テーマパークの裏側を支えるIT。ジャングリア沖縄の「体験」を設計する仕事とは

Vol.251
株式会社ジャパンエンターテイメント ジャングリア沖縄 ITディレクター
Tomohito Higa
比嘉 倫士
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ダイナソーサファリ

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スパ ジャングリア

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やんばるトルネード

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ジャングリア スプラッシュ フェス

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ファインディング ダイナソーズ

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やんばるフレンズ

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トレジャー ファイト

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パノラマダイニング

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ジャングリア ナイト フェス

テーマパークを訪れたとき、多くの人の関心はアトラクションやショー、食事などの体験そのものに向かいます。しかし、その体験の裏側では、ネットワーク、チケット管理、POSシステム、パークアプリ、社内システムなど、さまざまなITが稼働し、パークの運営を支えています。
沖縄北部に誕生したテーマパーク「ジャングリア沖縄」(2025年7月開業)。その運営を担う株式会社ジャパンエンターテイメントで、ITを統括しているのが、ITディレクターの比嘉倫士さんです。これまでWebサービス開発やプロダクトマネジメントに携わってきた比嘉さんは、パーク内のインフラからゲスト向けアプリまで、ITに関わる領域のほぼすべてを担当しています。
テーマパークの体験を支えるITは、どのように設計されているのか。ジャングリア沖縄立ち上げの舞台裏や、ITが生み出す体験の設計について話を聞きました。

ゼロからテーマパークITをつくるという挑戦

現在担当されている業務について教えてください。

当社はテーマパーク「ジャングリア沖縄」を運営する会社で、私はIT部門の責任者を務めています。ITという言葉はとても広い概念ですが、テーマパークの中で「これはITだ」と思われるものは、基本的にすべて私たちの領域だと考えています。

具体的には、パーク内のネットワーク環境の整備から始まり、チケットシステム、物販や飲食のPOSシステム、業務用の基幹システムなどがあります。さらに、従業員が仕事をするためのIT環境やセキュリティ、グループウェアなど、いわゆる情報システム部門の役割も担っています。

加えて、ゲスト向けのパークアプリの開発と運用も担当しています。アプリは私が中心となって開発を進めてきたプロダクトで、ゲストがパークを効率よく楽しむためのツールとして設計しています。

ITの領域は非常に広いため、一人ですべてをカバーすることは当然できません。ネットワーク、アプリケーション、基幹システムなど、それぞれの分野に強みを持つエンジニアがチームにいて、役割分担しながら対応しています。その中で私は、アプリ領域を推進しながら、IT全体の設計と意思決定を担う立場になります。

ITチームはどのくらいの規模なのでしょうか。

現在は私を含めて5名です。他のテーマパークのIT部門の方と話をすると、数十名、多いところでは100名以上の体制を持っているケースもあります。それと比べると、かなり少人数の体制だと思います。

ただ、私たちの役割は「すべてを自分たちで運用する」ことではありません。テーマパーク全体のITの構成や仕組みを設計し、ベンダーやパートナー企業と連携しながら運用を回していくことが重要になります。少人数だからこそ、個別の技術だけを見るのではなく、テーマパーク全体を俯瞰して「ITがどこで価値を発揮できるか」を考える必要があります。その設計こそが、私たちの役割だと思っています。

立ち上げ当初はどのような状況だったのでしょうか。

私が入社したとき、IT部門はまだ一人しかいませんでした。会社全体の人数も20人に満たない状況で、組織としても立ち上がったばかりでした。そのため、「このシステムをつくる」という明確なミッションから始まったわけではなく、さまざまなことが同時に動き始めたという感覚でした。

まず取り組んだのは、働く環境の整備です。これから多くのメンバーが入社してくるので、情報システムとしての基盤を整える必要があります。グループウェアの導入、セキュリティ環境の構築、PCやアカウント管理の仕組みづくりなど、いわゆる情シスの基盤整備にかなり時間を使いました。

テーマパークというと華やかなイメージがありますが、実際にはチケット管理、物販、飲食、スタッフの業務など、さまざまな業務があり、その多くがITとつながっています。それらの仕組みをゼロから設計していくことは、大きな挑戦でした。

