スペース2025.12.10

職人技×デジタルで“ほかではできない”を実現する。オーダー家具の価値をより多くの人へ

金沢
株式会社ニード 代表取締役
Tokushi Nakano
中野 得史

オーダー家具や店舗什器の製作を通じて、空間に寄り添うものづくりを展開する石川県金沢市の株式会社ニード。高い設計力と職人技が支える“ワンストップ体制”で、世界のトップブランドを始めとする多くのクライアントから支持されています。代表取締役の中野 得史(なかの とくし)さんに、社名に込めた思いや難易度の高い要望も実現できる理由、今後の展望についても伺いました。

「必要とされる会社へ」。飛び込み営業から始まった挑戦

株式会社ニードの社長就任までの経緯を教えてください。

現在11期目を迎える当社は、2014年の法人化を機に私が代表取締役に就任しました。もともとは父が長年にわたり建具職人として家業を続けていましたが、職人気質で営業にはあまり積極的ではありませんでしたので、12年頃から営業面で父を支えるようになりました。
当時は仕事がほとんどなく、非常に厳しい状況でしたが、地道な飛び込み営業を重ねることで少しずつ案件を獲得し、事業も徐々に拡大。売上も伸び始め、その流れの中で法人化へと踏み切ったという経緯です。

いずれ父の仕事を継ぎたいという思いはお持ちでしたか?

法人化した当時は、私と父、そして社員がもう1人の計3人という小規模な会社でした。だからこそ「会社が未来に続くよう、自分がやるしかない」と腹をくくったのを覚えています。この業界は今もなお下請け中心で、仕事が来るのを待つスタイルの企業も少なくありません。しかし、営業にしっかり力を注げば、仕事は自ら切り拓いていけると考えました。専門性の高いこの業界には魅力があり、なくてはならない仕事だと感じたからこそ、続けていきたいという思いが強まりました。

社名の由来を教えてください。

まさにその通りの意味ではありますが、私たちが日々の活動に込めているのは「必要とされたい」という強い願いです。お客さまや社会にとって、なくてはならない存在であり続けることを目指して名付けました。

分離発注に頼らない“ワンストップ”のものづくり体制

現在の事業内容を教えてください。

主力事業は店舗什器の製作です。そのほかにも、オーダー家具や越中金物、木製建具の製作、リフォーム工事まで幅広く手がけています。お客さまの欲しいもの、求められる声に応えていくうちに事業分野が拡大していきました。
地元のハウスメーカーや工務店の取引先を開拓することでまず最初の伸びがあり、さらに繁忙期や閑散期をなくすために営業活動を続けた結果、東京方面での仕事が増えていきました。全体の売上で見れば、半分以上が県外で関東が中心です。現在は世界を代表するトップブランドの店舗の什器なども数多く手がけています。

御社の1番の強みはどのようなところでしょうか?

一言で言えば「ワンストップ」。すべて一括してお任せいただける体制が当社の大きな強みです。家具や店舗什器を作るためには、複雑な作りのものも多くあり、金物やガラス、アクリルなどさまざまな素材が必要になります。通常は分離発注、家具は家具屋、ガラスはガラス屋、金物は金物屋にというのがセオリーなのですが、当社は全部やります。だから、面倒な打ち合わせも不要ですし余計なコストもかかりません。
間違いのないものを製作できる「設計力」もそれを支えています。求められる高品質のものを実現できる、決まった納期できちんと納める、当たり前のことができる点が評価され、継続的な指名につながっています。さまざまな要素がからむので、一見簡単なように見えても実際難しいことなんです。

“ほかではできない”を形にする。ニードが届ける感動

さまざまなプロジェクトを進める中で、意識していることを教えてください。

お客さまのニーズをしっかりヒアリングすること。そして図面の理解度と念入りな確認です。今はわかりやすさが求められる時代。当社は3D図面にも力を入れ、事前にしっかり納得していただいてから制作に移っていけるよう心がけています。
それに加えて、スピード。設備投資を繰り返してきて高度な加工も機械化で実現できていますので、一定ラインまでは平準化かつ省力化し、手作業でクオリティーを求められるところは職人がきっちり仕上げる。この体制で短期間でもハイクオリティーのものを作ることができています。リピートしてくださるお客さまも多く、ほかではできないから当社に頼むというケースも多くなってきました。

