WEB・モバイル2022.11.02

未経験者をプロのSEに育てる教育力と環境を提供。自立したIT人材として地域の力に

仙台
SES(エス・イー・エス)株式会社 代表取締役社長
Kiyotaka Kakinuma
柿沼 清孝

「成長し続けるIT業界の縁の下の力持ちを目指したい」と語るのは、宮城県仙台市でシステムエンジニアリングサービスを主体に事業を展開する、SES(エス・イー・エス)株式会社の代表取締役、柿沼清孝さん。2015年にコミィ株式会社の代表としてお話を伺って(https://www.creators-station.jp/interview/legends/26508)以来、風雲会社伝は2回目の登場です。お一人からスタートしたSES(エス・イー・エス)株式会社は6年目を迎え、スタッフ30人近くとともに、株式上場を目指す企業に成長しました。数十年先を見据え、さらなる高みへ歩み続ける柿沼さんにお話を伺いました。

ますます需要が高まるIT業界において人材の輩出がカギになる

コミィ株式会社(以下、『コミィ』)の代表でもある柿沼さんがSES(エス・イー・エス)株式会社(以下、『エス・イー・エス』)を設立した経緯を教えていただけますか?

2010年に設立した『コミィ』は東京のお客さまをメインに請負開発を行っていたため、仙台のお客さまはほとんどいませんでした。そこで仙台で積極的に営業展開しようと考えたのですが、仙台のIT業界はSES(システムエンジニアサービス)のビジネスが非常に多く、『コミィ』ではお客さまを広げるのが難しかったんです。ただ、ITが今後ますます発展して需要が高まると信じていたので、それならITの人材を輩出するのが根本ではないかという思いもありました。
そこでSESを広げていこうと、2017年に『コミィ』の子会社として『SES株式会社』を立ち上げました。何をやっているかすぐにわかるように、社名は業態をそのまま活用して『エス・イー・エス』と名づけました。
『コミィ』時代、最初は自宅、次に4畳くらいのレンタルオフィスで仕事をしていましたが、2022年中にはスタッフが30名程度となるまで成長しました。2つの会社を並行して経営していますが、現在は『エス・イー・エス』にリソースを集約させて業務を行っています。

『コミィ』そして『エス・イー・エス』とITベンチャー企業を2社立ち上げていらっしゃいますが、IT系で起業する面白さや利点とは何でしょうか?

一番は新しいものが生まれやすいことです。また起業するにあたり、パソコンひとつ、身ひとつで仕事が始められる、初期コストが安いことが非常に魅力的だと感じましたね。
また営業の仕方も私に合っていると思います。新卒では証券会社でリテール営業をしていたのですが、ニーズのないところにも売らなければならないことがとても大変に感じていました。前回インタビューを受けたのは『コミィ』を立ち上げてから5年ほど経った頃で、請負開発が軌道に乗り出した頃でした。軌道に乗り始めたとはいえ、それでも当時は人手もお金もなく、すべてを一人で行い営業をしていましたが、営業が難しいとは感じませんでした。なぜならシステム開発の営業は、ニーズがある会社に提案するので、数回のコンタクトで仕事を受注することもあるからです。
一人で全てをやらざるを得なかったのですが、結果としてプログラムの知識もだいぶ付いたことでお客さまにもシステム分野の深い話をすることができ、証券会社時代の営業と起業してからのプログラミング経験、会計知識等、別のスキルだと思っていた点と点が結びついて線になり売上が伸びた事は、事業としてうまく行かなかった時も諦めずに続けた結果だと思っています。
『コミィ』はWEB/OPEN系を中心とした自社サービスの開発や請負開発を行っていますが、『エス・イー・エス』は人材を扱う業務がメインです。同じITと言っても、関わってくるのは人間なので、人とのやり取りの重要性をより強く感じるようになりましたね。