もう一つ大切にしていたのは、現場との距離を近く保つことです。テーマパークの価値を実際に提供しているのは現場です。IT部門が現場から遠い存在になってしまうと、サービスの改善につながらないと感じています。そのため、困りごとがあれば気軽に相談してもらえる雰囲気をつくることを意識していました。課題が大きくなる前の段階で相談を受けることも多く、早い段階で問題を解決できたケースも多かったと思います。

ゲスト体験を支えるアプリとアジャイル開発

テーマパークのITならではの面白さはどこにありますか。

これまで私はWebサービスの開発に関わる仕事をしてきました。そこでは、ユーザーが目の前にいない環境で、どうやって価値を提供するかという課題に向き合ってきました。一方、テーマパークではゲストが実際に目の前にいます。パークに行けば、自分たちがつくった仕組みがどのように使われているのかを見ることができます。

例えば、アプリで待ち時間を確認している様子や、マップを見ながら移動している様子を見ると、「自分たちのつくった仕組みが体験の一部になっている」と実感できます。これはWebサービスとはまた違う面白さだと思います。

パークアプリは、ゲストだけでなく現場スタッフも業務の中で使うことがあります。つまり、ゲストと現場の両方をつなぐツールになっているんです。その両方のユーザーを意識しながら設計するところが、テーマパークITの特徴だと思います。

アプリ開発はどのように進めているのでしょうか。

アプリ開発では、かなりアジャイル(変化に素早く適応しながら価値を生み出す考え方)な開発を行いました。初期リリース以降、20回以上のアップデートを行っていて、多いときは週に2回リリースすることもありました。テーマパークは、実際に運営してみないと見えないことがとても多いんです。例えば、待ち時間の表示方法や導線の見せ方など、現場のオペレーションによって最適な形が変わってきます。

そのため、最初から完璧な仕様をつくるというより、実際の運営を見ながら改善を繰り返す形で進めています。スクラム開発を取り入れ、チーム全体でアイデアを出しながら改善を回していきました。

ただ、常に意識しているのは「テーマパークの主役はアプリではない」ということです。主役はあくまでアトラクションやショー、食事などの体験そのものです。アプリはそれを効率よく楽しむためのサポートツールであるべきだと思っています。体験の邪魔をせず、むしろ体験をスムーズにする存在であること。そのバランスをどう設計するかが、テーマパークアプリの難しさであり面白さでもあります。

テーマパークという巨大なプロジェクトで、ITの役割をどう捉えていますか。

テーマパークは、単にアトラクションをつくるだけの事業ではありません。チケットの購入、来場体験、園内の移動、飲食、物販など、すべてが一つの体験としてつながっています。その体験を裏側から支えているのがITです。

だからこそ、システムを個別につくるのではなく、「パーク全体の体験をどう設計するか」という視点が重要になります。ITの仕組み一つで、来場者の満足度も運営の効率も大きく変わります。そうした意味で、ITは裏方でありながら、テーマパークの体験を形づくる重要な役割を担っていると感じています。

沖縄から未来をつくるITへ

 

ダイナソー サファリ

これまでのキャリアが、現在の仕事にどう生きていますか。

プロダクトマネジメントの経験は、かなり生きていると感じています。テーマパークは非常に大きなプロジェクトなので、ITだけを見ていても全体像は見えません。パーク全体の中でITがどこに価値を提供できるのかを俯瞰して考える必要があります。その中で重要になるのが、優先順位です。

やりたいことは本当にたくさんあります。来場者向けのアプリやチケット、データ基盤、社内のITインフラ、セキュリティなど、ITが関わる領域は非常に広い。ただ、それらをすべて同時に進めることはできません。限られたリソースの中で、どこに投資するべきかを判断していく。その意思決定の部分は、これまでの経験が大きく生きていると感じています。

このプロジェクトに参加した背景には、どのような思いがあったのでしょうか。

私自身の思いも大きいですね。私は沖縄出身で、ITを通じて沖縄の産業や雇用に貢献したいという思いを、以前から持っていました。そのため、東京や大阪、海外などで経験を積んできましたが、いつかは沖縄に関わる仕事をしたいと考えていたんです。

