「876453(ハナムシゴミ)」
自分の証明が難しい時代です。
ネットバンキングで自分の口座を開こうとしたら認証コードを入れるようにとのこと。メールを開けてそれを確認すると奇妙なピクトグラムのようなイラストが現れ(※写真①)メールに送られたものと同じ絵柄をクリック。で、ここでようやく暗唱番号を入れるのですが開きません。ミスタッチかなともう一度キーボードを打ったのですが間違っていると表示されます。困った。あー、そっか。確か今年の始め頃に暗証番号をもっと複雑化させるように指示されて変えたような。それまで数字と英文字だけだったのを英文字の中に大文字を入れ、さらに記号も加えろと言われ(その指示も機械的な文面で送られたメールでしたが)変更した覚えがうっすらあります。思い出せません。固まってしまいました。PCではなく僕がです。
写真①
銀行だけではなくクレジットカードも各アプリのアカウントもコンビニの決済も諸々のサブスクもどれもこれも暗証番号が必要ですが、みんなよく覚えられますよね。生まれたときからPCやスマホが当たり前の世代にとっては難しくないのでしょうか。昭和生まれには組み込まれていない新しい遺伝子のようなものがきっと彼らには備わっている気がしてなりません。
元々僕もですが僕らの世代は数字をわりと覚えていますし、暗記物には慣れています。始めはおそらく九九から。小学校低学年の勉強の最大の山場が九九なのはきっと今でも変わらないはず。令和の教え方はずいぶん違うそうですがあの頃はひたすら強引に丸暗記でした。学校ではもちろん、登下校のときやご飯の前やお風呂の中でも所かまわず大きな声で暗唱した記憶があります。次に円周率。
3.141592653589とここまでは今でも空で言えます。ただし言うときは必ず童謡「きらきら星」のメロディ付き。小4か小5のとき、担任の西平先生からこのメロディで口ずさむと忘れないと言われ僕らのクラスはみんなそれで覚えました。そして個人的に幼い頃に覚えて今でも忘れられない数字はズバリこれ。
876453
覚えたのは1970年(昭和45年)。小学校1年の夏に引っ越した家の電話番号です。引っ越した前の電話番号の記憶はあいまいですが、この番号には思い出がいっぱい。正確には87-6453です。
当時、母が「うちの今度の電話番号は覚えやすかよね。花虫ゴミ!」と得意気に僕と妹に発表。確かにゴロがよくてこの番号を使わなくなって半世紀経ちますが、今でも忘れることはありません。その後、今に至るまで数々の電話番号を記憶しました。中学時代の彼女の家の番号と高校時代の彼女の家の番号は今でもしっかり手が覚えています。
この機にかけてみようかとも思いましたが万一誰かが出たりするとタイヘンなのでやめました。学生時代は実家の番号はもちろん仲のよかった友達数人の番号も覚えていました。その後、新卒で入った会社ではポケベルを持たされ、しょっちゅう呼び出されたのでその番号は今でも言えますし、その頃は残業も多く毎日のように使ったタクシー会社の番号もわかります。
あ!!それで思い出しました。もうひとつ大切にしていた番号。その数字は8863。ゴロ合わせ的には「ハッパフミ(フミ)」と往年の大橋巨泉フレーズ。
8863を思い出すと懐かしいと恥ずかしい気持ちが交差します。社会人一年目、当時僕がいた会社はお給料はまだ手渡しでした。給料日の朝は総務課の前に手にシャチハタを持った男女が列を成します。初任給の袋を開けて中を確認。もちろんうれしかったですが、正直少ないな、と思ってしまったのです。明細を見ると額面は11万円を超えていますが、手取りは10万8863円。翌月、大学の同級生たちとの飲み会で初任給の話は当然出ます。そのときダントツに僕の額が低くてくやしかったのです。今思えば、明け透けというかコンプラ皆無ですね(※会社の名誉のために記しますが、これは80年代のことでその後初任給も給与も大幅に上がっています!)
で、当時の僕はカッときて初心を忘れまいと(?)その8863を銀行の暗証番号にしたのです。ほんとにお恥ずかしい。4年後、転職するときに同僚にこの話をしたら「いま俺達はお前の暗証番号を手に入れた。きっと悪用するからすぐに変えろ」と言われ、ほんとに速攻で変更しました笑。
その後、時は流れ90年代以降ケータイを持つようになってからは電話番号を覚える必要はなくなりました。そして僕の地元福岡市もすぐに電話番号は6桁から7桁に変わったので、876453も今は存在しません。でも、意を決してその番号に掛けたら「もしもし門田です」とあの頃のまだ汚れていない僕が電話に出たりしないものでしょうか。
ところで、冒頭の暗証番号の件。毎日付けている日記のような切り抜きノート(※写真②)の2025年1月15日のページに手書きで新しい暗証番号を記していました。結局最後に頼れるのはアナログだよなという話はまたの機会に。
写真②

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