FDAが初めて承認した「子宮頸がん検査キット」Teal Wand

Vol. 72
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Sayuri Fujii
藤井さゆり

過去のコラムで、アメリカ初の処方箋なしでオンライン購入できる低用量ピルや、フェムテックマーケットなど、女性の健康問題を解決したりセルフケアをしてくれる製品の販売やサービスを提供するスタートアップを紹介したことがありますが、今回は、子宮頸がん検診キットTeal Wand(ティールワンド)をご紹介します。

 

 

 

女性のみなさん、子宮頸がん検診に行かれてますか?男性のみなさん、子宮頸がん検診とはどんな検診かご存じでしょうか?

 

日本では厚生労働省により、20歳以上の女性を対象に2年に1回の細胞診、かつ、HPV検査単独は5年に1回が推奨されています。※HPVとは、ヒトパピローマウイルスの略で、主に性交渉によって感染するウイルスであり、子宮頸がんのほぼすべての症例がHPV感染に関連しています。

 

アメリカでは、アメリカがん協会(ACS)のガイドラインに基づいて、25歳から65歳までの女性を対象に、5年ごとにHPV検査単独での検診、またはHPV検査が実施されない場合は、HPV+細胞診の同時検査を5年ごと、もしくは細胞診を3年ごとに実施することが推奨されています。

 

 
 
 
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日本では子宮頸がん罹患者数は年間約10,000人、死亡者数は年間約2,900人(若年層のがん死亡原因としても上位)にのぼり、20代〜30代の女性で増加傾向にあります。アメリカの発症例は年間約13,000件、死亡者数は年間約4,000人という統計があり、HPVワクチンの普及と定期的な検診の徹底により近年は大きくリスクが減少傾向にありますが、低所得層、地方在住の女性で発症率が高めです。

 

子宮頸がん検診受診率を見てみますと、日本だと約43.6%、アメリカだと約75.8%とだいぶ差があります。

 

日本は、HPVワクチンに関する過去の報道などにより、ワクチンや検診に対する不安や誤解が広がった時期があったことや、仕事や家庭の都合で医療機関に行きづらい、内診への抵抗感など、心理的・時間的なハードルがあることが原因のようです。

 

アメリカだと、医療のために時間を取ることが社会的に許容されている文化があるのと、フレックスを始めとする勤務時間の柔軟性があったり、在宅勤務も多いこと、多くの保険プランが予防医療として検診をカバーしており、受診のハードルが低いことが受診率の高さの理由として挙げられます。

 

 
 
 
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そして、男性にも知っておいてほしい「子宮頸がん検診ではどういった検診をするのか」。女性は下着を脱ぎ、脚を開いて内診台に上がります。医師が膣内に金属やプラスチックの腟鏡という器具を挿入し、子宮頸部を確認。小さなブラシやヘラで子宮頸部を軽くこすって、粘膜の細胞を採取します。痛みがない場合がほとんどですが、人によっては軽い不快感を感じることも。

 

子宮頸がん検診の受診率が低い理由の一つとして、内診への抵抗感が挙げられていますが、このような検診内容に女性が抵抗感を感じることに対して男性にも理解してもらえるかと思います。

 

 
 
 
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↑これが膣鏡という器具。「80年もの間、女性の健康のために使用されてきました…」と説明されています。

 

子宮頸がん検診の受診率が高くても、検診に対して同じような抵抗感があることはアメリカでも同様です。アメリカでも同じような流れ・器具で検診が行われているのですから。

 

そんな女性たちの抵抗感を少しでもなくすために生まれたのが、子宮頸がん検査キットTeal Wandです。Teal Wandは、2025年5月9日に、FDA(アメリカ食品医薬品局)から正式に承認されました。アメリカで初めて承認された、自宅で自分で採取できる子宮頸がん検診デバイスで、25歳から65歳の平均的なリスクを持つ女性を対象としています。

 

 
 
 
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この承認は、Teal Wandが病院などで行う従来の検査とほぼ同じくらい正確に検査できるという結果が出た臨床試験に基づいています。実際の試験では、自分で採取したサンプルでも、医師が採った場合と95%近く一致し、がんの前段階の異常も96%の精度で見つけることができたことが確認されました。

 

