウエイターのように「提供するプロ」でありたい。そう考え、商材を探していく中で、Googleのストリートビューに出会いました。

世界に通用するサービスで、認知度があり、競合他社が少なく、時期的にもアーリーアダブターとして参入できる。その4つが決め手となり、ストリートビューの販売を行うGoogle認定代理店として創業することにしたんです。

創業間もない段階から大手企業と競い合っていたのですか?

そうですね。ストリートビューが入ってきた当初は、大量の顧客情報を持つフランチャイズチェーンや通信会社など、大手企業ばかりが参入していました。しかし、「大手企業のイチ事業部」には、本気度で負けてはいけないと思っていました。LIFE STYLEはベンチャーなので、食べていくために本気でやらなければいけない。そうして成果を出し続けていった結果、Googleから優秀代理店として表彰され、代表の永田がさまざまな場所で講演したり、オランダで開かれるストリートビューの世界的な会議に参加したりと機会が広がっていきました。

ビジネスとして営業を続けていった結果、VRの市場が見えてきた

現在は「VRクリエイターアカデミー」をはじめ、VRに関わる人の育成に力を入れていますね。どのようにしてこの分野に進出したのでしょうか?

LIFE STYLEは「世界一の人財企画チーム」というビジョンと、「感動を起こす〜人々の体験の幅を広げる〜」というミッションを掲げています。人を何よりも大切にする組織として、時代が変わり、市場が変わってもニーズをいち早く察知してビジネスにしていく。そんな考えに基いてVRに注目しました。
拡大の最中にあるVR市場は、技術の急速な進化とは裏腹に、普及状況は追いついていない現状を抱えています。その問題を構成する一つの課題として、市場に出回っているコンテンツの質・数が共に不十分であることが挙げられますが、それは深刻なクリエイター不足と同義だと捉えています。それ故に私たちは、事業の第一フェーズとしてVRクリエイターの支援として、「VRクリエイターアカデミー」を立ち上げました。学びの場・制作ツール・ビジネスマッチングの機会を提供し、エコシステムを形成することによって、VRという感動をより多くの顧客に届けます。

「ビジネスとしてのVR」に可能性を感じたということですか?

はい。アカデミックの領域から、あるいはクリエイティブの分野からVRについて語ることはとても大切だと思っています。一方で私たちは、ビジネスとしてコツコツとストリートビューの営業を続けてきた結果として、VRという市場が見えるようになりました。

3年間やってきて、ストリートビューの導入実績が最も多いのは学校なんです。学校関連施設だけで400件以上の実績がある。次いで多いのが医療関連施設です。彼らはお客さま、つまり入学希望者や患者の来訪動機を強めるためにVRを活用しています。とある大学のオープンキャンパスでは360度のコンテンツを使い、来場者が前年比で10パーセントアップしたという事例もあります。こうした成功体験を、外部にもどんどん共有していきたいと思っています。

LIFE STYLEのノウハウによって新たなパートナーを作っていく。

そうです。現状ではVR単体でビジネスを展開している企業はほとんどないので、大きな差別化要素となります。また、起業したいと考えている人にも「VRで創業する」という新たな提案ができます。

もともとのきっかけは、ストリートビューを販売した企業から「自社でも同じような事業がしたい」と言われたことでした。そこで、LIFE STYLEでやってきたことが事業パッケージになるんじゃないか、と気づいたんです。創業1年目で直販事業を拡大し、2年目以降はそのノウハウをパッケージ化して、フランチャイズ展開できるモデルを作りました。これまでに600人以上のフォトグラファーと200社以上のパートナー企業を育成しています。

業界の第一人者からマンツーマンでVR技術を学ぶ

先ほどは「世界一の企画人財チーム」というお話がありましたが、VRクリエイターアカデミーではどのように人材育成を行っているのでしょうか?

私たちの事業はとにかく「人」が第一なので、人材育成は最重要分野です。ストリートビューにおいては、630名のフォトグラファーを育成しながらVRで収益を得るビジネスを作り上げてきましたが、彼らの中にはその後のコミュニケーションがほとんど取れていない人もいて、当初は稼働率が低いという課題にもぶつかりました。「教えて終わりではダメだ」と学んだんです。

実際の仕事に結びついていかない、ということですね。

はい。そんな経験から、現在アカデミーで大切にしているのは「継続性」です。ここで学んだVRの技術によって、私たちのクライアントへつないでいくことができる。技術やスキルが仕事になり、収入になるということを体感してもらえる。そうやって一人ひとりとコミュニケーションを重ね、コミュニティーを形成して行くことで、稼働率の向上へも繋げていきたいと考えています。

VRに限らず、クリエイティブ分野の講座に参加する人の多くは「学んだことがどこまで生きるのか」を気にしていると思います。VRクリエイターアカデミーが実践的な学びを提供できる理由は何でしょうか?

