発信でひらく、新しいGMOのクリエイター文化。未来をつくる共創の輪
写真右
GMOメディア株式会社 サービスデザイン部 部長
岡本 くる美氏(Kurumi Okamoto)
写真中央
GMOインターネットグループ株式会社 グループ管理部門統括 グループクリエイティブ部 部長
近藤 貞治氏(Sadaharu Kondo)
写真左
GMOインターネットグループ株式会社 グループ管理部門統括 グループ広報部 技術広報チーム
若林 里奈氏(Rina Wakabayashi)
デザイナーやエンジニアが、自分の仕事を「発信」する。GMOインターネットグループでは、いまそんな文化づくりが進んでいます。グループ全体で7,500人のうち、半数以上が“ものづくり”に携わる同社。2025年に本格始動した「Creator Synergy Project(クリエイターシナジープロジェクト)」は、クリエイターが会社の枠を越えて学び合い、発信し合うことで組織を育てていく取り組みです。
今回は、プロジェクト全体の取りまとめを担う近藤貞治さん、現場でデザイン組織を率いる岡本くる美さん、そして発信の仕組みづくりと広報を担う若林里奈さんの3人に、プロジェクト発足の経緯から、現場で感じる変化、そしてこれからの展望までを伺いました。
クリエイター同士をつなぐ、“横の輪”から始まった

このプロジェクトはどのように始まったのでしょうか。
岡本さん:きっかけは、グループ専務執行役員の橋口が「クリエイターを横断的につなげたい」と声を上げたことでした。もともとGMOインターネットグループでは、エンジニアを中心に横のつながりが強く、発信活動が活発だったんです。それに対してデザイナーは、どの会社でどんな仕事をしているのかも見えづらくて。まずは各社が情報を共有し合い、いい活動を真似ていこうというところから、「クリエイターシナジー会議」が始まりました。
この会議がスタートしたのは2022年の春から夏ごろ。月に1回ほどのペースで意見交換を重ね、年末から翌年にかけて本格的に動き始めた時期です。最初は手探りでしたが、グループ会社の先進的な事例を紹介し合うことで、自然と品質を底上げしていく流れができていきました。グループ全体で“クリエイティブの質”を上げる流れが、ここから生まれたと思います。
近藤さん:私が議長として関わるようになったのは、2024年の初めごろです。前任の議長であるGMOペパボのCDOがグループを離れるタイミングで、「次の議長を頼む」と橋口専務から声をかけてもらいました。最初は、戸惑いもありました。でも、グループの「創る人比率60%構想」を実現していく上で、グループ各社のクリエイティブ組織を横軸で連携するのは重要なテーマ。私は本体の立場だからこそ、各社の声を拾って橋渡しできる。それが自分の役割だと思い、引き受けました。
若林さん:私は技術広報(デベロッパーリレーションズ)の立場で、2022年ごろからこの動きに関わってきました。最初はイベントのサポートやリリース発信を担っていたのですが、各社の発信が増えていく中で、より大きな枠組みとしてまとめたほうがいいと感じていました。そこで「Creator Synergy Project」という名称を付け、グループ全体のクリエイティブ文化を外に示す旗印にしたんです。発信を通じてグループの存在感をどう高めていくか。その仕組みを整えることが私の役割だと思っています。
グループの力で、挑戦のスケールを広げる

プロジェクトとしては、どんな活動を行っているのですか?
近藤さん:活動内容は多岐にわたります。たとえば「Designship 2025」や「Spectrum Tokyo Festival 2024」といったクリエイティブ業界で注目されるイベントに、GMOインターネットグループはトップスポンサーとして参加・協賛しています。また、グループ主催のデザインコンテスト「GMO DESIGN AWARD」も開催し、若手デザイナーや学生の登竜門をつくるなど、次世代との接点づくりにも力を入れています。さらに、オンライン勉強会やUXチェックリストの共有など、グループ横断の学びの仕組みも整えてきました。
岡本さん:正直、個社単位ではここまでの取り組みは難しかったと思います。たとえばDesignshipのような大規模イベントでブースを出す場合、単独企業では費用も工数も大きい。でもグループとして参加すれば、各社のデザイナーが得意分野を持ち寄り、一緒に作り上げることができるんです。私のチームのメンバーもブースデザインを担当しました。普段はデジタルプロダクト中心の仕事なので、リアル空間をデザインするのは初めて。「こんな経験、うちの会社だけではできない」と喜んでいました。その結果、ブースを見た学生さんが採用エントリーしてくれるなど、会社にも還元されています。グループの後ろ盾があることで、クリエイターに新しい学びと挑戦の場が生まれていると感じますね。
若林さん:広報の視点から言えば、こうした活動を「点」ではなく「面」として伝えられるようになったのが大きな変化です。Designshipのブースでは、これまでの活動を時系列でまとめた年表を展示し、GMOインターネットグループがどのようにクリエイティブ活動に取り組んできたかを示しました。個社の取り組みを超えて「グループとして文化をつくっている」という一体感が伝えられたと思います。
発信が、クリエイターの誇りと自信を育てる

「発信」がクリエイターにもたらす変化について、どのように感じていますか?
若林さん:このプロジェクトの特徴は、発信を個人任せにしないことです。誰もが挑戦できるよう仕組みを整え、継続的に支援する。登壇者を選ぶときも、各社のデザイン組織の責任者と相談しながら、できるだけ多くのメンバーを巻き込むようにしています。発信に慣れていない人でも、まずは社内の勉強会などのクローズドな場で練習して、少しずつ外の舞台に出ていく。そのステップを用意することで、誰でも安心して発信に取り組めるようにしています。
岡本さん:私がメンバーに伝えているのは、「まずはグループ内で発表してみよう」ということ。グループ内勉強会はクローズドですが、他社の人たちが聞いてくれるのが大きな刺激になるんです。発表に慣れたら、次はGMOインターネットグループが主催するエンジニア・クリエイター向けカンファレンス「GMO Developers Day」など広い場へ。そうして自信をつけていくプロセスを意識しています。最初から社外登壇を目指さなくてもいい。身近な一歩から始めればいいんです。
近藤さん:発信は、自分の考えを整理して言葉にする行為です。最先端の話題を語らなくてもいい。むしろ「自分はこう考えている」「こういう課題に悩んだ」といった等身大の話に共感が集まります。僕自身、人前で話すのは得意ではなかったけれど、やってみたら反応があって拍手をもらえる。行動することでしか得られない気づきがあります。
同時に、「クリエイターのプレゼンスを上げたい」という思いもあります。グループには多くの優秀なクリエイターがいるのに、社外からは見えづらい。発信を通してその存在を伝え、クリエイター自身が誇りを持てる環境をつくりたいんです。
若林さん:その意識の変化は実感しています。以前は「GMOってデザイナーがいるんですね」と驚かれることも多かった。いまではイベントで「GMOの展示、印象に残りました」「登壇を拝見しました」と声をかけていただく機会も増えています。発信がそのままブランドの証明になり、同時にクリエイターの自信にもつながっていると思います。
続けることが、文化をつくる

継続していく上で大切にしていることは何でしょうか。
近藤さん:一番大切なのは「続けること」です。どんな取り組みでも、続かなければ文化になりません。私たちは月2回の定例会を基本に、グループ各社のデザイン・クリエイティブの責任者で継続的な情報共有を行っています。2024年に入ってから、会議の参加メンバーは14名から30名以上に増えました。数字で見ると地味かもしれませんが、関心の広がりを感じています。デザイナー向けイベントの主催者側から「GMOに最初に声をかけました」と言ってもらえる機会も増え、社外でのプレゼンスも確実に上がってきました。
岡本さん:発信することは、自分たちの現在地を知る最短の方法だと思っています。事例を出してみると、共感や反応から、自分たちの活動の価値が見えてくる。「最先端でなくても、価値がある」と実感できるのは大きいです。発信のリアクションは、組織としての成熟度を測るバロメーターにもなる。一過性で終わらせず、継続することで初めて「文化」として根づくのだと思います。
若林さん:広報の立場からも、継続性の効果は大きいです。記事発信ではUU数などを指標に置き、イベントでは来場者数やブース訪問数を目標にしています。2025年のDesignshipでは、前年よりも多くの方が立ち寄ってくださり、「GMOさんの記事を読んで来ました」と声をいただくこともありました。そうしたリアルな反応が、次の発信へのモチベーションになっています。
このプロジェクトを通じて、どんな変化を感じていますか?
近藤さん:クリエイター同士の距離が近づきました。会社の垣根を越えて相談できる関係が増えています。将来的には、グループ内でデザイナー留学のような仕組みをつくりたい。異なる会社のプロジェクトに一定期間関わることで、新しい視点が得られるはずです。発信だけでなく、交流や流動性のある環境づくりにも力を入れたいですね。
岡本さん:発信は内省のきっかけにもなります。活動を言語化することで、「私たちはここまで来た」と確認できる。それが次の挑戦へのエネルギーになるんです。発信して終わりではなく、自分たちの成長を確かめるためのプロセスとして定着させていきたいです。
若林さん:私たちは「発信が特別な行為ではない」状態を目指しています。SNSに投稿するように、自然に日常の中で発信できる。とはいえ、最初の一歩は誰でも不安です。だからこそ、“挑戦のハードルを下げる”工夫を続けています。小さなアウトプットの積み重ねが、やがて会社の顔になり、文化になる。そう実感しています。
小さな発信が、未来をつくる

“発信する文化”が広がるいま、クリエイターに伝えたいことはありますか?
岡本さん:発信は「記録」でもあります。自分の考えや判断を振り返る材料になるし、積み重ねればポートフォリオにもなる。トレンドや技術が変わっても、自分がどう考え、どう表現してきたかは残ります。小さくてもいいので、今やっていることを発信として残してほしいです。
若林さん:発信は、誰かに見せるためだけではなく、自分の整理にもなります。書くことで、自分が何を考えているのか、どこに向かいたいのかが見えてくる。最初は社内SNSでも構いません。そこから一歩ずつ外に広げていけばいい。発信がきっかけで新しい仲間と出会えたり、チャンスを掴んだりすることもあります。発信がつくる“つながり”こそ、クリエイターの最大の財産だと思います。
近藤さん:発信って、勇気のいる行動ですよね。でも、行動しないと何も変わらない。僕自身も最初は人前に立つのが怖かったけれど、やってみたらたくさんの反応をもらえて、自分も成長できた。行動することにネガティブなことは一つもありません。思っているだけでは、誰も何も変わらない。自分の言葉で発信することが、組織を、そして未来を変える第一歩になると思っています。
取材日:2025年10月15日 ライター・スチール:小泉 真治
GMOインターネットグループ株式会社(GMO Internet Group, Inc.)
- 代表者名:代表取締役グループ代表 熊谷 正寿
- 設立年月:1991年5月
- 事業内容:持株会社(グループ経営機能)
グループの事業内容:インターネットインフラ事業/インターネットセキュリティ事業/インターネット広告・メディア事業/インターネット金融事業/暗号資産事業 - URL:https://group.gmo






