ゲーム2022.07.20

「面白いこと」を「面白く」できる会社を作る。ゲームやXRなどでクライアントのひらめきをカタチにする

福岡
株式会社ヴァイス 代表取締役社長
Tomotaka Imaji
今治 智隆

ゲームの企画・デザイン・開発・運営をはじめ、AR・VR・XRに関わるコンテンツ開発、さらにはクリエイターの教育・育成事業も展開する株式会社ヴァイス。代表取締役社長の今治智隆(いまじ ともたか)さんは、前職で労働環境に疑問を抱いたことをきっかけに起業を決意し、大学院でMBA(経営学修士)を取得しました。「面白いことをやる」企業を作りたいと語る今治さんに、設立までの経緯やクリエイターに対する思いなどを伺いました。

ゲーミフィケーションを応用し、クライアントのアイデアを実現

事業内容を教えてください。

ゲームを主に開発している会社です。アプリゲームやコンシューマーゲーム、PCゲームのほか、最近流行っているカードゲーム、ボードゲームといったアナログゲームも作っています。最近では特にVR、AR、MRといったXRに注力をしていますね。また、何かをするとポイントが貯まるゲームのように仕立てたシステムの企画開発なども行います。当社は、デザインから開発までワンストップでやれることが強みです。ゲームの利便性や良さをゲーム以外の分野に活かしていく「ゲーミフィケーション」を応用して、ビジネス系のシステム開発も請け負っています。
会社としての方針は「面白いことをやる」。ただゲームを作るのではなく、ゲームを作りたい人を支えていきたいんです。例えば、手術のシミュレーションができるバーチャルな世界の開発といった、世の中の役に立つものを考え実現していくことなんか楽しいですね。そこで、ゲームの作り方がわからない異業種の方たちに、ゲーミフィケーションの文法を伝える活動や、ゲーム開発の人材育成事業として講義活動を行っています。また最近では企業の新人教育で、Javaなどのプログラム言語について学習するIT研修もやっています。ただ、例え話が全部ポケモンになっちゃったりしてるんですけど(笑)。

スタッフはどのような方たちが在籍していますか?

プログラマー、エンジニア、ゲームプランナー、コンテンツプランナーといった専門分野を強みとするスタッフが約20人在籍していて、それぞれの案件に最適なチーム編成で対応しています。

今力を入れている事業はありますか?

今あるメタバースの流れとは、ちょっと別物のバーチャルとリアリティが融合したプラットフォームづくりに力を入れています。詳細はまだお話できませんが、それぞれが独立したコンテンツをシームレスにつなぐ仕組みです。

労働環境への疑問がきっかけで、MBAを取得、そして起業へ

子供の頃からゲームがお好きだったんですか?

好きというよりも、ゲームはもうずっと一緒にあるものですね。子供の頃、僕の家にはファミコンがなかったので、友達の家でやらせてもらっていました。ゲームは作るのもやるのも好きですが、やるのは今も上手じゃなくて。友達がプレイするのを見ているのが楽しいですね。

ご出身は千葉県だそうですね。福岡に来たきっかけを教えてください

大学生の頃は就職氷河期で、就職活動は厳しかったです。でもなんとかゲーム関連の会社に入りたくて、インターネットで「ゲーム会社」を検索して上から順番に履歴書と企画書を送っていきました。当時は検索結果に50社くらい出てきたかな、途中で力尽きて30 社ぐらいしか送れませんでしたが(笑)。連絡をいただけたのは2社。そのうちの1つが福岡にあるゲーム会社でした。その会社から「採用を決めたいけど、プログラムかけるか」と聞かれて。本当はできなかったんですが、かけると虚勢を張って内定をもらいました(笑)。そこから一生懸命勉強して、入社までにプログラムをかけるようになったので、大丈夫だったんですけどね。今、仕事で就職関係の方たちと話す機会が結構あり、このエピソードをよく話しています。入社前にできないことでも、やる気があるなら入るまでにできるようになればいいと思うんですよ。

MBA取得は、何がきっかけだったのでしょうか。

友人が倒れたことがきっかけでした。恐らく過労だったのだと思います。僕自身、労働環境に疑問を持ちながらも、面白いものを作るために頑張って働いていました。でも環境が改善される動きもなく、ますますつらい状況になるんじゃないかと感じていました。将来もし自分が会社を作るなら、そのような問題をクリアしたいと思ったんです。労務関係をきちんと知ろうと考え、MBA取得のために九州大学の大学院に入りました。そして、学業に専念するために会社を辞めました。

実際に経営を学んでみていかがでしたか?

労働法制は税制度も含めて、学べば学ぶほどつまらないことをし過ぎていると感じましたね。だから起業するなら「つまらないことを全部辞めた会社にしたい」と思いました。大学院に通い始めて1年過ぎた頃に出資してくれる方とご縁ができて、大学のバックアップを受けて会社を立ち上げました。

社長のおっしゃる「つまらないこと」とはどのようなことでしょうか?

