最近のアスリートは強い。

Vol.019
CMプロデューサー
Hikaru Sakuragi
櫻木 光

僕は若い頃バスケの選手でした。
小学校3年生から高校3年生までやって、結構ガチでした。
佐賀県で優勝して、九州で2位になり、全国大会で2位になったことがあります。ここに自分のメンタルに大きな問題が潜んでいます。
決勝戦になると最後の最後にへたれてしまう。シルバーコレクター的な立場でした。それがとても悔しかった。
チームスポーツなので個人の責任でもありませんが主力選手としての後悔が今も残っています。

最近のオリンピックや、メジャーリーグ、サッカーのワールドカップ、ラグビー、テニス、プロボクシング。若い選手たちは世界戦に出てちゃんと実力を発揮します。
もう本当に羨ましい。

僕らの世代はまさに「ドーハ組」の世代です。いいとこまで行くんだけど、必ず後一歩のところで負けてしまう。
この世代は、バルセロナオリンピック、アトランタオリンピックに出て主力で活躍する年齢ですが、記憶を辿ると、ごく一部の選手をのぞいて各競技ほぼ惨敗。出れただけまし、みたいな時代でした。
オリンピックは参加することに意味がある、とか言っていました。
人数だけはたくさんいました。

その時代に議論されていたことは、バブル期でもあったし、スポーツで苦しい思いをしなくても儲かる話が沢山あるんだから、わざわざ貧乏して名誉のために苦しい思いをする若者はいない、と言う論調でした。

で、今のオリンピックを見ていると、いろんな種目でいろんな日本人選手が活躍しています。サッカーもそう。代表チームがめちゃ強い。
独自の進化をして、ある一定のマーケットを持っていた野球はもう世界最高の選手を生み出すレベルで突出していますが、バスケもNBAで試合に出る選手を排出し始めた。自力でオリンピックに出れるレベルじゃない時代がずいぶん続いたのに。

悔しいので少し調べてみました。

80年代や90年代と今では何が違うのか?
昔の日本人アスリートは大舞台に弱かったのに、今はむしろ世界で勝ち切るメンタルを持っている。
それは何が変わってそうなったのか?と言う質問です。
調べていくと、相当大幅な構造的な改革がなされていることがわかりました。
オリンピックのテクニカルセンターみたいな研究所も、バルセロナ、アトランタのオリンピックの惨敗に危機感を感じた人たちが、企業の協力を得て設立された、となっています。
それが30年以上経って効果が出始めている。時間がかかりますね。

まず、1980〜90年代の日本スポーツは、根性論や精神論がまだ強く、科学的なメンタルトレーニングはほぼ浸透していませんでした。というかそんなもんはなかった。

死ぬ気でやれ、だけ。

一方、現在は:
● ルーティン化(ルーチン)
 →五輪選手は皆当たり前のように、自律神経を整えるルーティンや呼吸法を持っている。
● イメージトレーニングの科学化
 →神経系の反応や実際のパフォーマンス向上がエビデンスとして示された。
● スポーツ心理士や専属メンタルコーチの常態化
 →メンタルの「練習量」が増えた。
● バイオメカニクス・データ分析による自己理解の深化
 →自分の強みと弱みが客観化され、〝自己効力感〟が高まる。つまり「メンタルが強くなった」のではなく、メンタルを鍛える方法論が体系化されたのが大きい。と書いてあります。

トレーニング環境については、1990年代までの日本は「国内中心の練習」「海外経験の不足」が当たり前でした。

しかし現代は:
 ● 10代から海外で武者修行
 ● 世界のトップコーチやトップ選手と同じ環境
 ● 栄養、睡眠、リカバリーの科学化
 ● プロフェッショナルな育成環境(ナショナルトレセン等)
国際基準を日常的に経験することで、“ビッグゲーム・プレッシャー”に耐えられる人材が自然に育つ。
海外選手と同じ土俵で日常的に戦っていれば、「大舞台だから緊張する」という構造そのものが薄れるわけです。
 ● 情報環境
  ○ 1980〜90年代:
   ■ 世界のトップ選手の映像を見るには限られた機会しかない
   ■ 世界が遠い
   ■ 日本の中で比較してしまう
  ○ 2020年代:
   ■ SNSやYouTubeで世界の怪物たちを毎日見て育つ
   ■ トップ選手の練習動画、メンタル談話、技術解説がすぐ手に入る
   ■ 世界の一流が「当たり前」に感じられる