未経験者を発掘、教育し、システムエンジニアに育てあげ委託契約で提供

御社の事業であるSES(システムエンジニアリングサービス)について、具体的に教えていただけますか。

基本的に、システム開発・保守・運用に必要なエンジニア(技術者)を提供するサービスを行っています。SESはもともと客先に行くことが一般的でしたが、今はコロナ禍もあり、弊社の社員の7割程度はリモートワークや社内に出勤して仕事をしています。地域のIT業界の「縁の下の力持ち」をめざしています。
システム開発の実績は、スマートフォンアプリ、大手旅館予約システム、中古車販売システム、 「Salesforce」という業務用ツールのカスタマイズ開発、最近は金融系のシステム開発など、WEB/OPEN系以外の業種も増えてきています。

採用基準は人柄と真面目さ。最初の大きな山を乗り越える努力ができる人

御社では未経験者を積極的に採用して育てているそうですが、採用基準を教えてください。

やる気があるのは大前提ですが、未経験の場合それまでのキャリアより、人柄と真面目さを見ています。エンジニアになりたい未経験者は多くいますが、実際になる人は少なく、最初にプログラミングを理解する大きな山に直面し8~9割が挫折してしまうと感じています。一度乗り越えればラクになりますが、そこを乗り越える努力ができるかが大切です。
私はこの5年間で200人以上のエンジニア志願者に会っていますが、正直なところ、半年ぐらい一緒に働いてみないと真面目に努力できる人かは分かりません。2~3年、時間をかけて継続した努力ができるかどうかをみています。

未経験者を育てるために、どのような教育を行っているのでしょうか。

入社後1カ月~3カ月くらいはeラーニングで基礎を学んでいただき、次の3ヶ月は弊社の管理職がメンターとなり、実際のシステムを作りながら技術を身につけていく独自のカリキュラムを用意しています。期間やペースは個人によって違いますが、カリキュラムが終わる頃から成長度合いにあわせて実際の仕事の割合を増やしていきます。
努力が足りない人も会社の戦力になれるように、頑張った人はさらに成長できるような個人に沿った仕組み、フォローアップ体制を構築しています。弊社は総務・経理担当の1名を除き、経営陣を含めた全員がエンジニア経験者で専門知識があるため、プログラムのソースを見れば新人がどの段階まで成長したかおおよそ分かります。そこは弊社の強みだと思っています。
また、エンジニアの世界では当たり前ですが、ここまでスキルを身につければ安泰、といったものはありません。学び続ける必要があり、終わりはありません。ただ、基本的にひとつの言語に熟達してしまえば、他の言語や新しい言語も根本的なものはそこまで変わりません。例えば、一人前のエンジニアに初めての言語に入ってもらうときは、1カ月程度のキャッチアップ期間を設けていますが、言い換えると1カ月あれば大体新しい言語への対応が可能です。パソコンの前に座して指示を待つのではなく、一人前になっても新しい情報を仕入れて勉強し続ける必要はありますね。

1人目の社員が管理職に。風通しがいい働きやすい職場づくりも

人を教育するなかでうれしいエピソードはありますか。

『エス・イー・エス』の1人目、2人目の社員は、未経験から入社して以来、様々な案件で経験を積み、今は弊社にとって必要不可欠な人材になっています。現在その2名は管理職としてもエンジニアとしても頑張っています。
設立当時は、人を募集しても応募がなく、人を雇うのが難しい状況でした。そこで取引先や知り合いに声をかけて、ある会社の支店長に紹介してもらったのが1人目、2人目の社員です。その支店長も2年前に弊社に来ていただき、現在営業担当として取締役をやっていただいています。ご縁を感じると同時に、みんなに支えられて今があると非常に感じます。

人を教育するときに心がけていることはありますか?

