アニメ2023.09.27

「CGは面白い作品を支えるツール」。アニメ界で存在感を発揮するCG制作スタジオのスタンス

東京
株式会社アストロブロス 代表取締役
Ryo Sasaki
佐々木 涼

3DCGアニメーションの企画・演出・制作を手がける東京の株式会社アストロブロス。TVアニメ「鬼滅の刃 刀鍛冶の里編」や映画『ONE PIECE FILM RED(2022)』、ゲームソフト「MONSTER HUNTER RISE」など、誰もが知るアニメやゲームのアニメーションに参加しています。しかし、代表取締役を務める佐々木 涼(ささき りょう)さんは、「CGは面白い作品を支えるツールにすぎません」と語る。アニメーション作品におけるCGの役割や、今後担うべき立ち位置とは?業界を志望する学生に求める人物像も交えて話をうかがいました。

親の影響でVFX映画の魅力を知り、CG映像作品制作の道を志す

まずは佐々木さんのキャリアをお聞かせください。

親が大のハリウッド映画好きで、ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ(1978)』やリドリー・スコット監督の『エイリアン(1979)』などの名作映画に触れるうち、私もSFXやVFX映画の虜になりました。
2004年にクリエイタースクールであるデジタルハリウッドの総合Proコースを卒業しました。卒業制作が優秀作として選出されたこともあり、のちに数々の映像制作会社から声をかけてもらいましたが、アニメ制作の道にも惹かれ、そちらの道を選ぶことにしました。

どのような理由でアニメ制作に惹かれたのでしょうか。

私が好きなVFX映画は役者の芝居にCGで作られた背景を合わせる手法が多く、CGは作品の主役といえるほどではありませんでした。一方で、当時は『機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-(2004)』、「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン(2005)」など、アニメやゲームのフルCGの作品が発表されていました。
アニメ制作ならば背景だけではなくキャラクターのモデリングや芝居付けもCGのセクションで担当できるチャンスがありますし、主人公を担当できると、まるで自分自身が主演しているかのような面白さや達成感があると感じ、アニメ制作の道を選びました。
しかし、実写映画の制作に参加したいという昔からの夢にも変わりはありませんでしたので、その後は株式会社円谷プロダクションのCG制作チームに所属して『ウルトラマン』シリーズの映画制作にも携わりました。

アニメーション作品と実写映像作品を股にかけながら、さまざまな企業や制作チームに所属されたのですね。

その後は株式会社オー・エル・エム・デジタルで「ダンボール戦機(2011〜13)」シリーズでディレクターとして携わり、東映アニメーションのフルCGアニメ映画『聖闘士星矢 Legend of Sanctuary(2014)』ではリードアニメーターを務めました。
その後退社し、フリーランスに転身しましたが請け負う仕事の規模がどんどん大きくなり、2016年11月にアストロブロスを立ち上げました。

“御社の強み”というお話にもなると思いますが、仕事が途切れない理由や秘訣はどこにあるとお考えでしょうか。

アニメ作品の制作は集団作業なので、一つの作品でも大勢のスタッフやスタジオが名を連ねます。そこで平均的なクオリティラインを大きく超えたクリエイティブを納品できると、一個人、一制作スタジオであってもその作品の“看板”といえる存在になることができます。そうして存在感を発揮できれば「ぜひとも次の作品も参加してほしい」とさらなる発注につながります。弊社はその繰り返しを継続できているのだと思います。

アニメにおけるCGは物語をより面白くするための“ツール”である

アストロブロスはここ2年だけでも、映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー(2022)』、映画『ONE PIECE FILM RED(2022)』、TVアニメ「鬼滅の刃 刀鍛冶の里編」など、業界トップクラスの知名度と人気を誇る作品に名を連ねています。アニメーション作品におけるCGの立ち位置や重要性をどのように見ておられますか。

弊社はCGやそれに伴う技術を扱うスタジオですが、私個人としては、CGや映像のクオリティがどれだけ高くとも、物語が面白くなければ大勢の人に評価される魅力的な作品にはならないと思っています。「絵が綺麗だったよね」とは言ってもらえるかもしれませんが、それは「面白かったよね」とイコールではないかなと。
人の心は理屈だけで測れるものではないと思っています。面白い作品を生み出すには、時間をかけて脚本や物語の見せ方をブラッシュアップしていくほかありません。
そして、CGはそのブラッシュアップのための制作時間を少しでも多く捻出するためのツールであると考えています。手描きには手描きのよさがありますが、同じようにCGにもCGならではの強みがあります。