結果として若手は「世界トップとの差」を早く理解し、それを埋めるプロセスを自然と学ぶ。心理的な「物理的距離」「情報距離」が縮まったことは非常に大きい。

● メディア環境の変化
 ○ 昔:
  ■ 結果だけを求める報道
  ■ 失敗すると「メンタルが弱い」と批判
  ■ 叩かれ文化が強い
 ○ 今:
  ■ 選手が自分の発信を持てる(SNS)
  ■ メディアも「プロセス」や「挑戦」を尊重する傾向
  ■ スポンサーやチームが全面支援
  ■ プレッシャーの分散が可能に

つまり、選手は「潰れるメディア環境」から「支えるメディア環境」へと移行した。

● 育成について
 ○ 現代日本のジュニアスポーツは以下が標準化:
  ■ コーチングライセンス制度の向上
  ■ 早期からのフィジカル指導
  ■ トップクラスの分析技術の導入
  ■ メディカル・栄養・心理が一体となった育成

1980〜90年代は“指導者ガチャ”になりがちでしたが、今は育成システムが高度に標準化されつつあると言うことか?

書くための要素がもう多すぎて、もっとたくさんあるんですが、ものすごく進化していることがわかります。
だけどそういうことは、世界中の国、特に先進国では条件は同じです。やっと、そのレベルに追いついてきた、ということでしょうか。

日本は、欧米の先進国から見たら、発展途上国から先進国に成り上がった稀有な存在の国です。経済的には、先進国になった後、先進国らしい考えにシフトできずに、右肩上がりの幻想と現実のギャップに苦しんで30年を失いました。もうすぐ失われた40年。
その中で、いち早く、そのスポーツ先進国の問題の解決に着手した集団が結果を出している。と言うことです。

ここまで調べて、んじゃ、これから日本のスポーツはどうなればいいのよ?という問いをAIに聞いてみました。すると、
「日本スポーツは“人の物語と技術と科学”の三層構造へ進化する必要がある」と言う答え。そして、その考えは以下の6本の柱で成り立つ、と。

 1. 生涯アスリート支援(スポンサーが“期間限定の広告主”ではなく“生涯支援パートナー”になる発想。勝てるアスリート=安心して挑戦できるアスリート)
 2. データとテクノロジーの統合(いろんなフィジカルなデータを統合した「Athlete Data Hub」で選手を最適化)
 3. コーチングの高度化(「優秀な人材がコーチ職を選ぶ」社会設計)
 4. メンタル科学の医療化(メンタルは技術であり医療でもある」という認識)
 5. ストーリーIP化(選手の姿のドキュメンタリーなどをソフト化して収益を得る)
 6. 地域スポーツのインフラ化(スポーツを「健康インフラ」として扱うことが、国全体の競技力にも直結)

この6つが揃ったとき、日本のスポーツは“世界で勝てる構造”を一層強固にできます、と言うのがAIが出した答えです。
確かになーと思いました。いろんなことがそうなればいいのに。映画とか、音楽とか、芸術とか。
スポーツだけじゃなくて、日本全体がそうなればいいんですよね。

この、スポーツで進化したメンタルトレーニングの技術や、組織の作り方、意識の改革、指導の仕方、人材育成のノウハウを一般の社会用に作り変えてフィードバックさせて、学校の教育や会社の人材教育に役立たせる世の中になって欲しいと思うのです。指導のための研究だから。

多分、そこでの研究ももう進んでいるんでしょうけど、まだ、パワハラだのセクハラだの加害者を特定するのに躍起になって、被害者ファーストにならざるを得ず、そこでの優秀な指導者的な人材を排除するようなもったいないことも起きているからです。

選手の育成と指導者の意識の改革。環境の進化は社会にフィードバックできると思うのです。

プロフィール
CMプロデューサー
櫻木 光
自分の関わった仕事の案件で、矢面に立つのは当たり前と、体と気持ちを突っ張って仕事をしていたら、ついたあだ名は「番長」。 52歳で初めて子どもを授かったのでいまや「子連れ番長」。子連れは、今までとは質の違う、考えた事も無かった様な出来事が連発するような日々になったけれど、守りに入らず、世の中の不条理に対する怒りを忘れず、諦めず、悪者だけど卑怯者にはならない様に生きていたいと思っております。

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