私は自分が考えたことやアイデアを役員や管理職だけではなく、入社直後の社員に聞くこともあります。フラットでいることは、特に若い社員にとってはやりやすいと感じてくれているかもしれませんね。私がそういうスタンスなので、私がいないところでも、年齢に関係なくものが言いやすい、風通しのいい雰囲気につながっていると思います。
社員教育と共に働く環境として、理不尽なストレスを与えないよう気をつけています。ビジネスパーソンとしてTPOに合わせた態度・格好をするのは大前提として、社内にいるときはスーツやネクタイを着用する必要はないし、社内の飲み会で上司にお酒をつぐ必要もありません。社員は何のために会社に来ているのか、社員を何のために雇っているのかを常に自分に問いかけて、常識とされている事でも、社員がパフォーマンスを発揮するにあたり、無駄なことは極力排除するようにしています。
ただし、エンジニアとして必要なスキルに関しては、真面目に努力していただく。それができていないときには怒りますね。

ゴールは世界でSESビジネスを展開すること。そのためにも上場を目指す

宮城県仙台市に本社を構えて、東京、岩手県盛岡市にも拠点がありますが、どのような展開を考えていますか?

実は、私が仙台出身という訳でもないため、あまり場所にはこだわっていません。弊社は「地元密着」ではなく、「地域密着」という言い方をしています。いま本社は仙台にありますが、その地域地域に密着したビジネスをすることを心がけています。
仙台でスタートしてある程度まで進むことができたので、いろいろな地域で同じ形でやっていきたいと思います。例えば盛岡、東京への展開のように、47都道府県でそれぞれ地域に密着し、地域の人を採用して、地域のクライアントに向けてSESビジネスを展開していくことを目標にしています。

今後、会社として目指すゴールはなんですか?

少子化で労働人口は減り続けていますし、今は年間で未経験者だけで10人くらい採用していますが、今後は未経験者も先細りの可能性があると考えています。将来的な人材難を考えると、アジアや海外にも目を向けて、グローバル展開できるような会社規模になっていたいと思います。
とにかく優れた人材を育てて、教育力を競争力にしようと思っています。ゴールは世界でSESをすること。時間はすごくかかると思いますが、行けるところまで行こうと思っています。ただ、これまでの5年間の成長性を考えると30年後にどこまで成長できるか、それをいかに短縮するかが大きな経営課題です。10年かかってできることを2年でやるにはどうしたらいいか、今いろいろ考えてチャレンジしているところです。
2010年に宮城県の創業基金に応募した事をきっかけに創業いたしました。そして2022年は、「5年以内に株式上場を目指す」企業として仙台市の未来創造企業に認定されました。直近の目標としては、上場を目指します。20年、30年かかることを3年、5年でやるという目標にもつながりますが、上場することでエクイティファイナンスを得れば、一気にグローバル展開に近づけると思うからです。

最後に、システムエンジニアを目指している若い人にメッセージをお願いします

一人前のシステムエンジニアになるには才能ではなく、努力をするだけです。努力は人を選ばない。誰でもできることです。その先にある運や才能で勝負する世界はもっと面白いので、まずはとことん努力しつくして、努力だけでは行き着けない世界で勝負してほしいと思います。
私は仙台に来たときには知り合いが一人もおらず、睡眠以外はひたすらプログラミングを勉強しました。夢の中でもロジックが思いついたら飛び起きてパソコンに向かい、そのまま朝を迎えるということもよくありました。あの期間は世界で一番パソコンの前に座り続け、誰よりも長い時間プログラミングをやっていたのではないかと思うときがあります。事実は別として、「自分は誰よりも努力した」といえる経験を持つことはとても大事だと思っています。今ここまで来られたことを振り返っても、努力と運だけだったと思います。私たちは、経験も才能も求めていませんが、努力し続けられる人材を探しています。

取材日:2022年10月6日 ライター:佐藤 由紀子

SES(エス・イー・エス)株式会社

  • 代表者名:柿沼 清孝
  • 設立年月:2017年8月
  • 資本金:530万円
  • 事業内容:システムエンジニアリングサービス、システムコンサルティングサービス、システム開発サービス
  • 所在地:〒984-0051 宮城県仙台市若林区新寺2-1-6 THE ISビル3F
    東京オフィス
    〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-26-16 第五叶ビル5F
    盛岡オフィス
    〒020-0026 岩手県盛岡市開運橋通3-39 ダビンチ22階
  • URL:https://www.se-sendai.co.jp/
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  • お問い合わせ先:https://www.se-sendai.co.jp/contact/

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