アートを“浴びる”、新感覚体験。「レーヴ・デ・リュミエール」に見るデジタルアートの可能性
ビジネスソリューション本部 イベント事業局 TDP事業センター
2026年3月、有明に複合型エンターテインメント施設・東京ドリームパークが完成しました。そして6月、その8階に新たにオープンしたのが、没入型デジタルアート空間「RÊVE DES LUMIÈRES(レーヴ・デ・リュミエール(光の夢))」(以下、「レーヴ・デ・リュミエール」)です。フランスのプロヴァンスで発祥し、世界9拠点で展開されている「リュミエール・シリーズ」の記念すべき10拠点目として注目されています。
今回は、同企画のプロデューサーである、株式会社テレビ朝日 イベント事業局 TDP事業センターの小倉啓輔さんへインタビュー。東京に「リュミエール・シリーズ」を誘致した理由、空間設計や演出などのこだわり、今後デジタル技術の進化によってエンターテインメントがどう変化していくかなど、さまざまな角度からお話をうかがいました。
デジタルアートを通して、美術に親しむきっかけをつくりたい

「レーヴ・デ・リュミエール」は、どのような体験ができる施設なのでしょうか?
「“見る”から“浴びる”へ」をコンセプトに、光と音を融合させた最先端のデジタル技術によって、映像と音楽で本格アートを体験する施設です。“見る”のではなく、“浴びる”ようなアート鑑賞を実現しています。ここはフランスのプロヴァンスで発祥したデジタルアート「リュミエール・シリーズ」の世界10拠点目で、シリーズとしては日本初上陸です。
「リュミエール・シリーズ」の10拠点目として、東京ドリームパークに「レーヴ・デ・リュミエール」をオープンした経緯をお聞かせください。
東京ドリームパークは、コンサートホール、舞台を上演する劇場、そして展示場からなる複合型エンターテインメント施設です。2つある展示場のうち、1つを常設型にしようと考え、どのようなコンテンツを導入しようか検討していたときに出会ったのが、「リュミエール・シリーズ」でした。
9施設で累計来場者数が2150万人を超える人気コンテンツであることはもちろんですが、シリーズを企画・展開しているフランスのCuluturespaces社と話をした際、その想いに共感したことが東京誘致の決め手になりました。今、「芸術の都」と呼ばれるパリでさえ、美術館へ足を運ぶ人が減っています。そんな中で、気軽に楽しめるデジタルアートを通してアートに触れるきっかけをつくろうというのが、彼らの考えでした。

アートに興味を持ったら、「本物の作品を見てみたい」という気持ちが芽生えるでしょう。その先に美術館へ訪れる選択肢が生まれるはず。デジタルアートを、美術の世界や美術館への架け橋にしたいと取り組んでいる彼らの姿勢に賛同しました。東京ドリームパークも、そんな何かのきっかけになるような場所でありたい。そう考えて、「リュミエール・シリーズ」の誘致を決めました。そして、クリエイターやお客様の「夢」が詰まった空間をつくろうと、「レーヴ=夢」という名を施設名に付けたのです。
1500㎡の空間に、106台のプロジェクター。ワンピクセルまでこだわった没入空間

「リュミエール・シリーズ」の中でも、「レーヴ・デ・リュミエール」にしかない特徴を教えていただけますか?
まず、空間そのものが「レーヴ・デ・リュミエール」のためにつくられていることです。昨年、ドイツのハンブルクにオープンした「ポート・デ・リュミエール」以外はすべて、潜水艦の工場跡地や鋳物工場の跡地など、歴史的な建物をリノベーションし、デジタルアート施設として生まれ変わらせています。それとは違い、この施設「レーヴ・デ・リュミエール」のためだけに設計して設けた専用施設ですから、没入体験の深さが違うと自負しています。
また、第1弾の上映プログラムである『Van Gogh ゴッホの傑作たち:ひまわり、星月夜、花咲くアーモンドの木の枝…』では、一部に日本オリジナルの映像を加えています。浮世絵をテーマにした映像です。ゴッホは、浮世絵に大きな影響を受けていたことが知られていて、貧しい暮らしの中でも多くの浮世絵コレクションを所蔵していたそうです。

