WEB・モバイル2024.02.28

マルチエンジニアの育成で社会課題を解決へ。メタバースを活用し“従来の生き方”に一石を投じる

沖縄
株式会社CODREA CEO
Azuma Dajuan Masahiko
東 ダワーン マサヒコ

コワーキングスペースの運営を皮切りに、近年急速に需要が増えつつあるメタバースカレッジやIPFSサーバー構築事業などに取り組んでいる沖縄の株式会社CODREA(コードレア)。CEOの東(あずま) ダワーン マサヒコさんは、Web3時代に適した「生き抜くチカラを教養すること」で沖縄、ひいては日本の経済を盛り立てようと会社を設立しました。東さんがその思いにいたった経緯や原動力を探ります。

コワーキングスペースの運営で「何かにチャレンジしたい人」をサポート。踏み出す一歩をくれた同僚

キャリアのスタートから教えてください。

2012年に外資系の沖縄ディーエフエス株式会社に入社し、社会人生活のスタートを切りました。8年ほど勤務するなかでマネジメント業も任されるようになり、仕事にやりがいを感じていたのですが、多くの社員が世界各国でさまざまなチャレンジをしている姿に刺激を受け、自分も新しいことを始めてみたいと思うようになりました。そんな最中にコロナ禍となり、「チャレンジするなら今だ!」と退職を決意。まずコワーキングスペース「C.O.L」を開設しました。

コワーキングスペースを作られた理由をお聞かせください。

C.O.Lは「Create Own Life」の略。会社員の頃の私のように「何か始めたいけどなかなか動き出せない」人たちに気軽に集まれるスペースを提供したくて、「自分の人生を自分で構築できる場」という意味を込めて作りました。開設したところ、コロナ禍ということもあり、想像以上に多くのフリーランスや、起業したいと思っている方にご利用いただけるようになりました。
利用者とのつながりが生まれるにともない痛感したことが、沖縄の人材不足でした。

IT人材育成で日本の社会課題の一助に。沖縄経済の盛り立ても狙い

具体的にどのような人材が不足していたのでしょうか?

全国的にIT系の人材不足が叫ばれており、25年には70万人程度のIT人材不足に陥るとも言われていますが沖縄も例外ではなく、特にWeb3と呼ばれるブロックチェーン技術を基盤とする分散型ネットワークの分野において人材が不足しています。
世界的にはすでにWeb3の人材育成や投資が盛んで、日本も最近ようやく本腰を入れ、国策として取り組みはじめました。だからこそ今、その分野に長けた人材を育成できれば、私自身のビジネスも広がりますし、ひいては沖縄の経済、さらに「失われた30年」と呼ばれる日本経済の復興の一翼を担えるのではないか、と考えました。
そこで23年に株式会社CODREAを立ち上げ、Web3のエンジニアを育成するメタバースカレッジを設立、運営することを決意しました。

メタバースカレッジで、世界に通用する「強い」Web3のマルチエンジニアを育成

メタバースカレッジでは、主にどのようなことを学べるのでしょうか?

Web3エンジニアと3Dクリエーションの二つのコースを設け、Web3の世界で活躍できる人材を育成しています。特に前者のコースに注力しており、PC上で完結するソフトエンジニアの技術だけでなく、実際に自ら手を動かして機械を組み立てられるハードエンジニアの技術も教え、マルチエンジニアとして独り立ちできる人材の育成を目指しています。
ソフトの部分に関してはメタバースカレッジ空間だけで教えられますが、ハードの部分までは担えません。そこで、弊社がアライアンスを組んでいる合同会社クリアースカイという、IPFSサーバー構築事業を展開している京都の企業に出向き、サーバー構築技術を教えるカリキュラムを整えています。

なぜマルチエンジニアを育成しようと思われたのですか?

日本にはほとんど存在していないソフトとハードに長けた「強い人材」を育てるためです。マルチエンジニアになれれば世界中どこへ行っても通用しますし、ほかのIT系の学校との差別化を図れます。

リアルな学校生活の「余白」を再現し、学校生活をより楽しく。オンラインスクールにはないメリット

近年オンラインスクールが増えるなか、御社はメタバースの学校を作られました。その理由を教えてください。

オンラインスクールで最も使われているツールはZoomだと思うのですが、管理者がボタン一つ押せば授業は終了します。一方、メタバースのスクールは先生が授業を終えても学校自体が終了するわけでなく、リアルの学校のように校舎があったり、学校の外には街や海があったりするので、生徒はアバターを通して自由にコミュニケーションが取れます。そこがメタバースならではの良さであり、学校を開いた理由です。
私自身の学生時代を振り返った時に、学校の何が一番楽しかったかというと、授業以外で友だちと過ごすいわば余白の時間で、そこに価値があったと思うのです。メタバースであればその余白の部分をかなりの割合で再現できると考えました。さらにメタバースはグローバルなので、世界中どこからでも参加できるし、世界のどこにでも行けますので、「インターナショナルなフリースクール」として機能できる点も魅力です。

オンラインスクールよりも広がりを感じますね。

そうだと思います。コロナ禍を経て日本では不登校児童生徒が非常に増えているそうですが、何らかの理由で学校に行けない子どもたちでも、メタバースの学校なら行きやすいかもしれません。メタバースカレッジが将来的に学校の選択肢の一つになり得るとも感じます。

生徒の疑問に即座に答えられる教室作りで、誰1人取り残さない授業を

メタバースカレッジが存在する空間自体も、御社で作られたのですか?