クリエイターの皆さんは、面白いことを一生懸命作っている人たちなのに、日々の生活や給与、休日といった待遇面は何も優遇されていない。そもそも労働法制がクリエイターに向いていないんです。締め切りなどの関係でどうしても夜通し働かないといけない期間があるクリエイターもいるのに、そういう人たちのことは無視している。労働者でもあるクリエイターを立場の弱い状態に置いて、経営者はよく平気だなと許せなくて。クリエイターの皆さんは面白いものを作ることにプライドを持っていると思いますが、そのためになんでつまらない苦労をしなきゃいけないんだろうと思うのです。割に合わなくても楽しいからやっている、という人がたくさんいるという現状をなんとかしなきゃいけない。
そう思いながらもまだ、理想通りにできない現実があってつらいです。報酬の面も含め、何か労に報いることをしたいです。せめてものと思って、スタッフとご飯を食べに行ったら「好きなものをいくらでも食べていいよ」と言って、気兼ねせず注文してもらっています。また将来的には水曜日を定休日として、週4日勤務にしたいとも思っています。実現となるとなかなか難しいんですけどね。 僕の根幹には、楽しいことを楽しくやるためのカタチを作りたい思いがあって、その挑戦はこれからも続きます。本当は労働法制のことだけやっていたいぐらいの気持ちです。そう考えると僕は起業家の中でも、社会変革を求めて起業したタイプなのでしょう。

皆がいきいきと働ける環境づくりを目指して

経営者として大切にしていることは何ですか?

素直で正直に、嘘をつかずに誠実であることです。うまくいかない状況になってしまうことはよくありますが、そんなときは正直で素直であることだけが、唯一相手に許してもらえる、納得してもらえる方法だと思っています。言い訳してなんとか逃げることはできてもうまくいっていない事実は変えられないことを、いつも謙虚な気持ちで心に留めておかないと結局駄目になってしまうと思うのです。

社内の雰囲気はどのような感じですか?

男性しかいないので、男子校みたいな感じで楽しくやっています。大人しい男子校かな (笑)。 会社設立は2011年8月31日。本当は 8月32日が良かったんですが。夏休みの宿題が終わらない感じをどうしても出したくて。うちの会社は夏休みに友達の家に遊びに来ているような雰囲気があります。一部のスタッフなんかは、本当にずっと会社で遊んでいるような人もいます。「いつになったら帰るんだ? でも働いてないからいいか(笑)。」みたいな感じです。

優しい会社ですね。

出社時間はなるべく自由にしています。朝9時から夕方5時まで仕事をしたら、自由に過ごせる時間はもう休日しかないですよね。僕は体力があまりないため土日は動けなくなってしまうので、平日を1日中拘束されたらもう何もできなくなってしまいます。そこで、コアタイム14時から16時の7時間労働完全フレックス制にしています。裁量に任せていますが、僕などは午前中はプライベートの用事を済ませて昼食後に出社していますね。

個人的には理想の働き方です(笑)。

午前中カフェでお茶でも飲んで、映画を一本見て、昼過ぎに出社して、午後8時に退社して、その後は自宅で好きなことをやれたらいいと思いませんか。僕らの仕事はインプットがないとアウトプットできないと思うんです。知らないことが多ければ多いほど苦労します。発想やひらめきって何かと何かを組み合わせたり、何かの中に何かの要素を外して別の新しいものを入れたり、取捨選択の作業なんですよ。それも選択肢がないとできませんよね。だからスタッフに「お金払うから毎日2時間ゲームして」ということもあります。ゲームや映画、本、漫画とかをインプットしておくと、発想やひらめきがある日おりてくると考えているので、インプットが大事だと思っています。

今後はどのような会社にしていきたいですか?

引き続き「面白い」をキーワードに、皆が生き生きと活躍の場を広げられる会社を作っていきたいです。人から「仕事は何をしてるの?」と聞かれたら「無職です」と答えてしまうような、仕事を仕事と思っていないくらいがちょうどいいと思っています。クリエイターが余計なことをせずに、自由な活動をしながらもきちんと対価を得て、楽しんで生活できる会社がいいですね。あと、食堂の食事を無料で提供できるようにしたいです。今はお菓子とジュース飲み放題くらいしかできていませんけど(笑)。

最後に、地方で働きたいクリエイターにメッセージをお願いします。

どこで働いてもいいと思います。リモートをうまく利用すれば、地方で働く選択肢もあって、家族の都合も叶えやすいと思いますし。何かをやっていくにはステークホルダー(利害関係者)への配慮が必要じゃないですか。周りにいる人たちが大事なんです。面白いことをやるために必要な知り合いがいるところで「この場所が面白い」「ここでやれることがいっぱいあるんだ」という感覚を大事に動けばいいと思います。

取材日:2022年5月31日 ライター:中島 敬子

株式会社 ヴァイス

  • 代表者名:今治 智隆
  • 設立年月:2011年8月
  • 資本金:540万円
  • ゲームに関する企画・デザイン・開発・運営、AR・VR・XRに関わるコンテンツ開発、ウェブサイト・ウェブサービスの企画・開発・分析、クリエイターの教育・育成、アプリケーションサービスの開発・受託開発
  • 所在地:〒812-0044 福岡市博多区千代1-20-31 福岡県千代合同庁舎7階
  • URL:https://vice.co.jp/

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

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