特に印象に残っている事例をお聞かせください。

金沢市竪町にあるスケートボード施設併設のセレクトショップ「APPLICATION(アプリケーション)」の店舗内装を手がけましたが、これはまさに当社だからこそ実現できた案件だと自負しています。通常、スケートパークはコンクリートで施工されることが多いのですが、今回はすべて木工で仕上げました。
特にベニヤ板を三次元で曲線加工する技術は非常に高度で、曲がった状態で設計したものを平面に展開し、パーツごとに製作・組み立てるという複雑な工程を要しました。完成後のお披露目では「うわーすごい!」と驚きの声が上がり、「お願いしてよかった」と言っていただけたことが何よりの励みとなりました。こうした感動の瞬間に立ち会えることが、ものづくりのやりがいだと改めて感じています。

家具から空間をデザインする、新しい暮らしの作り方

今後新たに挑戦したいことはありますか?

近々の目標は、質のいいオーダー家具を自社ブランドとして伸ばしていくことです。個人のお客さまも増えていますので、今後はもう一つの柱として重きを置いていきたい。金沢でもハイクオリティーな家具のニーズがあるので、そうしたお客さまが満足するような家具づくりができればと思います。すでに立ち上げ段階ですが今後軌道にのせて、北陸三県に広く認知させていきたいですね。

オーダー家具の魅力とは、具体的にどのような点にあるのでしょうか

多くの方が家を建てた後に家具を選びますが、本来はその逆。まず家具を選び、それに合わせて空間を設計するのが理想です。箱を先に作ってから合う家具を探すのは、意外と難しいものです。オーダー家具は価格こそ高めですが、家事のしやすさや生活のストレス軽減など、日々の快適さに直結します。
例えばオーディオ機器にこだわる方なら、機器を美しく収納し空間に馴染むテレビ台をオーダーすることで、暮らしそのものが楽しくなります。その価値を考えれば高いものではない、ということをもっと知ってほしいですね。
これらの提案をお客さまと直接行い、職人に喜びの声を届けることで、やりがいにつなげたい思いもあります。将来的にはショールームの開設も視野に入れ、個人のお客さまが実際に触れて、体験しながら選べる場を作っていきたいと考えています。

この先の会社の展望についてお聞かせください。

会社は人間のようなものだと思っています。社員それぞれがマイスターとして誇りを持ち、ハイクオリティーなものづくりを行うのは当然で、それを喜ばれる商品として世に送り出す。そんな技術者集団としての気概が当社の核です。その上で「造作家具と言えばニード」と言われるような、信頼されるブランドポジションを築いていきたいと考えています。

好きであること、そして本物に触れること

一緒に働くスタッフに対して、会社としてどのようなことを求めますか?

「好きこそ物の上手なれ」と言いますが、やはりそれが一番だと思います。家具が好き、ものづくりが好き。ほかには特に求める条件はないですね。当社は平均年齢30代と若く、20代の社員も多く在籍しています。皆、家具づくりへの強い情熱を持って入社してきたメンバーばかりです。

最後に、クリエイターへのメッセージやアドバイスをお願いします。

とにかく「いいものを見る」ことが大切です。業界の本当に優れたものに触れないと、良さはわからないし、自分の中にも蓄積されません。家具も、動き・機能・ディテールにいたるまで、良いものは違います。そうした体験を積極的に学びに変えていくことで、提案力も磨かれ、将来の力になります。多少無理してでも、そうした機会を逃さない姿勢が大切だと思います。

取材日:2025年9月9日 ライター:酒井 恭子

株式会社ニード

  • 代表者名:中野 得史
  • 設立年月:2014年5月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:オーダー家具、別注金物、木製建具、店舗什器、建築金物、リフォーム工事
  • 所在地:〒920-8221 石川県金沢市御供田町ハ37番地
  • URL:https://need-co.com/
  • お問い合わせ先:076-239-1256 または HPのお問い合わせページより

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