舞台演出などで最近よく用いられている、「紗幕」と呼ばれる薄い布製の幕を効果的に使っているのも日本だけ。広い空間の中に、スパイラルシリンダーという大きな円柱型のスペースを設けているのですが、この円柱を紗幕で制作しました。デジタルアートが投影された紗幕が何層にも重なっていて、まるでアートの中に迷い込んだような感覚が味わえます。他国では、円柱は金属製で層にはなっていません。日本にしかないこのスペースでより一層、“アートを浴びる”体験を楽しんでほしいですね。

訪れた人が深い没入体験を味わうために、空間設計や映像、音楽などではどのような工夫をしていらっしゃいますか?
「レーヴ・デ・リュミエール」のために設計した専用施設ですから、天井の高さ、壁の色、音の反響、円柱の位置、動線など、約1500㎡の空間の全てが工夫ポイントです。中でも手がかかっているのは、映像技術ですね。絵画作品の色味を美しく再現するために、106台のエプソン製高精細プロジェクターを使用して、投影しています。
パリの技術者とデジタル部門を任せた日本企業の担当者がとことんこだわって、映像の調整に半年もの時間を要しているんです。彼らいわく、「ワンピクセルまで色の誤差を合わせた」とのこと。プロジェクター1台1台で微妙に異なる投射の色味を、すべて合わせるためにミリ単位で投射距離などを調整して仕上げています。圧倒的な精度を誇る映像美を、ぜひ体感してください。
誰もが知るゴッホの名作を、立ったり座ったり、全身で味わってほしい

なぜ、プログラムの第1弾を飾るアーティストとして、ゴッホを選んだのでしょうか?
美術の世界への架け橋になるようなコンテンツを目指すにあたって、まずは誰もが知っているアーティストを取り上げようと思いました。多くの人がゴッホの名前やいくつかの作品は知っているけれど、実際に目にしたことがある人は少ないでしょう。だからこそ、最初の1歩として美術館へ行ってみようという気持ちが湧きやすい、知名度が高いアーティストの世界に触れてもらおうと思ったのです。

ゴッホは個人的にも好きなアーティストです。とくに気に入っているのは、ブルーの背景に薄いピンクの花を描いた『花咲くアーモンドの木の枝』。ゴッホと言えば、『ひまわり』のイエローを思い浮かべる人が多いでしょうが、切なげな雰囲気のあるこの絵に惹かれます。生前はまったく売れなかった自身の絵が、デジタルアートになっているのを見たら、ゴッホはきっと驚くでしょうね!
広い空間の中で、どこから見るのがオススメですか?
私自身は、階段を少し上がったところにあるメザニンという中二階から全体を見渡すのが好きですね。床に投影されたアートや、他のお客さんが座ったり歩いたりする様子も含めて俯瞰して見られるので、この場所ならではの面白さがあると思います。1階の床に座って天井を見上げるように見ると、アートに包まれているような感覚をより強く感じることもできますよ。見る場所や見方によって感じ方が違いますから、立ったり座ったり、歩き回ったり、いろいろな楽しみ方をしてみてください。

今後は、ほかのアーティストの作品も取り上げる予定ですか?
そうですね。まだどのアーティストとは決まっていませんが、来年以降どこかのタイミングで新しいプログラムを上映する可能性はあります。また、この施設の良さを生かして、「レーヴ・デ・リュミエール」以外の映像作品を上映するのもおもしろいのではないかと、思案しているところです。音楽のアーティストのデジタル作品やアニメーション、花火大会の生中継といったように、美しい映像と最高の音響の中で鑑賞するにふさわしいものを検討していきたいですね。
リアルとデジタル、双方の良さを楽しみながらこれまでにない体験を

