“メガネのズレ落ち防止ワックス”で年間200万ドルの売り上げ!成功に導いたものとは?
汗でメガネが何回もズレ落ちる…メガネをかけている人なら一度は経験したことがあるのではないでしょうか?この問題を解決するため「メガネのズレ落ち防止ワックス」なるものを開発したところ、年間200万ドルを売り上げたスモールビジネスがあります。これは、テネシー州イーストナッシュビルに住むドン・ヘイニーさんが仕事上で経験した問題を解決しようとしたことがきっかけで生まれたビジネスです。
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ドン・ヘイニーさん
それは、ヘイニーさんがこのビジネスを始める前にツアーオーディオエンジニアをしていた時に遡ります。会社がナッシュビルに拠点を置いていたので、主にカントリーアーティストと野外コンサートで仕事をしていたそうです。サマーフェスティバルといった夏の屋外での公演時にはとても汗だくになるため、下を向いているとメガネが顔から落ちそうになります。それを防止するためにストラップ、バンド、フックなど市販のさまざまな製品を試しましたが、どれもうまくいかなかったそう。
テキサスでのサマーフェスティバルで、ヘイニーさんが仕事で付いていたアーティストが大きいアビエーターサングラスをして演奏をしていた時のこと。着用していたサングラスがアーティストの鼻を滑り続け、時にはアーティストは演奏している手を止め、サングラスを指で押し上げなければならない状態に。その時に「アーティストが着けても恥ずかしくなく、バンドやフックではない別の方法で、サングラスがズレ落ちるのを防止する解決法はないだろうか…」と考えていたそうです。
ヘイニーさんはサーフィンやスケートボードといったボードスポーツに囲まれて育ったとのことですが、これが製品開発の大きなヒントになります。サーファーはボード上で足が滑るのを防ぐために、ボードの表面にワックスを使用するのですが、メガネ用のサーフワックスみたいなものを作れたらすごくいいだろうなと思ったのだそうです。
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これによって生まれたのが「メガネのズレ落ち防止ワックス」Nerdwax(ナードワックス)です。しかしそのアイデアが出たのも束の間、失職、奥さんの骨折、所持車2台の故障、借りていた家の更新がされないためにやむを得ず引っ越しといったトラブルがあり、ワックスに取り掛かるのをしばらく保留。再就職してから落ち着いて、改めてビジネスを始めてみようと思えるまで、2年かかったそうです。
そしてワックスに取り掛かる決意をしたものの、現実には、ビジネスを始めるための資金がない、このビジネスに投資してくれる人もいるかわからない、という問題が出ます。という問題が出ます。そこで思いついたのがKickstarter。Kickstarterは、クリエイティブなプロジェクトのアイデアを持っている人がクラウドファンディングによって資金調達を行う手段を提供しているプラットフォーム。こうしてヘイニーさんは、Nerdwaxのための資金を募るため2014年4月にKickstarterを開始。開始したのは真夜中でしたが、なんと開始から数秒で最初の支援者を獲得。
Kickstarterで公開されたプロモーションビデオ。
目標は5,000ドルでしたが開始初日のお昼頃までに目標額まで達し、結果的に60,000ドルが集まるまでに。それがきっかけになりビジネスが大きく押し上げられました。ヘイニーさんは、Kickstarterの支援者でこのアイデアが好きだという人がたくさんいたことに驚きを感じたようですが、それとともに、このプロモーションビデオに心を動かされた人が多くいたのではと思います。
ビデオでは、最初のイントロ部分でメガネへの思いを語った後、メガネのズレ防止ワックスについての解説へと自然に展開されていきます。ワックスはミツバチの巣から採取される蜜蝋(みつろう)からできており、メガネに塗布するだけで使え、メガネ自体には影響がないこと、肌に直接着くことを考慮してオーガニックの自然の材料が使われていること、そして、出来上がったワックスを友人何人かにも試してもらい、メガネのズレ落ちなしというお墨付きをもらっていることが語られています。
また、ヘイニーさんには当時3人の小さな子供がおり、ツアーディレクターという仕事をしていた時は、250日間以上はツアーに出ているため家族と過ごす時間が少なかったそうです。その後、前述のトラブルを経験して、Nerdwaxの制作に取り掛かるまでのストーリーが語られているのですが、最後には、もっと家族と一緒にいたいという思いも含めて、Kickstarterの支援者にNerdwaxのための資金支援をお願いしたいと呼びかけをしています。
