職種その他2016.03.02

人と人、都市と農村を繋ぐ 人材ネットワークを大切に地域を活性化

仙台
株式会社 プロジェクト地域活性 代表取締役社長 望月 孝氏、事業企画部マネージャー 竹岡 芳成氏
平成15年設立の株式会社プロジェクト地域活性は、「人財」を中心に、東北の各地域の活性化を推進する会社です。代表取締役社長を務める望月孝(もちづき たかし)さんは、「人財」のネットワークを広げることで、地元発の地域ブランドの創出、顔の見えるWebショップの運営など、生産者と消費者を繋げ、人と人、都市と農村のネットワークを大切にした地域活性事業を展開しています。代表の望月さんと事業企画部マネジャーの竹岡芳成(たけおか よしなり)さんに、東北の地域活性への思いについて伺いました。

はじまりは、東北の「人財」への思い

代表取締役社長 望月 孝氏

代表取締役社長 望月 孝氏

まずは、望月さんのご経歴について教えてください。

望月さん:前職は株式会社リクルートで、人と組織の活性化をお手伝いする組織活性化事業部へ配属になりました。そして、平成5年に、同事業部で企業の人材教育を支援する人材企画部課長として、平成7年には人材総合サービス部門で採用・教育をトータルに支援する営業部のマネジャーとして研鑽を積みました。 リクルートでは、同時期の平成8年、社内に「地域活性事業準備室」が発足し、旅行、Uターン・Iターンなど“人を動かすことで地域を活性化する取り組みに力を入れていました。その事業内容に惹かれ、平成11年10月に、自ら希望して地域活性事業部へ異動しました。 異動した当初は、東京で通商産業省・文部省(当時名称)といった行政機関を担当するのと同時に、地域は東北エリアを担当し、観光振興、UIターンの推進に尽力しておりました。業務を進める中で、東北エリアを担当するからには、担当する地域により近いところで働きたいという思いが強くなり、半年後東北支社へ異動し、観光・ツーリズムの復興、地域ブランドの創出、東北地域へのUIターンの促進、農業の担い手の対策や経営人材育成などを通して、東北地域の活性化を支援する業務に携わりました。私が異動してから地域活性事業部では、“人を動かすことで地域を活性化する”ことに加えて“人を育成することにより地域を活性化する"という地域人材育成事業を加え、都市と農村のツーリズム(交流事業)を担う人材を育成する「東北ツーリズム大学」の設立などに力を注ぎました。 その後、リクルートが地域活性事業から撤退したため、当時の支社長の応援もいただきながら、リクルートで担当した地域活性事業を引き継ぐ形で、平成15年6月に当社を設立させていただきました。

地域活性を行う上で大切にしていること、魅力に感じていることは何ですか?

望月さん:当社では、「人財」を中心に地域活性に取り組むことを大切にしています。なぜ「人財」かと言うと、リクルート時代に仙台へ赴任してきた当初、東北大学のある教授から「東北は歴史上ずっと、首都圏への人材と食料とエネルギーの供給基地だった。そして現在も、それは変わらない。」というお話を聞きました。東北は今でも、地域にとって最も重要でかけがえのない資産である「人財」を、早ければ進学時、遅くとも就職時や転職時に、いとも簡単に首都圏へ供給しています。そのため、当社では首都圏へ流出した「人財」を、1日も早く東北へとり戻すことも目的に、「地域の人材確保・育成」「地域ブランドの創出」「観光・ツーリズムの振興」という3つの領域で事業を展開しています。東北地域に人財を取り戻すには、地域に付加価値の高い魅力的な仕事がなければなりません。

設立当初と震災後の現在で、地域活性に求められているものに変化はありますか?

望月さん:東日本大震災を経て、被災地である沿岸部などから多くの人が首都圏や仙台などの都市部に移住してしまったことで、農漁村部の少子高齢化のスピードが早まるなど、10年以上先の課題だと考えられていた課題が予想以上に早く現実となりました。 たとえば、漁業。跡継ぎのいない人の多くが、すでに漁業権を返上しています。ご自身であと10年~20年やるつもりであった人たちが廃業を一気に前倒しにして、3割程の人が漁業を辞めたと聞いております。農業においても、同じように担い手の問題が早まっています。漁業も農業も課題が一気に10年早まり、組織化・法人化などの新しい変化を受け入れざるを得なくなりました。

人と人、都市と農村を繋ぐネットワークから生まれた 新しいビジネスモデル

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現在、力を入れている事業について教えてください。

望月さん:現在、「食」と「観光」の領域に力を入れております。 その中のいくつかを挙げますと、まず1つは仙台の農産物の新しいブランドの創出。仙台市東部沿岸地域で生産した朝採り枝豆を、その日の内に一番町や国分町、仙台駅前などの飲食店に直送しています。今年度は市内34店舗の飲食店で提供していただき、生産者の方からも喜んでいただきました。これは仙台市の東部沿岸部の農業を支援する「仙台市経済局農林部東部農業復興室」と当社が一緒に取り組んだ事業になります。 2つ目は、観光の領域で、私が理事長を、当社の畠山が事務局長を務めているNPOみちのく6次産業プラットフォームで、作並(さくなみ)地域の活性化に取り組んでおります。 そして3つ目は、当社の竹岡が事務局長を務める宮城県食品産業協議会で昨年度から取り組んでいる【新しい東北】というモデル事業です。これは、宮城県食品産業協議会・県内の食品加工事業者や水産事業者が、東北大学と一緒にいろいろな技術を使いながら、これまでにないような先進的な食品を開発しようという事業です。大学が加わることで、商品設計に加え、事業者の方々に、商品の知財化やマーケティングという考え方を持っていただく機会でもあります。