新入社員に求めるものは“仕事に飛びつく欲”と“明確な目標”

3DCGアニメ制作のかたわら、近年は専門学校などでの講師やセミナーへの登壇も積極的に行われています。

アストロブロスはこれまでスタッフの募集をほとんど行ってきませんでした。しかし、より大きな規模の仕事をこなせるようチームを大きくしたい思いもあり、そのためには若い人を入れるべきだろうと、と考えて請けるようになりました。

御社で働きたい学生や若いクリエイターにはどのようなことを求めますか?

一つは、仕事に対する「欲を持つ」ことです。「自分では実力不足かもしれない」と不安になることもあるかもしれませんが、チャンスは準備ができている時にだけ来るとはかぎりません。どんな時も、物怖じせずチャンスをつかみにいってほしいです。もちろん、こちらとしても丸投げせずにしっかりとやり遂げられるよう、サポートやフォローを随時行います。
そして二つ目は「将来に対する明確な目標を持つこと」です。以前、「ディレクターになるのが夢」という若い子を現場へ帯同させた時期がありました。
目標が明確であればあるほど、こちらも必要なスキルや経験を提供しやすくなります。その子にディレクターとしての心構えやテクニックなども逐次教えると、1年後、単独でディレクターをこなせるまでに成長しました。

クライアントワークとオリジナルのアウトプットの両輪を追求し続ける

佐々木さんはアメコミのヴィランを思わせるような自作のマスクを身につけて専門学校の講演をされるなど、オリジナルのアウトプットも積極的にされているのが印象的です。そこにはどのような思いがあるのでしょうか。

「作り手自身がエンターテイナーでなければ、面白い作品は作れない」が持論なのです。クライアントワークは、共通のソフトでクリエイティブを手がけるなど何らかの制約がかかります。しかし、オリジナルのアウトプットには当然何の制約もないので力を存分に発揮できますし、やりたいことを何でもやれるのも魅力です。クライアントワークにはない手応えを得られるので、こうしたアウトプットも続けていきたいです。
ゆくゆくはスタッフたちにも自分の好きな仮面やマスクなどを作ってもらい、戦隊モノに登場する悪の組織のような集合写真を撮影するのが目標です(笑)。

ヴィラン寄りなのは変わらないんですね(笑)。クライアントワークには、やはり苦労もありますか?

クライアントワークでは足並みをそろえるのが大切ですので、苦労とは感じません。社名であるアストロブロスの“ブロス”はBrothersの省略形で、「クライアントは兄弟分のような存在である」という意味が含まれています。
さまざまな兄弟分(クライアント)と築いた仲間の輪がいつか地球を飛び越えて宇宙にまで達してほしい……アストロブロスという社名には、そんな願いを込めています。

クライアントワークとオリジナルのアウトプットにはそれぞれ異なるよさがあるということですね。それでは、最後に御社を志望する学生へのメッセージをお願いします。

アストロブロスはチャレンジ精神を持つ人を歓迎し、厚くサポートしますので、キャリアを積むのに適した職場だと思います。
社名のロゴデザインにはオリジナルのマスコットキャラクターが描かれていますが、まるで悪だくみでもしているかのような表情には「おりこうさんである必要はない、むしろ怖いもの知らずであれ」という思いを込めています。
ディレクターやスーパーバイザーの経験を持つスタッフが多数所属しており、学べることがたくさんあると思いますのでお見知りおきください。

取材日:2023年8月7日 ライター:蚩尤

株式会社アストロブロス

  • 代表者名:佐々木 涼
  • 設立年月:2016年11月1日
  • 事業内容:3DCGアニメーションの企画・演出・制作
  • 所在地:〒158-0096 東京都世田谷区玉川台2-13-3 玉川台春喜ビル3F
  • URL:https://www.astrobros.jp/
  • お問い合わせ先:info@astrobros.jp

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

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