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ヘイニーさんと家族。
実際にKickstarterの支援者たちからのコメントを見てみると、「Kickstarterで買った素晴らしい商品の一つだ」、「うまく機能しているよ」、「Nerdwaxが大好き!ありがとう!」というポジティブなコメントが多く、また、商品が届かない、パッケージが壊れているといったクレームについては素早く返信をし対応している様子が伺えます。
そして、ヘイニーさんにとってのターニングポイントはもう一つあります。Kickstarterでプロモーションをした翌年の2015年、アメリカの投資リアリティテレビ番組「Shark Tank」(シャークタンク)に出演したことです。Shark Tankは、ビジネスプランを持った人たちがプレゼンをし、投資家たちに投資を募るという番組。
番組にはヘイニーさんは家族と一緒に、会社の株式の20%と引き換えに8万ドルの投資を獲得することを目的に出演。実際に投資家からは2件のオファーを受け取りましたが、そのオファーを断っています。理由は、投資家たちがヘイニーさんのビジネスの成長やブランドの成長に参加したいということからのオファーではなく、お金を稼ぐことに注力していたからと言います。投資家たちと話してみて、自分たちのやりたいこととが違ったようです。
オファーを断ったため結果的に投資は得られませんでしたが、番組出演する前の売上である136,000ドルから、番組出演後に売り上げは100万ドル近くまで跳ね上がるという結果に。後のインタビューでヘイニーさんは「投資を獲得することよりも重要なのは、そのPRを好む多くの人々の前でどのようにアプローチするかだ」と語っているので、Shark Tankの出演するだけでもNerdwaxのことをたくさんの人に知ってもらえ、かなりのPRになり売り上げに繋がったということですね。
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Nerdwaxはアメリカの大規模なデジタルメディアであるMashbleやBuzzfeedでも取り上げられています。Shark Tank出演者のアップデートを紹介するブログによると、Nerdwaxは2022年時点で、毎年200万ドルの売り上げになっている模様。
ちなみにNerdwaxの値段ですが、公式ウェブサイトでは8ドル(他の商品と一緒に25ドル以上購入すれば送料無料)、Amazonで1本9.99ドルで売られています。下記はヘイニーさん自身が解説するNerdwaxの付け方と注意事項のビデオ。ワックスはリップクリームのようにくり出すことができ、メガネの肌が密着する部分に塗布するだけです。
現在、2024年時点のNerdwaxは「メガネのズレ落ち防止ワックス」を主力商品としながらも、メガネの曇り止めやメガネクリーナー、ユニークなメガネ拭きを販売。インスタでは毎日、メガネ拭きについてのリールが投稿されています。
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ビール、ピザ、紙皿全てメガネ拭きです!
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メガネクリーナーはタブレットのスクリーンも綺麗にできます。拭いているのは“ハム”のメガネ拭き!
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日常的にアメリカではほとんど見られない100ドル札のメガネ拭き。肖像となっているベンジャミン・フランクリンがメガネをかけているのもユーモアがありますし、これでメガネを拭いていたら注目されそうです。面白いアイデアですね。
いかがでしたでしょうか。昔からみんなが困っていたであろう問題を解決した「メガネのズレ落ち防止ワックス」。ありそうでなかったアイデアが発端となった成功したビジネスですが、成功して引き続き現在もユニークなアイデアで頑張っているNerdwaxを応援していきたいです。
(参考、引用)
Nerdwax Turned Down 2 Shark Tank Offers and Still Built a Million Dollar Business – Shopify
Nerdwax Update | Shark Tank Season 7 – Shark Tank Recap
Nerdwax on ‘Shark Tank’: A Look Inside the Beeswax-Based Product – heavy
East Nashville’s Nerdwax to appear on ‘Shark Tank’ – The Tennessean
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