人と人、都市と農村を繋ぐネットワークを大切に地域活性事業を展開されているとのことですが、なぜ、ネットワークが重要なのか、御社の取り組みについて教えてください。

望月さん:ネットワークには、そのキーマンたちが存在しており、それぞれが業界や地域と強い繋がりを持っています。キーマン同士の繋がりは年に1度会うか会わないような、ゆるやかな繋がりですが、キーマンたちを結びつけることで、イノベーションや新しいビジネスが生まれていきます。 このゆるやかな繋がりを作っていこうというのが、当社の取り組みです。その一環として平成21年から24年まで「農商工連携プロデューサー育成塾」を開催し、60名ほどの卒塾生を輩出しました。ちょうど東日本大震災の翌日、会津への卒業旅行を企画していたこの塾の2期生の何人かが中心となって、卒業旅行の予定日のちょうど1年後に先ほどお話した『田舎群東北村』を開設ました。

当社の事業は、農林水産業・工業・商業などの「産業」と大学や行政などを結び付けるネットワーキングを中心とした地域活性に取り組むのに特長があります。弊社が持っているネットワークを活かしつつも、当社自身もネットワークのキーマンになっていきたいと考えております。

ウェブショップ『田舎群東北村』で扱う食品

ウェブショップ『田舎群東北村』で扱う食品

では、ネットワークを活かした事業例を教えていただけますか?

望月さん:「東北ツーリズム大学」に参加してくださったつながりから、現在は山梨県で「NPO法人えがおつなげて」の代表理事を務める曽根原久司氏から、震災後、企業と農村を結ぶ新たな事業をしないかというお誘いをいただきました。この事業は、大手不動産会社と農村が組んだ都市農村交流事業、大手出版社と農村が組んだ読者対象の農業体験ツアーなどを企画することで、未活用の地域資源を活用し、様々なビジネスを提案する事業です。現在、そのノウハウを東北の被災地に移転し、各地域の農業法人、NPO法人等が、企業との連携を進めています。

思いを伝えて、ご縁を繋ぐ仮想村『田舎郡東北村』

事業企画部マネージャー 竹岡 芳成氏

事業企画部マネージャー 竹岡 芳成氏

『田舎群東北村』はどのような取り組みですか?

竹岡さん:『田舎郡東北村』は“ご縁と結"を理念に、平成24年3月12日に開村したウェブ上の仮想村です。『田舎郡東北村』は東北のどこかにある架空の村をイメージしており、東北の価値あるおいしいもの、楽しいものを村営直営発(ウェブショップ)で販売しております。ウェブ上だけでなくリアルな場、イベントなどに出店するご縁マルシェ、村民(会員)とものづくり村民(生産者)が交流を深める場として『村営田舎学校』を開催しております。ただウェブでショッピングをするのではなく、直売所では生産者のものづくりへの姿勢が伝わること、顔が見えることで、思いが伝わり繋がり“ご縁"が生まれるのが魅力であり特徴です。ものづくりへの思いを正当に評価する、『正品正費(しょうひんしょうひ)』が我々のキーワードとなっています。『田舎郡東北村』はネットワーキングによる地域づくりを心掛ける、当社の「核」になる存在です。東北6県の生産者および1次産品の加工者の方々を「ものづくり村民」と呼び、これを通して交流とか販売を行っています。今後は東北6県に『田舎郡東北村』のネットワークに拡充し、より多くのものづくりに真面目な生産者と、その思いを正当に評価する応援団としての消費者の輪を広げていきたいと考えています。『田舎郡東北村』に「消費者村民」や「ものづくり村民」を増やして、『田舎郡東北村』がプラットフォームになっていく必要があると思います。

今後の展望について教えてください。

望月さん:昔からの課題でもありますが、行政からの委託事業の他に、弊社が独自で行う地域活性事業を軌道に乗せ、第2の創業をすることが現在の大きな課題です。まずは当社が運営する『田舎郡東北村』事業を、NPO法人みちのく6次産業プラットフォーム、東北大学、宮城県食品産業協議会などとのネットワークも活用して第2フェーズである企業との連携のステージに持っていくなど、当社が当事者としてやっていく事業に力を入れていきたいですね。

最後に望月さんにとっての「やりがい」は何ですか?

望月さん:地域の皆さんが楽しんだり、元気な姿を見ているとやりがいを感じます。これはリクルート時代、組織活性事業や地域活性事業をやりたいと思った理由でもあるのです。

取材日:2016年2月8日 ライター : 桜井玉蘭

企業名 株式会社 プロジェクト地域活性

  • 代表者名(よみがな): 代表取締役社長 望月 孝(もちづき たかし)
  • 設立年:2003年6月
  • 事業内容: 観光・ツーリズム/地域ブランド/地域の人材確保・育成領域
  • 所在地: 〒983-0852 仙台市宮城野区榴岡2-2-11 パスコ仙台ビル7階
  • TEL: 022-205-3540
  • FAX: 022-299-1420
  • URL: http://www.prokatu.jp/
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