世界トップシェアを持つKolor Gopro社の認定を取得できる講座があるということです。Kolor Gopro社の公式認定トレーナーは世界で14人、日本人では3人(2017年4月現在)しかいないのですが、業界の第一人者である彼らが講師を務め、360度VR制作に必要な基礎知識から実際の制作スキルまでを教えています。また、技術のある人、アカデミック領域でも先進的な見解を持つ人を集め、今後も学べる知識の幅を増やしていく予定です。

実際のカリキュラムの特徴についても教えてください。

マンツーマンで、フェイスtoフェイスで教えています。生徒2人につき1人の講師がいて、目の前で編集作業を教わることができます。Kolor Gopro社の認定資格を取るために学びながら実践的なスキルを得られるので、卒業後に仕事を取る上での自信につながっていきます。

「仕事につなげるための工夫」はあるのでしょうか?

ただ学び、スキルを身につけてもらうのではなく、「ビジネスとして成果を出す」ことがアカデミーの目的です。そのため私たちは学ぶ場の提供にとどまらず、制作ツールの開発やビジネスマッチングのためのプラットフォームも展開しています。「学び、作り、つながる」というエコシステムを広げていくことで、VR市場をどんどん活性化させていきたいと思っています。

よくイベントなどで「VR市場を活性化させるために必要なことは何でしょうか?」と聞かれるんですが、私は「優秀な営業マンが必要」と答えるんですね。VRはとても面白い技術で、夢があるけど、それがどう社会や人、ビジネスに役立つのかを伝えられる人が少ない。単なる夢物語で終わっているケースが多いんです。私たちは「VRビジネスが形になり、盛り上がっている」という状態を1日も早く実現したいと考えているので、優秀な営業マンとしてできることがあれば何でもやります。

世界を驚かせるようなVRコンテンツを、ここから

VRクリエイターアカデミーには、どんな人に集まってほしいと考えていますか?

現在は動画制作の経験者に絞って募集しています。Adobeの「After Effects」か「Premiere」を使ったことがあったりするというのが一つのスキル面での基準で、すでに360度動画制作に携わったことがあると好ましいです。

その上で、「広感度」と「好感度」を持つ人に集まってほしいと思っています。「広感度」とは常にアンテナを広げて情報を得ていること。「好感度」は面と向かって話したときに人として好きになれるような魅力を持っていること。そんな人たちとムーブメントを広げていきたいです。

改めて伺いたいのですが、なぜそこまで「人財育成」にこだわるのでしょう?

以前にkolor Goproの開発拠点を訪問した際、先方の担当者から「日本から高いレベルのコンテンツが発信されているのを見たことがない」と言われたんです。それがもう、悔しくて(笑)。日本やアジア諸国がVR市場で遅れを取っていることは事実です。日本からあっと驚くようなクオリティのコンテンツを生み出し、アジアへ、世界へと広げていきたい。そんな野望を持っているので、本気で技術力を高めたいと考えている人に来てほしいです。私たちも全力でぶつかります。

最後に、会社としての今後の展望についても教えてください。

まずはVR市場を広げていくためのプラットフォームを活性化させること。その上で、できるだけ多くの人にビジネスの機会を提供していきたいと思います。自ら市場を拡大し、そこで活躍する人を増やしていくことがLIFE STYLEの事業の本質だと考えています。

取材日: 2017年5月9日 ライター: 多田慎介

LIFE STYLE株式会社

  • 代表者名(ふりがな):代表取締役 永田雅裕(ながた まさひろ)
  • 設立年月:2014年3月
  • 事業内容:VRクリエイターアカデミーの運営、VRクリエイターマッチングプラットフォーム
         「Flic360」の提供、VRクリエイターツール 「Flic360Make」の提供
  • 所 在 地:東京都港区南青山6-7-14 チガー南青山3F
  • U R L:http://l-s.co.jp/
  • お問い合わせ先:上記コーポレートサイト内「CONTACT」から

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