弊社が作ったものではなく、アメリカ・カリフォルニアを拠点とするeXp World Holdings, Inc.が開発した日本向け共同キャンパス「GAIA TOWN(ガイアタウン)」という既存の空間を利用しています。さまざまなメタバースのなかでもガイアタウンは特に学びの空間を作るのに適しているようで、弊社の学校のカスタマイズがしやすかったんです。

学校作りにおいて、特に工夫されたことを教えてください。

生徒が学びやすい空間にすることです。例えば、一人一人の座席のそばに、今自分が触っているPCの画面が映し出されるように設定しています。これは、それぞれが今何をやっているのかをリアルタイムで可視化することで、疑問点や問題が発生したら、講師がすぐに対処できるようにするためです。Zoomではここまで個別のサポートはできないと思いますし、場合によっては、リアルな学校の授業よりも早く講師が助け舟を出せるかもしれません。先生に隠れて漫画を読んでもすぐバレますけどね(笑)。

どのような方が講師になっているのですか?

全員、私が運営しているコワーキングスペースC.O.L.で出会いました。このメタバースカレッジの理念に共感してくださり、高いスキルを持つ方々に支えられています。

23年からスタートしたとのことですが、現在はどのぐらいの受講生がいらっしゃるのでしょうか?

10人ほどですが、実は今、メタバースカレッジとしての募集はストップしています。というのも「国際志学園」という九州の学校法人とご縁があり、国際志学園内の新しいコースとして「Web3エンジニア育成コース」が23年の10月にスタートしました。この準備や運営に講師含めたリソースの大部分を割いており、なかなか自社カレッジの拡大まで手が回っていません。
ただ国際学園のカリキュラムとして「Web3エンジニア育成コースと3Dメタバースクリエーションコース」の生徒募集募集は行なっております。

リソースとしては大変な面もありますが、今後さらに展開していきそうですね。

ありがたいことに、自治体やキルギス共和国の大使など、海外からもさまざまな企画のお声がけをいただいています。しかし、開校したばかりのカレッジですので人材がまだ育成しきれておらず、すべてのご要望にお応えすることが厳しい段階です。やはり直近の目標は、受講生を1人でも多く世に輩出することに尽きますね。

企業と協働でサーバー作りから販売までを担える人材を育成

御社の事業内容でもう一つ、IPFSサーバー構築事業がありますが、詳しく教えてください。

メタバースカレッジ事業とつながりのある事業になります。非中央集権の分散型サーバーと呼ばれるIPFSサーバーを学ぶ場がカレッジになりますが、実際にサーバーを作り、さらにサーバーを広げる、つまり販売することも必要になります。その部分を担う人材を育成することを「IPFSサーバー構築事業」の主軸とし、合同会社クリアースカイと事業を進めています。
また、24年 1月に一般社団法人Japan Web3 協会を立ち上げ、理事として参加させていただいています。今後多くの企業又は個人のWeb3領域への参加、挑戦を幅広いスキルと知見・知識でサポートしていけるリソースを提供いたします。 

自ら挑戦して稼げる自立した人を増やし、沖縄の未来に貢献したい。従来の働き方を打破

今後の展望を教えてください。

特定の所有者や管理者がいなくても、事業やプロジェクトを推進できる「DAO」と呼ばれる組織を作っていきたいですね。従来型のトップダウンで仕事が遂行される組織ではなく、社員が自らで働き方を作っていけるような環境が理想です。それが進めば、個々のプロジェクトに投資するファンド事業にも着手してみたいと思っています。
社員は2人のみで、今後増やす予定です。貢献度に応じて報酬が支払われるような組織にし、主体性を持って働ける環境を整えたいです。だからこそ弊社へ入社してくださる方は、高いスキルよりも主体性を持つ方を望みます。

社内的にもカレッジを通しても、「主体性」を持った人材を育てたいという、東さんの強い想いを感じます。

弊社のミッションは「『新たな生き方』『新たな学び方』 『新たな稼ぎ方』を身に付け、生き抜く力を付けること」。私自身海外での生活が長く、世界ではチャレンジ精神を持って自ら動けないと生き残れない、つまりお金を稼げないということを実感しました。これからの時代には「自分を売る」ことを躊躇せず、1人で生き抜けるスキルを身に付けることが必要です。

そのために、Web3のスキルを持った人材を育成したいということですね。

その通りです。特に私の生まれ故郷の沖縄には遠慮がちな人が多いように感じます。私のメタバースカレッジを利用することで、沖縄の方はもちろん1人でも多くの方に、世の中に一歩出る自信と勇気を持ってもらえれば本望ですね。

 

取材日:2024年1月22日 ライター:仲濱 淳

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

株式会社CODREA

  • 代表者名:東 ダワーン 真彦
  • 設立年月:2023年2月
  • 資本金:200万円
  • 事業内容:メタバースカレッジ事業、コワーキングスペース事業、IPFSインフラ構築事業、一般社団法人Japan Web3協会
  • 所在地:〒900-0004 沖縄県那覇市銘苅3-9-22
  • URL:https://www.codrea.net/
         https://jwa.bz/#jwa-vision

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