そんな中で「沖縄にテーマパークをつくる」という話を聞きました。しかも、そのプロジェクトの中でITが重要な役割を担うと知ったときに、「これは自分が関わるべき仕事かもしれない」と感じました。

ご自身のキャリアと、このプロジェクトのビジョンが重なったのですね。

そうですね。テーマパークという事業そのものというより、「沖縄から日本の“未来”をつくる」というビジョンに共感したことが、転職を決めた大きな理由でした。沖縄には素晴らしい自然や文化がありますが、産業の面ではまだまだ可能性があると感じています。観光だけでなく、ITやテクノロジーの分野でも新しい挑戦が生まれていく。そのきっかけの一つとして、このプロジェクトが存在できたらいいなと思っています。

今後はジャングリア沖縄を通じて、沖縄のIT業界ともつながりを深めていきたいと考えています。地域の企業やエンジニアと連携しながら、一緒にプロジェクトを進めていく。そうした取り組みが広がっていけば、沖縄のIT産業にも新しいチャンスが生まれると思います。

テーマパークというと、どうしてもエンターテインメントのイメージが強いですが、その裏側には多くのテクノロジーがあります。だからこそ、このプロジェクトを通じて、沖縄でもITの面白い仕事ができるんだということを示していけたらと思っています。沖縄から新しい産業や技術が生まれていく。その流れの一部に、このプロジェクトがなれたらうれしいですね。そして将来、沖縄発のITがさまざまな場所で活躍していくような流れが生まれることを、とても楽しみにしています。

データドリブンでテーマパークを進化させる

今後、ITとして取り組みたいことはありますか。

今後は、データドリブン(データに基づいて判断・アクションする事)な意思決定をさらに進めていきたいと思っています。テーマパークでは、チケットの購入データ、アトラクションの待ち時間、飲食や物販の売上、アプリの利用状況など、さまざまなデータが日々生まれています。それらを適切に収集し、分析できる環境を整えることで、より良い意思決定ができるようになると考えています。

例えば、アトラクションの混雑状況をリアルタイムで把握できれば、ゲストの導線を改善することができます。飲食や物販のデータを分析すれば、ピーク時間帯のオペレーションを最適化することもできます。

さらに将来的には、ゲスト体験のパーソナライズも考えています。アプリを通じてゲストの行動データを分析し、その人に合った体験を提案することができるかもしれません。例えば、家族連れのゲストには子ども向けのアトラクションをおすすめしたり、混雑を避けたルートを案内したりすることもできるでしょう。

ITの役割は、こうしたデータを活用してテーマパーク全体の体験をより良くしていくことだと思っています。

テーマパークITの仕事は、どんな人に向いていると思いますか。

テーマパークのITは、単にシステムをつくる仕事ではありません。アトラクション、飲食、物販、運営など、さまざまな現場と関わりながら体験をつくっていく仕事です。そのため、ITの技術だけを見るのではなく、「サービス全体をどう良くするか」を考えることが好きな人には、とても面白い仕事だと思います。

自分たちがつくった仕組みが、目の前でゲストの体験として使われている。それを実際に見ることができるというのは、ITの仕事の中でもかなり特別な経験だと思います。ITを通じて体験を設計する仕事に興味がある人には、テーマパークのITはとても魅力的なフィールドだと思います。

もしジャングリア沖縄を訪れたときには、その裏側で動いているITにも、少し目を向けてもらえたらうれしいですね。そうした視点で見ると、また違った面白さを感じてもらえると思います。

取材日:2026年3月13日 ライター:小泉 真治

株式会社ジャパンエンターテイメント

  • 代表者名:加藤 健史
  • 設立年月:2018年6月
  • 事業内容:沖縄でのテーマパーク企画・開発・運営
  • 所在地:
    本社オフィス:〒905-0017 沖縄県名護市大中1丁目19番24号
    JUNGLIA OKINAWA:〒905-0413 沖縄県国頭郡今帰仁村字呉我山553番地1
  • URL:https://www.japan-entertainment.co.jp

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