和傘から「傘の価値」を考える

金沢市
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

ゴールデンウィークは日本各地で夏日でしたね。暑くなってくると、梅雨の到来も意識し始める今日この頃。

私の住む金沢は、梅雨に限らず一年中雨や曇りが多い地域で、「弁当忘れても傘忘れるな」という格言があるほど。そんな金沢で現在、和傘を展示するイベント「和傘の花」が「金沢湯涌江戸村」で開催中です。

和傘を製作するのは「和傘・水引工房 明兎」の山田ひろみさんと、山田さんが師匠と仰ぐ田中富雄さん。

日本海の雨雪にも負けない骨太なフォルムに、どんよりのお天気も心晴れやかに過ごせるような華やかな柄の和傘が「和傘・水引工房 明兎」さんの特徴です。

和傘の竹骨の補強と装飾をするための「糸かがり」も、和紙や柄などにあわせて色を変えているそう。

今回の展覧会でも16本の色とりどりな和傘が、江戸時代の商家「旧山川家」の町屋の吹き抜け空間に飾られています。

個人的には宇宙を感じるような、こちらの和傘が胸キュンでした!

しかし、山田さんにお話を伺うと、「昔は傘は傘屋さんに買いに行くのが当たり前だったけど、今では洋傘屋さんですらほとんどない。和傘職人も絶滅危惧種」とのこと。

たしかに、わたしも数年前に「40オーバーになるのだから、ちゃんとした傘の1本くらい持たねば!」と思い立ち、それでも購入先は通販サイトでした…。

過去に和傘の産地として栄えていた金沢や岐阜県では、結婚する時に和傘を持たせて嫁入りさせる風習もあったそう。

山田さんは「携帯電話がスマートフォンに移行する時はある程度段階があったけど、和傘から洋傘へは急にパッと移り変わってしまった印象」と言います。

山田さんたちは和傘の価値を伝えたいと、金沢湯涌江戸村で昨年12月から来園者に古い和傘の修復を手伝ってもらう「一針、一張り、一針プロジェクト」を行っており、今回展示した中の3本がプロジェクトを通して製作されたものだそうです。

山田さんは「和傘を見たり広げて差してもらったりすると皆さん『きれいだね、すごいね』とは言ってくださるけれど、それまで。だけど、実際に一針でも体験をしてもらうと手作業の工程や苦労が伝わった、という声もあってうれしい」と話します。

雨が降っても、洋傘やビニール傘を差すのが当たり前。和傘を差している人がいたら、コスプレか観光客かな?と思ってしまう。傘がなければコンビニで買えばいいし、ダメになれば捨てればいいし、気が付いたら自分の傘が無くなっていた(盗まれた?)なんてこともしょっちゅう。それが現代の「傘の価値観」と言えます。

山田さんにそう言うと、「昔は傘が壊れたら傘屋さんで直してもらえたし、大事にできた。自分の傘がどれかもわかったし、名前も書いたことなかったけど、盗まれるなんてこともなかったな。今はお店に入るときも、ちゃんと傘を持って入るけどね」とお話してくださいました。

傘に限ったことではないですが、生活必需品に「使い捨て」ではなく、もっと価値を持たせること。「わたしの傘」と思えるものを持つこと。

そういう風にみんなが考えられるようになれば、世の中は少し良くなるんだろうなと満開の和傘の花を見上げながら思ったのでした。

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和傘の花

開催日時:4月30日(日)~6月25日(日)
開催時間:9:00~17:30 (入園は17:00まで) ※最終日は15時まで
開催場所:〒920-1122 石川県金沢市湯涌荒屋町35番地1 金沢湯涌江戸村 旧山川家
休園日:毎週火曜日(火曜日が休日の場合はその翌平日)、年末年始
入園料金:一般 310円(団体※20人以上 260円)、65歳以上・障害者手帳をお持ちの方およびその介護人 260円、高校生以下 無料

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者やインターネット回線系のまとめ記事などを執筆しながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

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