WEB・モバイル2015.06.03

仕事に熱狂した ベンチャーでの体験をもう一度

仙台
コミィ株式会社 代表 柿沼 清孝 氏
仙台のインターネット関連企業『コミィ株式会社』の代表である柿沼清孝氏は、かつては証券マンというIT企業の社長としては珍しい経歴の持ち主。証券会社から、当時飛ぶ鳥を落とす勢いであったモバイルベンチャー企業『GREE(グリー)』に転職後、仙台で起業し震災という大きなハードルを乗り越え、創業から5年が経ちました。 経営者という新しい舞台で、これまでに培ってきた広い視野を武器に前進する柿沼氏にお話を伺いました。

元手が少なくてもチャンスの大きい IT系のベンチャーに憧れていた、学生時代。

起業のきっかけを教えていただけますか。

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大学卒業後、証券会社に就職しました。金融の世界は面白いものでしたが、学生時代、楽天やサイバーエージェントなどのIT企業が一気に台頭してきたこともあり、ITベンチャーに興味があったので、その当時創業3年目だった『GREE』に転職しました。『GREE』では、設計や開発ではなく広告営業をしていたのですが、いずれ起業しようと在籍中にビジネルプランを立てていました。少資本でもチャンスを掴めるITの面白さに惹かれていました。そして、ビジネスプランのブラッシュアップの機会にと、宮城県の創業基金に応募したものが受託されたので、東京から夫婦で転居し宮城県で創業することにしました。

『GREE』では営業をされていたのですね。 設計や開発のご経験は。

全く(笑)。金融の仕事も『GREE』でも営業を担当しており、ずっと営業畑だったので、その当時開発は未経験でした。IT周りの知識はありましたが、HTMLとPHPの違いを理解するところからスタートしました。

御社が最初に取り組んだプロジェクトを教えていただけますか。

自社のメディアサービスの開発です。「COMEE(コミィ)」というマンガ共有SNSなのですが、これが創業基金に応募したビジネスプランの主軸としていたものです。SNSと何かを結びつけるサービスを模索していたときに、自分がマンガ好きということもあってマンガを共有させる仕組みにしました。pixiv(ピクシブ)※1はイラスト単体のメディアですので、そのマンガ版ですね。

※1 pixiv(ピクシブ)とは、イラストの投稿・閲覧が楽しめる「イラストコミュニケーションサービス」。

夢を追いすぎた壮大な失敗 自分の力を過信していた

「COMEE」の設計や開発は柿沼さんがご自身でなさったんですか。

ええ、そうです。開発未経験の私が独学で始めて丸々3ヶ月かけて完成させました。2名で開発したので実際には6人月かけたことになります。構築の仕組みを理解するとこから始めて、開発作業としてそれだけの時間をかけたことになりますね。かなり追い込まれました。ほとんど外出せずにがむしゃらに作業して3ヶ月かかりましたから、完成したときは感無量でしたね。無料でマンガを公開し交流できるサイトです。

未経験での開発は大変なご苦労があったと思います。 収益はどのように確保されているのでしょうか。

このサービスでの収益化は課題です。広告収益を予定していましたが、それが達成できていない状態ですね。メディアサービスとして課題を感じています。

メディアサービスのマネタイズですね。

ええ。メディアサービスで広告収益を得ることは当然可能なものだと思っていました。ですがダメだった。失敗した、と思いました。私が『GREE』という会社に在籍していた時、会社自体が熱狂していたんですね。会員数がものすごい勢いで増えますしね、深夜まで仕事をしていても会社が大きくなっていくことが楽しかったのであまり疲れを感じませんでした。あの興奮状態はなかなか言い表せるものではありませんが、会社の看板を背負っている自分であるにも関わらず、それが自分の力と過信していたのだ、と反省しましたね。目が覚めたというか。

他に開発されていたメディアサービスはありますか。

ええ。他にもありますが、いずれもマネタイズは課題ですね。 Unity(ユニティ)※2 を使ったサービスを映像制作会社と進めていたり、仙台の観光アプリを開発したりと、今も新たなコンテンツの制作は進めています。ただ、創業当時の方針を見直し、2年目からはメディア運営と受託開発を両輪でやっていくことにしました。

※2 Unity(ユニティ)とは、統合開発環境を内蔵し、複数のプラットホームに対応する、ユニティ・テクノロジーズ(英語版)が開発したゲームエンジン。

方針を改めたことがどのように会社の経営に反映されているのでしょうか。

自社プロダクトへのこだわりはありますが、経営の手段として受託業務を組み合わせる決断をしてからは、業務に拡がりが生まれました。ECサイト、PHPでのメルマガ配信、スマートフォンのゲームアプリ、3Dモデリング、WordPressのWEBサイト構築など、業務システムの組み込みではなく、WEBのなんでも屋として認知していただくことも喜びとなりました。いろいろな要素が絡まってうまくいっています。

東京の仕事を仙台で受託… このエコシステムを変えるために。

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仙台には少数精鋭のIT企業が多いですが、 そのネットワークは活かされていますか。

はい。ベクトルは異なるものの、気が許せる仲間ですね。私よりも若手の経営者もいますので、挑戦しようという気概に溢れています。 不思議なことですが、東京にいると地方が見えないんです。 私も東京で仕事をしていたとき、地方では何もしていないように見えていたのですが、それは違いました。地方でもチャレンジしている企業がたくさんあったんです、当然ですね。私も参加している仙台ITビジネス研究会では、特にモチベーションが近い企業が集まっているので、これから面白い展開になりそうですよ。

それは楽しみです。 最近は、福岡を筆頭に地方企業の台頭も目覚ましいですね。

そうですね。地方都市にもチャンスはありますからね。これまでは東京からの発注を仙台で受けるという構図でしたが、それを拡大しつつ、これからは別のエコシステムも構築したいと思っています。仙台ならではのネットワークを使って、仙台だからできる成功事例を作っていきたいですね。

営業力と広い視野は柿沼さんの大きな武器だと感じます。 最後に、御社の今後の目標を教えていただけますか。

ありがとうございます。営業から開発と、ひと通り経験して自分には営業が向いている事に気付かされました。 長く営業畑にいた自分のスキルが、開発経験と繋がり、今の仕事でうまく機能し始めていると感じています。今年から3カ年計画を立てていますので、今期は数字の目標を必達として、経営者として成長していきたいと思っています。

取材日:2015年4月2日

コミィ株式会社

  • 代表者名:柿沼 清孝(かきぬま きよたか)
  • 設立年月日:2010年4月28日
  • 事業内容:受託開発、WEBサービス開発・運営、その他インターネット関連事業
  • 所在地:〒980-0021 宮城県仙台市青葉区中央4-8-15
  • TEL: 022-796-3855
  • FAX: 022-395-5421
  • URL: http://comee.co.jp/
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