アニメ2022.04.13

名古屋発のTVアニメ「シキザクラ」制作に貢献!パチンコ機器の設計・開発からアニメ挑戦のリアル

名古屋
株式会社K&Kデザイン 代表取締役
Kikkawa Shuji
吉川 秀司

パチンコ機器の設計・開発で長年培ってきたデザインセンスや技術・ノウハウをアニメの世界に転換し、名古屋発のTVアニメ番組「シキザクラ」の成功にも貢献した株式会社K&Kデザイン。代表の吉川秀司(きっかわ しゅうじ)さんと「シキザクラ」の制作進行を担当した中心メンバーである取締役の川上博(かわかみ ひろし)さん、岩瀬悠(いわせ はるか)さんに、起業のきっかけやアニメ挑戦のリアル、そこから広がったビジネスについて伺いました。

「絵で食べていく」ために挑戦を重ねた日々

吉川代表の子供時代の夢を教えてください。

吉川:

2〜3歳の頃に、両親から絵を褒められたことがきっかけで“絵描きの呪い”にはまってしまいまして(笑)。保育園からは狂ったように絵や漫画を描き続けました。 宮崎で生まれ育ち「田舎で絵で食べていくのは難しい」と高校時代に気づき、とにかく都会に出ようと名古屋で就職しました。

その後、起業までのストーリーをお話いただけますか?

吉川:

名古屋の自動車工場に就職し、工員として旋盤の仕事をしながら、夜は寝ずに絵の勉強をしていました。工場で2年ほど働いた後、あるパチンコメーカーのデザイン部門の内定が決まって、大喜びで転職しました。寝ずに描いていた絵を気に入ってもらえたのです。
その後別のデザイン事務所でパチンコのパーツデザインをしたり、パチンコ機器の二次サプライヤーでパチンコ台の設計に携わったりした後、33歳で独立しました。ある部品メーカーの顧問を務めていたデザインの師匠から「仕事を出すから独立しなさい!」と言っていただいたのが後押しになりました。
個人事業主として5年ほど活動した頃に川上が入社し、それを機に2006年に法人化しました。

吉川さん

川上さんは、K&Kデザインに入社されるまでは何をなさっていたのですか?

川上:

私はパチンコ関連のデザイン経験はなく、前職ではトヨタ「プリウス」の開発設計に携わっていました。
もともとクルマとバイクが大好きで、自分で描いたエアロパーツのデザイン画でパーツ会社に就職が決まり、その後偶然プリウスの開発メンバーに選ばれました。開発の目処がたった頃に吉川さんと出会い、K&Kデザインに転職することに。

会社名「K&Kデザイン」の由来は?

吉川:

「K&Kは吉川さんと川上さんという意味ですか?」とよく聞かれるのですが、実は川上が入る前から「K&Kデザイン」という屋号で仕事をしていました。当時のK&Kは私と妻の2人のK。川上の入社後に妻が会社から離れたので、吉川と川上のK&Kになりました。
社名を考えてくれたのは、先ほど話したデザインの師匠でした。当時「どういう意味かわかるか?」と問われた際に「Kは自分であり、妻であり、陰と陽の二極を表しているのでは」と答えたら「その通り!さらに&(アンド)をつけることで三位一体を意味するんだよ」と教えてくれました。

重ねてきた技術をアニメの世界に転換する

これまで取り組んでこられたビジネスについて教えてください。

吉川:

独立時からパチンコ業界のデザインを数多く手がけ、順調に成長してきました。元々私も川上もアニメや特撮が大好きで、アニメの版権を使うことが多いパチンコのデザインを通じてアニメ業界とのつながりが生まれ、現在はアニメ関連のビジネスも展開しています。

川上:

遊戯機器のデザインには、漫画的な要素はもちろんプロダクトデザインや色のセンス、さまざまな技術や知識が必要です。それをアニメの仕事にもうまく技術転換できそうだと考え「シキザクラ」の話が出たときにチャンスだと感じて思いきって挑戦してみました。

アニメ「シキザクラ」で御社はどのような役割をされたのでしょうか?

岩瀬:

「シキザクラ」では、川上と私が中心となって制作進行を行いました。「シキザクラ」には作画と3DCGのパートがあり、弊社は作画を担当しました。また、キャラクターデザインやプロップデザインと呼ばれるキャラクターが持つアイテムや小物などのデザインも行いました。加えて川上が持っているスマホカバーなどの関連グッズやポスターデザインにも携わっています。

川上さん

川上:

「シキザクラ」は、最初私たち2人だけで進行していたのですが、徐々に会社全体を巻き込んで最後はスタッフ総出で取り組みました。
なにしろ業界の慣習も知らない状態からのスタートで。ゴールに向かってがむしゃらに走りまわり、時には関係各所からお叱りをいただきながら根性で乗り切りました。

無事に放送が終わった時の気分は、いかがでしたか。

岩瀬:

1話1話を完成・納品するごとに手応えを感じることができました。
名古屋での放送は終わりましたが今は青森で放送中です。グッズ展開やヒーローショーなどもあるので私の中では「シキザクラ」は今もずっと続いている感覚です。

川上:

プロジェクトのスタート前は放送が楽しみでした。ところが実務作業が想像以上に大変で極限状態になり、いざ放送する頃には「もう見たくない」くらいの心持ちでした。辛いことが多すぎて新聞のテレビ欄に「シキザクラ」の名前を見るだけで泣きそうになるくらい。(笑)
しかし、エンドロールで一緒に頑張った仲間たちの名前が出てくるのを見た時はグッときましたね。

吉川:

個人的にはとても楽しかったのですが、経営面で大きなマイナスになってしまったので放送のスタートで返済が始まった感じですかね。(苦笑)
ただずっとパチンコ業界でビジネスを進めてきたので、別業界へのチャレンジは会社の未来につながる大きな学びになりました。

岩瀬さん

「シキザクラ」を経験して変わったことはありますか?

川上:

「シキザクラ」をきっかけに、映像制作の依頼が増えました。以前は名古屋でアニメーションを使ったCM制作の環境がなかったので「名古屋でもできるんだ!?」という驚きとともに、とても喜んでもらえます。アニメ以外の映像の依頼も増え、新しいチャンスが増えました。

絵を描きたい人が集まってくる会社に

御社のHPメッセージには「いつも挑戦する。」という言葉が掲げられていますね。

吉川:

私自身は挑戦が苦手で、気づくと安定を求めてしまう自分がいます。しかし人生を振り返ってみると、農業高校出身なのに絵の世界に挑戦したり、急に独立したり、アニメ業界に飛び込んだりと挑戦の連続でした。いきあたりばったりかもしれませんが、未知の世界に飛び込むには、寝食を忘れるほど努力し、挑戦するしかないんですよね。

HPの「デザインは色々なモノの設計図であり、始まりの部分」だと考えている、という部分にも惹かれました。

吉川:

「デザイン」を日本語にすると「設計」になります。まさに始まりとなる仕事だけに、よく調べあげてきちんと仕込みをして、そこからアウトプットするのが大事だと思っています。

川上:

私たちがやっている仕事は「ゼロをイチにする」ことです。何かをカタチにするには何らかのイメージが必要ですし、みんなの想いや意見を拾い上げ、点と点を結ぶのがデザインの役割だと思っています。

これからのビジョンを教えてください。

吉川:

組織として拡大するのか、事業ごとに分散させるのかは検討中ですが、ずっと変わらないのは「絵を描きたい人が集まってくる会社にすること」ですね。一番楽しいと思える仕事を存分にできる会社にしていきたいです。

川上:

愛知県のクリエイターが集う秘密基地みたいな存在になったらいいですね!
アニメ以外にもVTuberの開発・運用など新たな成果もありますし、これまで使ってこなかったソフトウェアへの挑戦や新しいテクノロジーの導入も進めているので、社員それぞれが絵やデザインに加えて得意分野を身につける未来もおもしろそうです。

最後に、クリエイターにメッセージやアドバイスをお願いします。

岩瀬:

学校ではゲームのデザインを学んでいたので、そちらの道に進む予定でした。
吉川さん川上さんと出会って話を聞いていくうちに「パチンコのデザインも楽しいかも」と感じて飛び込むと、入社1年目で思いがけずアニメの仕事に携わることになりました。正直に言うと「アニメの仕事はしたくない」という気持ちでしたが、やってみると今後役に立つことばかりでした。
自分にはこれしかないという固定概念を持たず柔軟に、しっかりと話を聞いて好奇心やフィーリングで働く場所を決めることで、未来を開けることがあると思います。

川上:

クリエイターは尖ってなんぼだと思っています。チャンスはいつ来るかわかりません。チャンスが来たときにザクっと刺して確実に手に入れられるよう、好きなものを深く追求して、自分の得意分野を常に磨いてください。

吉川:

仕事で爪痕、残したいですよね。クリエイターは楽しんでなんぼでもあります。私自身、楽しみながら仕事に取り組めているつもりですが、まだまだ修行は続きます(笑)
私にとってはアイデアを思いついた瞬間の快感が仕事の原動力になっています。描きながら「最高!どうしてみんな気づかなかったの!?」と思えるのがクリエイターの醍醐味ですよね。

取材日:2022年2月14日

株式会社K&Kデザイン

  • 代表者名:吉川 秀司
  • 設立年月:2006年6月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:遊技機器及びその周辺機器の開発・設計業務ならびに試作品の作成、遊技機器関連商品の企画・デザイン業務、前各号に付随関連する一切の業務、映画・テレビアニメーション作成に関わる業務及び3DCG作成、各種キャラクターデザイン・イラストレーション・グラフィックデザイン等
  • 所在地:〒468-0058 名古屋市天白区植田西2丁目1506 KDビル1階
  • 電話番号:052-875-4956
  • URL:http://kandk-d.com
  • 連絡先:

  • 主な制作実績:
    【シキザクラ】
    https://shikizakura-anime.com

    【Ario】
    Dream声優オーディション2020オリジナルアニメーション
    https://dream-va2.com/original-animation

    Dream声優オーディション2021オリジナルアニメーション
    https://dream-va2.com/original_animation_2021

    棚照結神 擬人化プロジェクト
    https://tanatera.com/

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