デジタル技術の進化が著しい中、デジタルアートに限らず「没入体験」のコンテンツは、今後どのように変化していくと思いますか?
紗幕を使った演出が生まれたことで、単に映像を壁やスクリーンに映すだけではない世界観が実現できるようになっています。この演出技術はこれからますます進化して、より没入体験を深いものにしていくはずです。たとえば、演劇の世界では紗幕を用いることで「魔法を使う」とか、アニメでいう「必殺技を使う」といったSF的な演出をリアルに表現できるようになりつつあります。技術の発展によって、コンテンツの演出はどんどん変化していくのではないでしょうか。
デジタル技術の発展によって、人々のアートの受け取り方は変わると思いますか?
ひとつ言えるのは、デジタルがリアルを超えることは絶対にないということです。そして同時に、リアルがデジタルを超えることもないと思っています。リアルとデジタルは、どちらかがどちらかを浸食することなく、まったく別の領域として続いていくはずです。そして、双方の間には「架け橋」があり、体験者である私たちが行ったり来たりして楽しむ時代なのだと思います。
スマホで音楽を聴くことはできますが、ライブ会場に行って生歌を聴きたいですよね。AIは悩みに答えてくれますが、リアルな友達がいてほしいですよね。それと同じではないでしょうか。デジタル技術が発展すればするほど、リアルの価値もどんどん上がっていくはずです。 「没入体験」は、リアルでありながらデジタルの世界を楽しむもの。浸食し合わないけれど、うまく融合して、これまでにない体験をもたらしてくれると思います。
取材日:2026年6月8日 ライター:佐藤 葉月 スチール:島田 敏次 動画編集:鈴木 夏美

■施設概要
RÊVE DES LUMIÈRES powered by EPSON
(レーヴ・デ・リュミエール パワードバイ エプソン)
所在地:TOKYO DREAM PARK 8階(東京都江東区有明3丁目3番8号)
オープン日:2026年6月12日(金)
営業時間:10:00〜19:00
※営業時間が変更となる場合や休館日が生じる場合があります。ご来場前に必ず公式サイトをご確認ください。
公式サイト:https://tdp.tv-asahi.co.jp/reve-lumieres
技術支援パートナー:エプソン販売株式会社
主催:テレビ朝日、ぴあ
企画:Culturespaces STUDIO
後援:在日フランス大使館
協賛:ヤマハサウンドシステム株式会社
”見る”から”浴びる”へ、をコンセプトに光と音を融合させた最先端のデジタル技術によって本格アートを表現する「RÊVE DES LUMIÈRES(レーヴ・デ・リュミエール(光の夢))」。五感で体験するこの圧倒的な没入空間は、誰もがアートを身近に感じ、その深みを再発見するきっかけを提供します。デジタルアート文化を牽引してきたフランスの「ATELIER DES LUMIÈRES(アトリエ・デ・リュミエール)」の系譜を継ぎ、Culturespaces が世界展開するリュミエールシリーズの 10 拠点目として、ついに日本初上陸。フランス語の“RÊVE”=“夢”、“LUMIÈRES”=“光”を組み合わせた施設名が意味する通り、まさに「光の夢」のような幻想的な世界観をご体験ください。
■TOKYO DREAM PARK(東京ドリームパーク)とは
テレビ朝日のメディアシティ戦略の中核を担う複合型エンタテインメント施設。「全ての価値の源泉はコンテンツにある」という理念のもと、自社IPなどを活用したリアルイベントに加え、様々なパートナーの皆様と共に多様な展開ができる新たなプラットフォームとして、2026年3 月、有明に誕生。施設内には、多目的ホール・劇場・イベントスペース・屋上広場・レストラン・スタジオなどを備え、エンタテインメントとテクノロジーが融合する新しいイノベーションを起こす拠点を目指します。







