映像2024.05.22

「いきなり河童に会いたくて」

第105話
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
Akira Kadota
門田 陽

河童の夢を見ました。小さな沼なのか池なのかそこにひょっこりと河童がいて僕の方を振り返り見つめています。僕は特に不審がることもなく挨拶をしようと思い声を掛けると河童は水の中に消えていきます。

この夢を見るのは初めてではありません。子どもの頃にはときどき見ました。僕が幼稚園の頃、毎日欠かさず見ていた「ママとあそぼう!ピンポンパン(フジテレビ)」の中にカッパのカータンという人気キャラがいました。僕の人生初の推しはこのカッパのカータンです。なので当時、朝起きて僕が「河童の夢を見た」と言っても親は特に気にすることもなく「カータンに会えてよかったね!」と答えていましたが、夢の河童はカータンではありませんでした。そしてこの河童の夢は何年かおきに見るのですが、大人になってからは記憶にないので4~50年ぶりのことです。その日、僕は野暮用で地元(福岡)に帰っていたのでそのせいかもな?と思いながら電車に乗るために駅の階段を急いでいました。するとすぐ前を歩く小学生の女の子の後ろ姿がなぜか気になって二度見しました。彼女が背負っているランドセルは黄色の交通安全のカバーがかかっています。おそらく一年生なのでしょう。その黄色のカバーに描いてある河童の絵が目に入ってしまったのです(※写真①)。


※写真①

偶然だとは思いますが、なぜかこのときは妙な胸騒ぎを感じました。河童から呼ばれている気がしたのです。そういえば確か福岡のどこかの町に河童伝説があるというニュースを見た記憶があります。それをその場でスマホで調べるとすぐに出てきました。その地名は田主丸(たぬしまる)。

これはもう予定変更するしかないです。踵を返して西鉄久留米駅方向の特急に乗り、久留米のバスセンターから田主丸へ行くバスに乗り換え約50分でJR田主丸駅に到着。いきなり河童のかたちの駅舎が出迎えてくれました(※写真②)。


※写真②

これは期待できそう(何の期待かは自分でもわからないけれど)だと周囲を見渡したのですが、まるで何もありません。人影もまばらです。グーグルマップで自分の位置と周辺の環境を確認。駅からほど近いところに川があるのでその方向に向かうことにしました。途中の路上には河童の絵がいくつも描いてあります(※写真③④)。


※写真③


※写真④

川に着きました。川岸はコンクリートで護岸され、そこに一面びっしりと河童の絵が描かれています(※写真⑤)。


※写真⑤

う~ん、ちょっと求めていたものとは違います。それから橋を渡って小さな集落へ。町全体がひっそりしています。お店はシャッターが閉じられているところが多いです。ただ町のあちこちに河童の像的なものがあります。かなりの数です(※写真⑥⑦⑧⑨⑩)。


※写真⑥


※写真⑦


※写真⑧


※写真⑨


※写真⑩

地図を見直すと神社があるので何かヒントがあるかもと訪ねましたが、神社は河童ではなく兎を祀っていました(※写真⑪)。


※写真⑪

モヤモヤしますが本来の用事を済ますために駅に戻りバスに乗り、福岡に帰りました。そもそも僕の河童(夢に出てきた)は川ではなくて池か沼の住人(?)です。

翌日は早くに大阪へ移動。空港から阪急電車に乗り換えて梅田駅に到着。朝の梅田を歩いていたら、またも気になるものが目に入ってしまいました。かっぱ横丁(※写真⑫)。


※写真⑫

エッ~~!?またまた偶然でしょうが、さすがに気になります。どこかで河童が呼んでいます。即座にスマホで「関西 河童」で検索したら、あ~~!!僕の夢に出てくる河童の棲家とよく似た景色があります。場所は兵庫県福崎町。JR大阪駅から姫路で乗り継いで2時間18分で着きます。これは今日も行くしかありません。二日続けての予定変更。河童のためならへのかっぱです。お昼前に着きました(※写真⑬)。


写真⑬

駅隣接の観光交流センターは入り口からして河童推し(※写真⑭)。


写真⑭

ここで係の人に事情を話すと、僕の会いたい河童は辻川山公園にいるとのこと。歩くと30分かかるのでレンタサイクルを勧めてくれました。郷に入ればもちろん郷に従います。500円を支払って、いざ辻川山公園へ。あ!この大きさ、そしてこの淀んだ感じは夢に近い(※写真⑮)。

※写真⑮

うん?眺めていると池から泡がブクブクと立ち、水中から河童が登場しました(※写真⑯)。


※写真⑯

う~~~ん、惜しい(笑)。サイズ感はいいのですが、僕の河童はもっとかわいいのです!それにしてもこの公園は奇妙なものが色々あります(※写真⑰⑱⑲)。


※写真⑰


※写真⑱


※写真⑲

 

天狗もいます(※写真⑳)。


※写真⑳

そして一番驚いたのは、この河童の池のすぐ隣に柳田國男の生家があったことです(※写真㉑)。


※写真㉑

僕は大学では文化人類学を専攻していたので柳田國男については人並み以上に学んだつもりでいましたが、ここで生まれたとは知りませんでした。柳田國男といえば遠野物語。そして遠野物語といえば、またしても河童伝説。これは「遠野へ行け!」という夢の河童からのお告げなのかな~、なんてことを思いつつ大阪へ戻りました。遠野か~、遠いな、さてどうする俺。

 

ところで、僕は20代の頃はずっとおかっぱ頭にしていました、という話はまたの機会に。

プロフィール
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
門田 陽
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州、(株)電通を経て2023年4月より独立。 TCC新人賞、TCC審査委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

門田コピー工場株式会社 https://copy.co.jp/

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