Teal Wandは、まず2025年6月にカリフォルニア州から提供がスタートし、今後アメリカ全体に広がっていく予定です。このデバイスを使えば、病院に行かずに自宅でHPV検査ができるので、忙しい人や医療機関に行きづらい人、内診に抵抗がある人にとって、もっと気軽に自宅で受けられる選択肢になります。

 

 
 
 
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Teal Wandのオーダーから結果が届くまでの流れはとてもシンプルです。

 

 1. オンラインで申し込み&相談

サイトからキットを申し込み、医師と短いオンライン診察。これで準備OK。

 

2. キットが届いたら、自分でサンプルを採取

タンポンのようなやさしい形の「ワンド」を使って、膣内のサンプルを自分で取ります。痛みもなく、数分で完了。

 

3.そのまま郵送

採取したサンプルを同封の封筒に入れて、指定のラボに送るだけ。

 

4. 結果をオンラインでチェック

数日後にサイト上で検査結果を確認。必要なら、オンラインで医師に相談することもできます。

 

 

 
 
 
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Teal Wandの特徴として、以下が挙げられます。

 

・病院に行かなくていい

忙しくて時間が取れない人、内診が苦手な人にぴったり。リラックスできる自宅で検査できます。

 

・やさしい使い心地

「怖そう」「痛そう」という不安をなくすために、形や素材にもこだわって作られています。

 

・正確さもしっかり

病院で検査してもらうのとほぼ同じくらいの正確さがあると、アメリカの臨床試験でも確認されています。

 

・検査後も安心のフォロー

気になることがあれば、Teal Health(Teal Wandの開発元会社)の医師にオンラインで相談できるサポート体制も整っています。

 

 
 
 
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Teal Healthは2020年にアメリカ・サンフランシスコでスタート。カラ・イーガンさんという女性起業家と、医師のアヴネシュ・サコールさんの「病院での検診に不安を感じたり、忙しくてなかなか時間が取れない女性たちのために、自宅でできる、やさしい子宮頸がん検査を届けよう」という思いから生まれたのがTeal Wandです。

 

 
 
 
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創始者のカラ・イーガンさん

 

ニューヨークタイムズのTeal Wandについての記事に対して、実際にテスト段階で試用した人を含む製品への感想・意見で興味深いコメントがあったのでご紹介します。※Teal Wandの顧客への提供は2025年6月から開始されます。

 

“私はこの製品のテストに参加しました。届いたとき、その大きさに少し驚き、正直少し怖気づいてしまいました。でも実際に使ってみるととても簡単で、不快感も全くありませんでした。産婦人科での経験とは大きく違いました。また、自宅で自分自身でデバイスを操作できたので、不安もあまり感じませんでした。フィードバックをする時にサイズについて質問したところ、Teal Wandはあらゆる体型の人に合うように作られていると言われました。私はどちらかというと小柄な方ですが、自分にはとても合っていたと思います。”

 

“膣鏡、ラテックス手袋、潤滑剤、検診服、医師との雑談…子宮頸がん検診はいつも痛くて屈辱的でした。ようやくより良い方法を発明してくれた人が現れて本当に嬉しいです。”

 

“もし男性がこの検診を受けなければならなかったとしたら、このTeal Wandは100年前に発明されていたでしょう!”

 

いかがでしたでしょうか。Teal Wandは、子宮頸がんの早期発見と予防に寄与する革新的なデバイスと言えるでしょう。女性に寄り添ったデザインでかつ、自宅で簡単に行えるこのキットで、近い将来、妊娠検査薬と同じようにアクセスが容易になり、より多くの人々が定期的なチェックをするようになればいいなと思います。

 

(参考、引用)

Teal Health

F.D.A. Approves First At-Home Alternative to the Pap Smear – New York Times

プロフィール
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藤井さゆり
東京生まれ、2008年ニューヨークに移住。 公益法人に勤務の傍ら、仲間内で企画したクラブイベントのフライヤーデザインをしたことから、デザインの面白さに目覚め転職。 転職後は、都内商業施設のウェブサイトの販促用ページ企画と取材、ライティングを経験。 ニューヨーク移住後は、ウェブマーケティングを企業にて経験、ウェブデザインをフリーランスで行う。 現在は、日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」のオーナー兼デザイナーを務める。
foxylilly.com
Instagram: @foxylilly

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