「機能するデザイン」で開業やブランディングを支援。広告代理店などでの経験を生かした提案力
札幌を拠点とし、活動領域を全国に広げて事業を展開しているデザイン制作会社・株式会社エイプリル。代表のメアラシケンイチさんが目指すのは、クライアントが抱える困りごとを、ちょっとした遊び心とサプライズの要素を持ったデザインで問題解決していくというスタイル。広告代理店などの経験を経て、エイプリルを立ち上げたメアラシさんに、これまでの経験や現在の仕事、今後についてお話を伺いました。
より近い距離でクライアントの困りごとに応え、「その結果を感じたい」と独立。広告代理店などでの経験を生かし
立ち上げまでのキャリアを教えてください。
北海道造形デザイン専門学校でグラフィックデザインを学びました。思えば当時からグラフィックだけに興味があったわけではなく、インテリアやファッション、イベント企画などさまざまなクリエイティブに興味を持った学生だった気がします。
実務では、デザインプロダクションで3年間働いた後、出版・イベント会社で商品開発やプロモーションを経験し、その後広告代理店・東急エージェンシーを経て、独立。東急エージェンシーでは約10年間クリエイティブやストラテジックプランニング(戦略的策略)に所属しました。
大手広告代理店を退職してまで独立しようと思われたきっかけを教えてください。
広告代理店の仕事はとても充実していましたが、一区切りついたかなと感じたのが、2009年頃でした。当時広告業界は時代の変わり目で、マス広告からデジタル広告へ移行していく時代でした。世の中は08年のリーマンショックの影響を大きく受け、多くの業界が広告予算や経費を削減しました。
広告代理店では、メディアを用いたブランディングやコミュニケーションを多く提案してきましたが、デザイン力や小回りの利く機動力を強みにクライアントの課題や要望にダイレクトに応えていきたいと思ったのがきっかけです。
1人より2人、2人よりチームで。「同じ夢を抱く仲間と勝負したい」との思いで法人化へ
いずれは会社を立ち上げたいという思いはお持ちでしたか?
独立後、しばらくは1人で案件を請け負っていたのですが、自分はチームで仕事をするのが好きなんだなと気づいたんです。それからほどなく、協力してくれる仲間が1人、2人と増えていって、エイプリルという会社になりました。1人ではできる作業やアイデアに限りがあります。学生時代にバンドをやっていたのですが、一人一人演奏する楽器が違えば得意ジャンルも違う。違う要素を持ったもの同士が、いい音楽を作るという目標に向かってセッションするという感覚と似ていると思いました。
なぜ、札幌で会社を立ち上げたのでしょうか。
地元でしたので、札幌で起業することはとても自然な流れでした。ただ札幌を拠点としながらも全国ベースで仕事をしたいという思いも、当時からありました。今は地方のクリエイターがほかのエリアで仕事をするのは一般的になりましたが、当時はほとんどなかったと思います。
受注案件は、最初から潤沢にあったかといわれれば、決してそうではありませんでしたが、広告代理店時代のクライアントの応援もあって、少しずつ依頼が増えていった感じです。
クライアントの目的達成につながる「機能性を持ったデザイン」を重視
現在の事業内容について教えてください。
企業やショップ・商品のブランディングや世界観をお客さまと一緒に作り上げるのがメインですが、ローンチ後のプロモーションやブランド継続のお手伝いにも参加させていただいています。
具体的な事業は、デザインがベースですが、事業計画の立案のお手伝いから具体的なアウトプットといった上流から下流までを提案するのが我々の役目です。課題解決に必要なのはブランディングなのかプロモーションなのか、それらの組み合わせなのか、企画段階から参加し、デザイン・アートデレクションの領域でサポートします。
御社の強みを教えてください。
私が広告畑の出身ということも関係あるかもしれませんが、生み出したブランドがどう話題になり、どのように人々の行動を変え、結果クライアントの目的達成につながっていくかに重きをおいています。事業の目的はさまざまですが、今の時代でいえば、SNSでの広がり方や見え方を考えていくことも重要ですね。デザインに働いてもらうことが重要かと思います。
北海道のライフスタイルをバックボーンにした企画やデザインがエイプリルらしいとクライアントからいわれることも多々あります。自然に近い環境で暮らしていることがクリエイティブに影響しているのかもしれませんね。
チャーミングさをプラス。デザインにちょっとした遊び心を交えたサプライズを
飲食店も経営されていますよね?
はい。グループ会社に飲食店を運営する会社があり4店舗をクリエイティブでサポートしています。自社店舗のブランディングやプロモーションを実践することで、クライアント目線での提案の心がけが自然と身についたり、実験的なクリエイティブも自社案件だと比較的思い切ってできることも強みかもしれません。
デザインをするうえで、意識・工夫されていることはありますか?
エンドユーザーをハッと笑顔にさせるサプライズや意外性の創出を意識しています。そうすることでデザインに人間味が生まれ、共感を生むデザインが生まれやすいのではないかと考えています。
人間と同じように杓子定規ではなく、ちょっと個性的で憎めないようなチャーミングさがオリジナルになるのではないでしょうか。
2拠点生活からアイデアを創出されることもあるそうですが、その目的と事業への影響についてお聞かせください。
普段は札幌市内で生活していますが、週末は郊外の森に囲まれた山小屋のような家で過ごすことが多いです。自然の中には人工的なデザインがないので、ここにこんな小道があったら、などと妄想してしまうんですよね。自然の中で過ごすことで、気持ちがリセットされるほか、新しいアイデアを発想するきっかけにもなっています。
オリジナルの研修プログラムは、旅のセルフプロデュース。冒険で身につくクリエイティビティ
スタッフへの教育方針や社内環境については、どのようにお考えでしょうか?
今年から「WORK“A”TION!」という研修プログラムをスタートさせました。スタッフだけでなく私も参加します。
スタッフ全員で旅の目的地やそこで行うミッションのアイデアを出し合い、誰がどこに旅するかはくじ引きで決めます。つまり他人が企画した旅を実行するわけです。目的地が決まったら、自分で計画を立て、予算内でその旅を実行し、現地でクリエイティブワークや課せられたミッションをクリア。戻ってからは、レポートをnoteにアップし、旅の内容をスタッフに共有します。すでに何人かが実行済みですが、計画力や行動力、編集力、プレゼン力が増したのではないかと思っています。誰かの冒険の話を聞くのは楽しいですし、モノづくりのヒントにもなりますよね。
最近の事例を具体的に教えてください。
一つは北海道の工務店・三五工務店のリブランドを任せていただいたことです。「北海道で家を建てたいと思う人としっかり向き合う工務店でありたい」という社長の思いを汲み取り、次の10年にふさわしいコンセプト・ロゴの作成と、それを伝えるWebサイトやツールのリニューアルを提案いたしました。また、広告の一切なしのフリーペーパー「35MAGAZINE」の制作も手がけています。
もう一つは、新卒で入社したスタッフが「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2023 in EZO」のデザインをコンペで獲得したことです。彼女は入社前からライジングサンの仕事をすることが夢でした。その夢が間もなく叶ったことは個人の自信や成長につながったのはもちろん、私としても社員がいきいきと働ける環境を作れてうれしかったです。
核となるのは「作る力とコミュニケーション力」。両輪を回せるクリエイターを目指して
今後、どのような会社にしていきたいですか?
アートディレクター・デザイナーをもう若干名増やして、社内の複数チームがそれぞれの業務を自主的に動かしていけるようにしたいですね。クライアントからクリエイター個人が指名されるような各スタッフのセルフブランディングも重要だと思います。
このような体制ができれば、私ももっと自分のクリエイティブワークを進めて行けますしね。
一緒に働くクリエイターに対して、会社としてどのようなことを求めますか?
デザインスキルはもちろんですが、コミュニケーション能力と先回りする力をつけることです。クライアントや仲間が何に困っているのか、求められるものを察せられるかどうかが、クリエイティブに一番大切なことだと考えます。技術力と思いやりの両方を大切にできるクリエイターを求めています。
取材日:2024年6月25日 ライター:宮本 和加子
株式会社エイプリル
- 代表者名:メアラシケンイチ
- 設立年月:2011年4月
- 事業内容:商品・サービス・飲食店のブランディング、商品開発/企業や施設・商品のブランド刷新、再構築/WEB・SNS戦略、共感を呼ぶコンテンツづくり/商業施設の開業支援、販促立案や広告制作
- 所在地:〒060-0001 北海道札幌市中央区北1条西2丁目11-1 第23山京ビル3F
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