リフレクティブ・クエスチョン

Vol.012
CMプロデューサー
Hikaru Sakuragi
櫻木 光

あんまりこういうことをバラしていいのかわかりませんが、CMプロデューサーをやっていて特に気をつけていることがあります。

僕の仕事は、まず人の話を聞く、というところからスタートします。
受注する仕事だから当たり前ですね。

オリエンを受ける、というところからスタートするわけですが、最初にオリエンする人の言いたいことをいろいろ聞いてみないと質問すら作れません。

そして作業が進行している中で、問題があったり、報告を聞いたり、苦情が来たり、泣き言を言う奴がいたり、業務上の注文が来たり。
プロデューサーには、「こういう問題があるんだけどなんとかしてください」という話ばかりくる。
つまり「聞く仕事」なんです。
まず聞いて、考えて、方針の決断をする。その繰り返し。

予算とスケジュールを預かっているので、全ての問題はそのどちらかに関わってきます。
先輩を見ていても、いいプロデューサーと言われる人は「聞き上手」です。
この人、結局、大したことねえんだよな、と思うプロデューサーは「聞き下手」です。

何が違うんでしょう?

聞き上手は、人の言うことはなんでも黙って最後まで聞きます。
仕事で成功している人には、特別なスキルがあります。
結果を出してる人たちは、当たり前ですが、コミュニケーション力が優れています。

聞き下手の人の特徴は「聞き下手」というだけあって、人の話をちゃんと聞いていません。
ちょこっと聞いただけで、自分の頭の中に膨らんだ考えに占領されて、本質とは違うことを思い浮かべています。
責められていないのに責められたような気分になっていたり、人の言い回しの嫌いな部分に勝手に怒り出して意味を取り違えたり執着したり。
自分の中に発生した「自分の言いたいこと」を膨らませて、どういう言い方で返そうかと考え始めちゃって、そこからもう人の言うことは耳に入らなかったり。

最悪なのは、人が結論を話し終わる前に本質とズレた、自分の言いたいことを喋り出したり。
聞かれたことには答えないで、あいまいなことを言ったり、です。
はやとちり。
田舎の母ちゃんみたいですね。
さてどうしたもんでしょうか?

僕は性格的に、人が傷つくくらいはっきりものをいう傾向にあるので、それはそれで問題なのですが、「はっきりものを言う」と言って、その言ったことが本質とズレていた時、つまり、ちゃんと聞かないで変なことをはっきり言ってしまって、周りの人が沈黙してしまう時ほどバカっぽい時はありません。
カッコ悪さの極地。つまりバカ。

そんな恐れが自分の中に、過去の失敗の記憶とともにあるので、とにかく気をつけていることがあります。
陥ってはいけないことは「他人の話をちゃんと聞かないまま話を聞く」という状態です。

そうならないために、人の話を聞くときに、まずしなければいけないことがあります。
それは、人の話を最後まで聞いて、相手が話したことをサクッと要約して、聞き返す。それが正確に相手の言いたかったことをとらえているか一回確認する、という作業を必ずやると決めることです。

何が問題で何をしたがっているのか?ということを人の話を最後まで黙って聞いて頭の中で考える。
考えながら聞く。そして人が話し終わったときに少し間を置いて、
「つまり、こういうことですか?」
と一回聞き返す、を必ずやる、を前提に人の話を聞く、というルールを自分の中に持っています。
そしたら、自分の中に勝手に妄想が膨らむこともないし、焦って人が話し終わる前に持論を被せ気味に展開することもなくなるでしょう。

「つまり、こういうことですか?」が正確だと、相手も安心して、相手がお怒りの場合は半分くらい鎮まります。ほんとです。

話すのが下手な人は、自分の言うことが相手に伝わらないのもすごいストレスです。
そのとっ散らかった話をちゃんと要約して確認してあげると、「そういうことよ」とまだ問題を解決する前に気持ちを落ち着かせてくれるでしょう。
冷静に問題に対処するためには、その一発目の返しがすごく重要でもあります。
その後の対処が悪ければ、そんな小手先の技も吹っ飛んじゃうんですけどね。

その後の対処のためにも正確な確認をするのは必要なことです。
とにかく素直な性格にならないとできません。

これ、ちゃんと学術的にも研究されたやり方だそうです。
「リフレクティブ・クエスチョン(反映的傾聴・質問)」
と言うそうです。
自分の考えや判断を脇に置いて、相手の話に100%フォーカスする聞き方のテクニックだ、
と書いてあります。

AI に聞くと、

/リフレクティブクエスチョンとは、相手の言葉や感情を反映させる質問のことです。相手の発言を繰り返したり、言い換えたりすることで、相手に理解を示し、自己理解を深めることを促します。/

/リフレクティブクエスチョンは、コーチングやカウンセリングの場面でよく使われます。例えば、相手が「今日は疲れた」と言った場合、「今日は疲れたんですね」と返して、相手の感情を肯定的に受け止めることで、相手は安心してさらに詳しく話すことができます。また、相手が「このプロジェクトはうまくいきそうにない」と言った場合、「うまくいきそうにないと感じているんですね」と返して、相手の抱える課題を明確にすることができます。/

/リフレクティブクエスチョンは、相手との信頼関係を築き、より深いコミュニケーションを促すための有効なツールです。/

と答えてくれました。

実は、AIにプロンプトを入れるたびに、AIは、
「それは〇〇ということですね。素晴らしいアイディアです。」とか返してくる。
褒められたような気持ちになって、お、機械のくせにわかってんじゃんお前、とか言っちゃって、どんどん調子に乗って質問が出てくるものです。
気づくと、AIと自分の二人で褒めあったりしている時がある。いい奴だなお前。

AIを作った人たちは、このリフレクティブ・クエスチョンの理論を使って質問する側が気持ちよく、積極的に活性化することを狙ってAIの返答のプログラムを開発していると思うんですよね。

そう考えると、AIをうまく使いこなす人は、質問のされ方、仕方が上手な人、ということになりますね。

プロフィール
CMプロデューサー
櫻木 光
自分の関わった仕事の案件で、矢面に立つのは当たり前と、体と気持ちを突っ張って仕事をしていたら、ついたあだ名は「番長」。 52歳で初めて子どもを授かったのでいまや「子連れ番長」。子連れは、今までとは質の違う、考えた事も無かった様な出来事が連発するような日々になったけれど、守りに入らず、世の中の不条理に対する怒りを忘れず、諦めず、悪者だけど卑怯者にはならない様に生きていたいと思っております。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP